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「18歳選挙」機に座談会

政治山 / 2016年8月4日 11時50分

 筑波大生は、選挙権年齢の引き下げや政治に関して、どのような意見を持っているのか。また、政治や選挙にどのように関わっていけばよいのか。中高生の主権者教育詳しい唐木清志准教授(人間系)と、18歳の大学生を参与に起用し、町のイメージアップを狙う政策の企画・立案を担当させるなど、若者の意見を積極的に政治に取り入れている茨城県境町の橋本正裕町長を招待。佐藤巧基さん(物理1年)、遠藤菜央さん(人文2年)、竹森友香さん(社学4年)の3人の学生を加えて座談会を行った。(撮影・秋田耕平)

座談会に臨む学生ら(左から佐藤さん、遠藤さん、竹森さん)
座談会に臨む学生ら(左から佐藤さん、遠藤さん、竹森さん)

■政治を身近にとらえる

(1)18歳選挙の是非

【遠藤】私は賛成。18歳と20歳では選挙の知識に大きな差はなく、選挙に参加しても問題ないと思う。引き下げは中高の教員の教育現場での意識を変えていると期待してもいる。

【佐藤】18歳はインターネットの意見に左右されることが多く反対だ。

【竹森】選挙が社会的に注目されることで、国民の政治への意識が高まると思う。その面では賛成だ。

【橋本町長】18歳選挙は世界的には珍しくなくなっている。特にスウェーデンでは18歳から29歳までの投票率が約8割となっており、若者の意見が政治に強く反映される。若者には社会を変える力があるということを、マスコミや政府は伝えるべきではないか。若者の選挙が「面倒くさい」という意識を変えるのが大人の役目だ。若者が大人に意見を伝え、大人がそれに応えることが大切では。

【唐木准教授】国連が定める子どもの権利条約では、18歳が子どもと大人の分かれ目。参政権は「権利」だ。義務的に「行くべき」と考えることは、根本的な意識の改革にならない。権利の認識を定着させることも必要だろう。

【佐藤】もちろん参政権は権利であって義務ではないが、なかば義務にするような風潮があると感じる。

【遠藤】「国民として投票するべきだ」という義務感の植えつけや、「若者は政治意識が低い」とする社会の風潮があるように思う。

【唐木准教授】義務として選挙をとらえれば、逆に荷が重く、投票しにくいと感じるか?

【佐藤】行かなくては、という思いと、知識が不十分なまま投票していいのか、という2つの思いがある。今回の参院選でも、義務感が先行し、実際に政治に参加している実感がない。

若者の政治意識について語る橋本町長
若者の政治意識について語る橋本町長

■社会を変える若者の力

(2)政治や投票のとらえ方

【唐木准教授】政治は議会や選挙などの大規模なものだけではない。例えば家族会議で予定を決めたり、学校の教室で席替えをどのようにして行うかを考えることなども広い意味では政治の一つで、つまりはルールを決めるための「話し合い」が組織を動かすかどうか。政治を日ごろから身近にとらえることが、政治を考える上で大切だ。

【遠藤】最初は政治と言ったら学校の授業で習うような遠いものをイメージしていたが、中高生が部活動の運営を話し合って決めることも政治と考えると、政治を身近に感じられる気がする。

【唐木准教授】政治を広い意味でとらえてほしい。政治への参加といえば即ち選挙ではない。政治と選挙を切り離して考えるとわからなくなってしまうため、どれだけ政治を自分のこととして感じられるかが重要だ。

【竹森】身近な「話し合い」も政治だとは思うが、やはり、政治といえば議会や選挙などの規模の大きなものと考えてしまう。

【橋本町長】私は唐木先生に同意する。以前、小学5年生から町内の道路の舗装について提案を受け、実現させたことがある。こうした小さな働きかけも町政にとっては大事で、問題は我々大人が子どもの意見を聞く耳を持つかどうか。

 選挙のためだけに動くのではなく、住民と「話し合い」、批判を恐れずに行政を動かし、若者の意見を積極的に取り入れたい。

 政治家とその地域に住む人々との距離感は政治家のこれからの課題だ。意見を言えば政治が変わると地域の人々に思ってもらいたい。

主権者教育について語る唐木准教授
主権者教育について語る唐木准教授

■「足腰」からの主権者教育を

(3)主権者教育

【佐藤】公立高校に通っていたが、公民の授業で政治の知識を得たのみで、主権者教育として思い出せる経験はない。

【遠藤】高校の「現代社会」の授業で、社会にどんな問題があるのかというテーマで実際に町を歩き、気付いた問題点について議論し合う授業があった。

【竹森】高校時代は政治や選挙の仕組みを知識として学んだ。大学で主権者教育の授業案を作る機会があったが、主権者教育は指導法が確立している訳ではないので、主権者教育の実践はとても難しいと感じた。

【唐木准教授】先ほどの境町の小学5年生のように、この町や社会は自分の力で少しずつ変えられる、と教えることが主権者教育だと考えている。

 最近は選挙権年齢引き下げがあり、主権者教育がよく議論されるが、そのほとんどが「有権者教育」の議論になっている。有権者教育は選挙に焦点を絞り、模擬投票などを行う教育を指すが、本来、主権者教育は選挙に限らず、社会のどんな問題をどう解決するか理解する教育だ。

 今、日本では、「自分たちが政治を動かしている」実感を持つ若者が先進国7カ国の中で一番少ない。自分たちも社会を変えられるという実感を、経験から理解することが必要だろう。

 今の主権者教育はあくまで選挙に焦点を当てたもので、もっと「足腰」からの教育を図るべきだ。

■選挙だけが政治ではなない

(4)若者と政治

【竹森】投票だけでなく、自分たちで問題点や改善案を行政に提案するなど、積極的に政治と関わって行ければよいと思う。

【佐藤】現在の生活に不満がなく、問題点は見つからない。その状況で政治に参加しても、責任が持てるかが不安だ。

【唐木准教授】政治の参加にもさまざまな形がある。買い物などで税金を払っている時点で、政治に関わっている。その税金の使われ方を考えることが、一番身近な政治参加ではないか。

【橋本町長】町長の立場としては、若者たちが身近な社会のことを自ら考える機会を設けていきたい。

<筑波大学新聞 第329号2016.07.11発行>

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