産休・育休の推進がなぜ必要か?大臣の育休取得が問いかけるもの

政治山 / 2020年1月16日 12時33分

産休・育休100%社会を目指す必要性

 産前・産後休業及び育児休業の取得は、(1)男女共同参画社会実現(2)少子化対策(3)持続可能な社会を維持する観点から社会全体で推し進めることが重要である。

 世界経済フォーラムが発表した男女平等の度合いを示すジェンダー・ギャップ指数における日本のランキングは149カ国中110位(18年)と極めて低い。ジェンダー・ギャップは、日本においても年々多少なりとも改善しているが、他の諸外国はもっと速いスピードで改善されており、順位が下がり続けている現状がある。

ジェンダー・ギャップ指数(2018)上位国及び主な国の順位

ジェンダー・ギャップ指数(2018)上位国及び主な国の順位

参考資料:内閣府「共同参画」2019年1月号」参照

 経済協力開発機構(OECD)加盟諸国のデータをみると、概ね女性の労働力率が高い国は出生率も高く、逆に女性の労働力率が低い国は少子化に苦しんでいる。また夫の家事・育児参加時間が長い家庭ほど妻の就業継続率が高く、2人目以降の子どもを持つ確率が高い。

6歳未満の子供を持つ夫の家事・育児関連時間

6歳未満の子供を持つ夫の家事・育児関連時間(1日当たり・国際比較)

夫の休日の家事・育児時間別にみた第2子以降の出生の状況

夫の休日の家事・育児時間別にみた第2子以降の出生の状況

参考資料:内閣府「夫の協力」参照

 このように女性だけが育児を担うワンオペ育児は少子化を助長する。その一方で女性が活躍する社会が、希望する子どもを持つことができる社会であるということはデータでも示されている。

 男性が子育てを実体験することにより、子育てや家事の大変さや喜びを理解することが、出産に対してプラスの影響を与え、男女共同参画の進展に繋がっている。

 また産休・育休の制度が整った国では出生率が高く、国内においても、出生率に良い影響が出ていると認められる。しかしながら日本においては出生率の低下が顕著である。

 2016年の合計特殊出生率は1.44(2018年 出生率1.42)とG7諸国の中でもイタリアに次いで低い水準であるが、少子高齢化の急速な進展は将来世代へのに過大な負担を与えることとなり、持続可能な経済成長や社会保障を守る観点からも日本社会における産休・育休の推進が必要である。

諸外国の合計特殊出生率の動き(欧米)

諸外国の合計特殊出生率の動き(欧米)

参考資料:内閣府「平成30年版 少子化社会対策白書」参照

 こうした社会づくりを日本で実現する鍵は、労働時間の短縮や労働生産性の向上、そして男性の育児参加と社会全体で子育てを支援するという風土の醸成と実際に休暇を取るための環境整備が必要である。

日本における育休の現状

 育児・介護休業法により、女性の育児休業取得率は、2007年以降は常に80%を超えている。しかしながら、ゼネラルリサーチ「男性の育児休暇に関する意識調査」によれば、子育て世代の85.9%が男性の育児休業を取得したいと考えているにも関わらず、男性の育児休業取得率は、国家公務員で12.4%、民間企業で6.16%、地方公務員で4.4%、全体で5%程度と大変低い水準に留まっている。

男性の育休取得についてどう思いますか?

男性の育休取得についてどう思いますか?

参考資料:ゼネラルリサーチ「男性の育児休暇に関する意識調査」参照

夫の育休、または育児のための休暇の取得状況

夫の育休、または育児のための休暇の取得状況

参考資料:ファザーリング・ジャパン「夫の育休、または 育児のための休暇の取得状況」2P参照

 また、三菱UFJリサーチ&コンサルティングが行ったアンケートでも、男性・正社員で、「制度を利用した」が(19.9%)、「制度を利用しなかったが、利用したかった」(24.7%)、「制度を利用したかった」(12.8%)となっており、全体の57.4%が取得を希望している。

育児休業取得状況

育児休業取得状況

参考資料:「平成30年版仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書 労働者アンケート調査結果」141P、148P参照

 このように取得希望者は増えているが、現実的には育休を取得しづらい現状があり、育休取得できなかった人の68%が、機会があれば取得したいと考えている。

妻の出産後に育休、または育児のための休暇を取得したい男性の割合

妻の出産後に育休、または育児のための休暇を取得したい男性の割合

参考資料:ファザーリング・ジャパン「夫の育休、または 育児のための休暇の取得状況」6P参照

 この数値から見てわかることは、育休を取得したいというニーズは高まっているが、実際に取得することはまだまだ難しい現状がある。こうした状況を改善することが急務である。

議員が産休・育休の取得にあたり留意すべき点について考えてみた

 こうした現状がある中、小泉進次郎環境大臣が育休を取得する意向であるという報道がなされている。私、個人としては隗より始めよで、議員が育休を取得し、社会にその賛否を問うことは議論の活性化に繋がり、とても良いことだと思う。そこで私なりに議員の産休・育休の取得について考えてみた。

 まず議員に対する産休及び育休についての法制度の整備が明確でない現状においては、議会開会中の休暇取得は慎重に検討する必要がある。当面は、国会、各地方自治体議会における慣例や世の中の動きなどを踏まえながら所属議員の判断に委ねることとなる。

 そしてその判断材料として産休については労働基準法、育休については育児介護休業法に基づいて取得を行うことを原則として検討することが好ましく、各議会・職場状況を十分考慮したうえで、適宜判断を行うことがよいと考える。

産休&育休取得時期と日数参考資料:厚生労働省「あなたも取れる産休&育休」参照

 産休取得時期と日数については、産前休業の取得時期は予定日前6週間程度(双子の場合は14週間)、産後休業の取得時期は、出産後8週間程度(病院の許可があれば6週間でも可)を想定。現在は、国会議員も産後8週間の産休をとっているケースが多い。

 地方自治体議会でも、欠席事由に「出産」が入る議会が多くなったが、期間まで定めていないところがほとんどである。そうした中、兵庫県伊丹市では、産休の期間が制度化されている。規則の要項で産前8週間、産後8週間の休暇をとれる規定を定めている。

 また育休取得時期と日数については、議員の業務性質上、国民から負託された議員本人以外代行ができない業務もあるため、連続取得に限定せず、例えば「パパ・ママ育休プラス」のような柔軟なかたちでの育休取得を軸として検討することが良いのではないか。

 現状では厚労省「平成30年度雇用均等基本調査の結果概要」を参考に、5~29人規模の育休実施事業所の取得日数で一番多い日数である14日程度(土日含む)の取得が国民の理解を得られやすいように感じる。

取得期間別育児休業後復職者割合

取得期間別育児休業後復職者割合

参考資料:厚労省「平成30年度雇用均等基本調査の結果概要」P86参照

 また、歳費と議員報酬についても考えなければならない。歳費(給与)の国庫返納は現行制度上、制度が整っていない。

 育児・介護休業法では、「1歳に満たない子を養育する」男女労働者について、労働者が“申し出た期間”休業することができる。その間、給与は支払われることはないが、雇用保険から「育児休業給付金」が給与の67%が最初の半年間、50%が後の半年間支給される。この給付金の水準を67%から80%に引き上げることができれば、社会労働保険の免除でほぼ100%の給与が保証されることになる。

 そうした中、議員においては、将来的に育休産休中も給与が100%支払われる社会を目指すべきという観点から先例としても歳費(給与)の返納は行わないとする考え方や給付金の水準を67%に合わせて選挙区外の福祉団体等に歳費の33%分を寄付しようという考え方などが存在する。議員報酬のあり方についても議論を重ねる必要がある。

 また議員産休育休取得によって想定される課題として議決権とのジレンマがある。

 有権者の負託を受けた議決権を放棄することは議員の職務を全うする上では大きなジレンマとなる。産休育休制度化における議決権の担保も必要な議論。産休育休を義務化しただけでは議決権の担保をしないと、議決権の侵害になりかねない。遠隔での議決を行っている議会等を参考に議決権のあり方を改善する検討が必要である。

 また議員のみの育休産休取得ではなく、共に働く政党職員並びに議員事務所の秘書やスタッフの産休、育休並びに経済的支援についても検討すべきだろう。

 例を挙げれば、現状では下記のようなものが好ましいと考えている。

●産休日数(例)
・労働基準法で定められた事項を参考に、予定日前6週間(双子の場合は14週間)申請可
・出産後8週間(病院の許可があれば6週間でも可)義務化を想定

●育休日数(例)
・現状、厚労省「平成30年度雇用均等基本調査の結果概要」を参考に、5-29人規模の育休
・実施事業所の取得日数で一番多い日数である14日程度(土日含む)を想定

産休、育休取得者への経済的支援の想定

産休、育休取得者への経済的支援の想定

参考資料:厚生労働省「あなたも取れる産休&育休」参照

 このような考察を踏まえ、私としてはあらゆる観点から産休育休を進めることは社会全体にとって有益であると考えるので、取得しやすい環境の整備と風土の醸成に尽力したい。

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