さえない場面でも、ブザマな状況でも全部カッコよかったショーケン『傷だらけの天使』【面白すぎる日本映画 第29回・特別編】

サライ.jp / 2019年4月17日 11時0分

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傷だらけの天使

文・絵/牧野良幸

ショーケンこと萩原健一さんが3月に亡くなった。ご本人は2011年から闘病していたらしいのだが、公にすることなく活動していたので、突然の訃報には誰もが驚いたと思う。

この連載でも2月の第27回『八つ墓村』で、出演しているショーケンを「カッコいい」と書いたばかりである。イラストにも描いた。まさかその1か月後に訃報が届くなんて思うわけもなく、ただ驚くばかりである。

それにしても僕も還暦を過ぎたせいで、近い世代の訃報が増えてきた。そのなかで昔テレビで観ていたアイドルの訃報には、実は年齢がそんなに違わなかったと知り二重の驚きになることが多い。

ショーケンの場合もそう。1950年生まれというから享年68歳。僕と7つしか違わない。同じ60歳代だ(なのに、早すぎる)。

60年代、ザ・テンプターズのショーケンはアイドルながらオーラが出まくりで、美空ひばりや加山雄三らと同じ大人の世界の人間に思えたものだ。しかし計算してみると『エメラルドの伝説』や『神様お願い!』を歌っていたショーケンはまだ10代の若者だったのだ。こちらが小学生だったとはいえ、若者にあそこまで熱狂させられたのだから、アイドルを超えた何かがあったのだと思う。

それでもGSブームは冷めるように終わり、ショーケンは栄華を極めたグループサウンズから俳優へ転身した。1972年の『太陽にほえろ!』でのマカロニ刑事である。

これが強烈だった。こちらが「歌手から俳優になったのか?」と驚いている間もないほど、ブラウン管ではマカロニ刑事が暴れまわっていた。まるで昔から俳優であったかのような動き。というかこれまでの俳優では見たことがない個性だった。

そのショーケンの魅力を全開で見せてくれたのが、続く『傷だらけの天使』である。

ショーケンが演じるのはアウトローの木暮修である。怪しげな探偵事務所に雇われる捜査員。その相棒が水谷豊が演じる“あきら”だ。

この修がマカロニ刑事以上にカッコよかった。ただカッコいいだけではない。さえない場面でも、ブザマな状況でも全部カッコいいのである。男として憧れないわけがない。

『傷だらけの天使』の放送は1974年で、僕は高校二年生になっていた。同級生の間でもこの番組は話題だったから、多分ほとんどの級友がチャンネルを合わせていたはずだ。実際に「兄貴ぃ〜」と言っていたのは、ドラマの中の水谷豊であるが、誰もがショーケンを兄貴以上の憧れで見ていたと思う。

それにしても『傷だらけの天使』は当時サブカルチャー的な匂いがすごくしたものだ。オープニングが始まると、ザラついたタイトルが表示される。そのあとは有名なショーケンがトマトやコンビーフにかぶりつくシーンだ。毎回見てはいけない番組を見ているようなゾクゾク感で始まった。『太陽にほえろ!』は親と一緒に観ても、『傷だらけの天使』は親と一緒に観る番組ではなかった。

先日テレビで追悼番組として『傷だらけの天使』の初回と最終回を放送したので、久しぶりに観たけれども、記憶していた以上に内容は過激だった。お色気シーンもあったりして、これが当時よく夜の10時に放送されていたものだと思う。

「あきらー!」
「兄貴ぃ〜!」

いやあ懐かしかった。今観てもスピード感といい、ハチャメチャさといい、刺激的なドラマだと思う。

最終回では、修は風邪をこじらせて死んでしまう“あきら”をドラム缶に入れ、リヤカーで夢の島へ運ぶ。ドラム缶を下ろすと修はリヤカーを引いて走り去る。こちらに向けて走ってくるショーケンの姿でエンディング。観るものを置き去りにしてしまうくらい大胆な終わり方で、乾いた余韻が残る。

『傷だらけの天使』の後もショーケンは『前略おふくろ様』(1975年)で、それまでとまったく違った兄貴像、というか大人の姿を見せてくれた。さらに黒澤明『影武者』(1980年)に出演するなど役者としての活動を深めていったのはご存じのとおり。

歳下のいちファンから見ると、ショーケンの一生は『傷だらけの天使』のように大胆でスピーディーだったように映る。いろいろ事件を起こして社会を騒がしてきたショーケンだったが、いざこの世界からいなくなってしまうと、フィルタでこされたように、鮮烈な役者としてのショーケンが脳裏に残る。萩原健一さんのご冥福をあらためてお祈りします。

【今日の面白すぎるテレビドラマ】
『傷だらけの天使』
製作年:1974年10月5日 - 1975年3月29日、全26話
放映:日本テレビ系列毎週土曜日22:00 - 22:55
カラー/55分(1話分)
キャスト/萩原健一、水谷豊、岸田今日子、岸田森、ホーン・ユキほか
スタッフ/脚本:市川森一ほか 監督:深作欣二、神代辰巳、恩地日出夫、工藤栄一ほか 音楽:大野克夫、井上堯之

文・絵/牧野良幸
1958年 愛知県岡崎市生まれ。イラストレーター、版画家。音楽や映画のイラストエッセイも手がける。著書に『僕の音盤青春記』『オーディオ小僧のいい音おかわり』(音楽出版社)などがある。ホームページ http://mackie.jp

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