親の終の棲家をどう選ぶ?| 夫の両親の介護~大好きな息子たちの存在を忘れた母【その1】

サライ.jp / 2019年3月1日 11時0分

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取材・文/坂口鈴香

親の終の棲家をどう選ぶ?| 夫の両親の介護~大好きな息子たちの存在を忘れた母【その1】

今や介護の担い手は、嫁いでいようが、妻が専業主婦だろうが、実の娘や息子という時代だ。少し前まで、長男の嫁が担うのが当然という風潮が強かったが、状況は一挙に変わった。それでも、多かれ少なかれ嫁が介護にかかわるケースはまだまだ多い。今回は、そんなケースを紹介しよう。
姑が認知症に
大村佳代子さん(仮名・63)は、近くに住む共働きの息子夫婦の子どもの保育園への送迎、息子家族の夕食づくりに加えて、隣県に住む夫の両親のもとにも週に数回通っている。子育てをしていた30代のころより「倍どころじゃなく忙しい」と笑う。夫は定年退職後、再就職し、残業こそないものの毎日出勤しているし、夫の弟夫婦も現役で働いているため、介護はまったくあてにならない。孤軍奮闘中だ。

もともと義父母とは、そう頻繁に行き来する関係ではなかった。夫兄弟は、どちらも最難関大学を出て、一流企業に就職。夫の両親にとっては自慢の息子たちだった。特に義母は息子たちを溺愛していたという。

「義母は最愛の息子を奪った嫁が気に入らなかったんでしょう。私も気が強い方なので、何かとぶつかることも多かった。それで、子どもが大きくなるとお正月に顔を出す程度の付き合いになっていたんですが、主人兄弟は義母を大切にしていましたね。仕事帰りに寄ったりしていたようです」

ところが、義母は75歳を過ぎたころからだんだん足腰が弱ってきた。さらに、物忘れが目立つようになり、認知症と診断されたのだ。

「主人兄弟は、大好きな母親が認知症だと認めたくなかったようですが、さすがにおかしいと病院に連れて行ったんです。義父はお茶を入れたこともない人だったので、それでもまだ義母が家事をやっていたんですが、あるとき鍋を焦がして大きな穴を開けて、さすがに怖くなりました」。

義父は厳格な家長というタイプだった。ヘルパーを家に入れることも嫌がったため、義父母の二人暮らしはあっという間に難しくなった。当時、佳代子さんも平日はパートに出ていたので、週末になると夫と実家に行き、食事の作り置きや掃除をしていたが、それも限界がある。夫兄弟と話し合って、母親を自宅から近い有料老人ホームに入居させることにした。

「本当は二人で入居してほしかったんですが、義父は絶対に家にいると言って拒否。義母は自宅に固執することもなく、一人でホームに入ることを受け入れてくれました。それでひとまず安心したんですが、主人と義弟は母親を施設に預けることに抵抗があったようです。自宅で介護するのはどう考えても無理ということで、しぶしぶ同意したという感じですね」。

それからだ。佳代子さんの奮闘がはじまったのは。

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孤軍奮闘するヨメ
夫も義弟夫婦も“戦力”にはならない。「結局、私が仕事のない日に孫を保育園に送ってから、電車で主人の実家に行き、義父の様子を見て、義母のホームに行きます。義父の食事は、高齢者向けの宅配弁当を利用していますが、掃除や洗濯は私がやっています。それから急いで帰って、夕食の支度、孫のお迎えと、一日中走り回ってる感じですね」。

週末は、夫と再び義父宅に行き、家の片付けにも取りかかっているという。義母がホームに入居するときに、身の回りのものを片付けはじめると、あまりのモノの多さにがく然としたことが、片付けのきっかけだと苦笑する。

「もののない時代に育ったせいか、義母はものを捨てられない人で、着物や洋服、バッグや靴、引き出物の食器など……ものすごい量のものであふれていました。今から少しずつ片付けておかないと、あとが大変なことになるとゾーっとしました。義母が家にいる間は手を付けられなかったので、今なら捨てられると。主人は『お母さんのものを勝手に捨てるな』と言っていましたが、そんなことは言っていられない状態だとわかってきたようです。実の娘なら思い入れがあって捨てられないのでしょうが、嫁だからなんの執着もない。毎回ゴミ袋が何袋にもなるくらいですが、まだまだ大量のモノがあります」。

そんな佳代子さんの苦労を知るはずもない義母は、「あなたには家にある着物も宝石も全部あげるわね」と無邪気に、いや恩着せがましく言う。さらに、ホームの職員には「長男には迷惑をかけているから、毎月100万円渡している」と言っているらしい。
後ろめたい息子たち
一方、息子たちも母親をホームに入れたことを後ろめたく思っているようで、「ホームでみじめな思いをさせたくない」と、母親に多額の現金を渡していたのだという。

「義母が他の入居者にお金を渡していたのを、ホームのスタッフが気づいて発覚したんです。認知症の義母に、お小遣いといって多額の現金を渡していたことに呆れました」。

ほかにも、義弟夫婦は、まるで“罪滅ぼし”のようにさまざまなモノを義母に贈って来るという。「それが、ちょっとズレているというか……。スマートフォンを買ってあげて、ラインで写真を送ってきたり。認知症の義母が最新の製品を使いこなせるわけがありません。結局写真を見せて、返事を打つのは私。本当に義母が返事をしていると思っているんでしょうかね」。

何もわかっちゃいないと、佳代子さんはため息をつく。

【その2に続きます】

取材・文/坂口鈴香
終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終活ライター”。訪問した施設は100か所以上。20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

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