「生茶」リニューアルと全員参加の活動で好調 課題は「価格競争からの脱却」 井上一弘社長が総括
食品新聞 / 2024年12月29日 17時4分
キリンビバレッジの井上一弘社長は12月19日、年末会見に臨み、今年に入り好調に推移している「生茶」について「1-11月累計販売数量が前年同期比15%増と好調を継続している。リニューアルコンセプトの筋が良かった点と全員参加の営業活動が奏功した」と振り返る。
525㎖PETの構成比が高まったことで収益性も改善し事業利益にも貢献しているという。
春先に実施したリニューアルでは、緑茶飲料市場がコモディティ化する中で、自分の生活に合うものを選びたいという生活者の価値観の変化に応え、パッケージをスタイリッシュで持ち運びたくなるデザインに進化させたことが奏功した。
「生茶」本体と「生茶 ほうじ煎茶」の販売数量が4月9日のリニューアル発売後約7週間で累計1億本を突破した。
「20代から40代のお客様からの支持が伸びた。特に若い方から『センスがいい』あるいは『今っぽい』『持ち歩いても恥ずかしくない』というイメージを獲得することができた」との手応えを得る。
基盤ブランドである「生茶」への注力は、社員の士気を高める狙いもあった。
井上社長は3月28日の社長就任後、全国各地の現場を回り、社員との対話集会に心血を注ぐ。
「会社の組織文化と課題点を学ぶため、10人程度の対話集会をずっと行ってきた。これまで約1200人の方と車座になって『どうやって生き残るかを真剣に考えよう』という話をしてきた。このことが少し刺激になり、いい売場づくりにつながっているのならば本当にうれしい」と語る。
「生茶」で売場を賑わす一方で、「大きな課題だと感じている」のは価格競争からの脱却にある。カテゴリトップではない「生茶」にとって、競合メーカーや卸が緑茶飲料棚を管理している傾向にある中で、値引きやリベート(販売奨励金)について交渉に踏み出そうとすると棚から商品が外される恐れがある。営業はそのようなせめぎ合いの中で戦っているという。
このような課題に対しては「『生茶』ブランドの良さやカテゴリマネジメントを営業として提案できれば価格だけではなく価値に踏み入れることができる。お店の成長戦略にお役立ちできるようなカテゴリ提案を行いながら少しずつ『生茶』の納価を上げていく。あるいは特売のコントロールに取り組んでいく」との考えを明らかにする。この考えを踏まえて「生茶」では来年、「引き続きお客様の生活を起点とした提案でお茶を少し気分が上がるものに変える提案を計画する」。
さらに対話集会も継続の構え。「やはり現場にすべての答えがある。現場に行き続けて、そこで解決策を見いだし、みんなとともに頑張っていきたい」と意欲をのぞかせる。
社員の働きがいをより引き出すべく、来年はリーダーを対象とする研修会を予定している。「会社やお客様に評価されるというのは何物にも代え難い仕事の報酬だと思う。リーダー間の目標設定のあり方やフィードバックのあり方を見直し、コミュニケーションの総量をもっと増やしていく必要がある。これにより、今以上に正当に評価される可能性もあり、みなさんのやる気アップにつなげていきたい」と述べる。
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