駅周辺開発を巡る熱き闘い―鳥栖市議会
政治山 / 2015年5月15日 11時50分
鳥栖市議会では、2014年9月議会で、鳥栖市で長年の懸案事項になっている「鳥栖駅周辺まちづくり基本構想」(予算額:804万5千円)の原案が否決され、その中から、委託料(756万円)を減額し、検討委員会の開催費用のみを計上する修正案が11対10(議長は裁決に入りません)の僅差で可決されました。
この議案の背景として、鳥栖市が数十年来の懸案事項としている「鳥栖駅の東西連携」があります。鳥栖の玄関口である鳥栖駅には、改札が西口しかなく、駅東側へは改札を出て歩道橋を渡って移動しなければなりません。そのため、毎日の通勤通学はもちろん、特に駅東側に設置しているスタジアムで開催される、プロサッカーチーム「サガン鳥栖」の試合では、毎回混雑している状況になっています。
また、今から8年前、前市長が模索していた「鳥栖駅の高架化」を断念することを受け、当時の市長選挙の大きな争点となり、改めて高架化を掲げた現市長が誕生することとなりました。そして、それから8年経ち、高架化は実現しておりませんが、実質、JRと佐賀県と鳥栖市の間で方向性について一定の目途がついたとのことで、昨年9月に議案が上程されました。
しかし、今年2月に市長選挙があり、市長としては選挙までには一定の整理をしておきたいという思いがあったでしょうが、「鳥栖市長年の懸案事項は、新しい市長のもとで決定していくべきである」という一部議員の意向で修正案提出となりました。長年の懸案事項は新市長のもとで協議するという議決をもって、そのまま市長選挙へと流れていきました。
私は原案に賛成し、修正案に反対の立場で討論に立ちました。私の所属する総務文教委員会に修正案が提出されましたが、残念ながら、提出者たちからは、納得のいく明快な答弁はないまま、おそらく一部の議員の意向に単純に従っただけの議案であることは明白でありました。せっかく鳥栖市の未来を考えて修正案を提出するならば、内容を理解した上で提出すれば良いのに……ともんもんと思いながらも、僅差で修正案が可決されました。
下田寛 鳥栖市議会議員
議会終了後、修正案提出者たちは記者会見まで開いて、「鳥栖駅前の整備に反対しているわけではない」と記者に説明をされましたが、残念ながら住民の理解は得られませんでした。新人は現職市議会議員の職を投げ打ってまでの出馬でしたが、市長選挙では現職の圧勝という結果になりました。また、市長選挙において、現職市議会議員の表面的な支援構図は、現職市長派4人、新人候補派13人と各種団体の支持という圧倒的に新人が優勢な立場にも関わらず現職の勝利となりました。
議会での議論の結果が、必ずしも市民と一致するものではありません。また、議決のみでその議員の意志が判断され、判断に至った経緯については、議場で討論を行わない限り、特に触れられることはありません。今回の修正案についても、議員それぞれの理解度の差はあるものの、なぜ議員個人がその結論に至ったのかという点に、議員それぞれの思いが込められているはずです。
特に有権者の皆様には、身近な議員に対して、「何故、賛成・反対したのか?」をぜひ尋ねていただきたいです。
さて、現在、地方創生の名のもと、地域から日本を活性化する議論が全国各地で行われております。しかし、今までの東京一極集中からのトップダウンに慣れているせいなのか、外的要因や地域にある目立つものから内へという方向性が目立ち、具体策に欠ける議論が目立つように感じています。そうではなくて、外へ発信する内なる地域のパワーや強みの構築と発信力が原動力とならないと、結局は従来の投資型、能力優先の再生戦略を描くしかなく、都市の格差が進む要因となるかもしれないと危惧(ぐ)しております。
このことは、議会でも同じことがいえます。政治家は、既に名誉職の時代ではないと思います。また、今後の課題は、既存の手法では解決できない時代に突入しています。これからは、議案のチェックだけではなく、政策提案を行える政治家が求められるでしょう。そして、議会だけではなく、行政・民間などとスクラムを組んだチームで取り組む開かれた環境づくりが必須であると考えます。
今後、鳥栖市議会6月定例会において、再度「鳥栖駅周辺まちづくり構想」が再提案されるとのことです。今回の市長選挙をきっかけとして、党派や会派を超えて、今後の地域に対する危機感を共有し、まちづくりの中心世代として前向きな議論を展開し、政治と市民が一致する政策を展開していかなければなりません。
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