「葬式不要論」「直葬」、お葬式をどう考えるか?|『和尚が教える 極上のお葬式』

サライ.jp / 2019年2月20日 15時0分

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文/印南敦史

お葬式をどう考えるか|『和尚が教える 極上のお葬式』

好むと好まざるとにかかわらず、人はいつか必ずお葬式にまつわる問題と向き合うことになる。それは身近な人が亡くなったときかもしれないし、あるいは自分が死を迎えるときかもしれない。いずれにしても、そこを避けては通れないわけだ。

だからこそ大切なのは、「まだ先のことだから」とやり過ごすのではなく、いまからお葬式について考えてみること。そう主張するのは、『和尚が教える 極上のお葬式』(石毛泰道著、幻冬舎)の著者である。
私は、縁あって仏教の道を志し、曹洞宗大本山總持寺(そうじじ)独住十八世・孤峰智璨(こほうちさん)禅師(永光寺五百十二世住職)の門下、三輪悦禅(みわえつぜん)大和尚(永光寺五百十五世住職)とその高弟・三輪智明(ちみょう)大和尚に師事し、石川県金剛寺(こんごうじ)住職を経て、同県で約六百年の歴史を持つ同宗北斗山徳雲寺(とくうんじ)住職に至りました。
その間、広く宗教界以外の分野にも学びの道を求めて慶應義塾大学文学部を卒業したのち、早稲田大学大学院で公共経営研究科博士課程を修了しました。フランスの国立ストラスブール大学でも、海外の文化や宗教の状況を学んできました。(本書「まえがき」より)
そのような立場にあるからこそ、まずは多くの人に、「お葬式というものは本当に必要なものなのか?」ということを考えてみてほしいのだという。また、仏教者としての立場からそのような問題を持ち出すことには、大きな理由があるのだそうだ。

それは近年「葬式不要論」とでもいうべき考え方が広がり、お葬式をしないで遺体を火葬してしまう「直葬」(仏教者は「じきそう」、その他の人は「ちょくそう」と読み、「火葬」「火葬のみ」とも呼ばれています)が増えてきたこと。

その結果、これまでは当然のことだと思われてきた「人が死んだらお葬式をするもの」という考え方に変化が現れ始めたというのだ。このことについては思い当たる方も多いだろうが、その結果、現実に人に死に直面した人たちの間で、混乱や迷いが生じているというわけである。

著者自身は、近年の「葬式不要論」的な風潮に危機感を覚えたそうだ。しかしその反面、古くから当たり前だと思われてきた「人が死んだらお葬式」という考え方を根本的に問いなおすいい機会だとも感じているという。

それは、著者のような宗教者をはじめ、お葬式の主役である喪主や遺族、関係者に、次のような根本的な問題を問いただしてもらう必要があるということだ。
一、まず、お葬式は何のため、誰のために行うのか。
二、お葬式を行うのと行わないのとでは、何が変わるのか。
三、お葬式が不要なら、死者を弔うことも不要か。
(本書「まえがきに」より)
そんな著者自身も、人間の死に関する考察や、お葬式に関して交わされてきたさまざまな議論、著者自身の経験などを整理し多くのヒアリングを行ってきた。

公平な立場で「お葬式の意味」を問いなおす作業を繰り返してきたわけで、本書においてはその問いなおしの作業や検討の経緯が明らかにされているのである。

重要なポイントは、「お葬式をどう考えるか」についての明確な「答え」を明らかにしていない点だ。

なぜなら、それは正解のないことだから。詰まるところ、「自分にとっての答え」は自分で見つけ出すしかないのである。

だからその前提として、本書において著者は、お葬式についての基本的な考え方もていねいに解説している。そのため読者は、「葬式不要論」が生まれた理由、「直葬」(火葬のみ)に関する疑問などについて客観的な考え方を学ぶことができるのだ。

ただし当然ながら、それだけでこの問題が解決できるわけではない。重要なのは、必要最低限の知識を得たうえで、自分なりの考え方、答えを導き出すことなのだから。

人がどう言おうが、どんな事情があろうが、従来のようなお葬式をするか、直葬(火葬のみ)にするかを決めるのは自分自身だということだ。
人は誰しも必ず死を迎えます。
そして人生最後のイベントこそがお葬式です。
しかし、その大事なイベントを、あなたは、残念ながら自分自身で執り行うことができません。もちろん、こうしたい、こうしてほしいと生前に遺言として残すことはできるでしょう。しかしながら実際は、担い手(送り出す側)が発する言葉や思い、考え方が故人の最期の姿になるわけです。
だから、いつかあなたが誰かの最後を見届ける立場になったときは、どうか思い出してください。故人の最期の姿、人生最後の姿をつくるのは、他の誰でもない、送り出すあなた自身なのだということを。(本書「あとがき」より)
故人への感謝やさまざまな思いは、外からは見えないものだ。しかし、お葬式は、そんな自分の心の内をきっと表現してくれるだろうと著者は記している。いわば我々は、このことについてもっと学ぶべきなのだ。そこで本書を通じ、身近な人の、あるいは自分自身のお葬式について考えはじめてみてはいかがだろうか?
『和尚が教える 極上のお葬式』

石毛泰道/著
幻冬舎
価格:1100円(税別)
2018年12月発売

和尚が教える 極上のお葬式

文/印南敦史
作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』などがある。新刊は『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)。

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