「大腸を切って女性器にした」日本人初の世界的コレクション出演“トランスジェンダーモデル”矢神サラ。決死の性転換手術と彼女をささえたオトコたち…
集英社オンライン / 2024年9月22日 17時0分
〈「男らしくしなさい」パリコレ“トランスジェンダーモデル”にして実業家の矢神サラが幼少期に感じた生きづらさ。「骨切り」の整形と性転換で総額2000万、夜の世界に憧れて…〉から続く
日本人初のトランスジェンダーのモデルとして、世界的コレクション『LAファッション・ウィーク』に出演し、『2025年春夏パリコレクション』への出演も決まっていることで話題の、モデル・実業家の矢神サラ(やがみ・さら)さん(32)。最近は大手音楽プロダクション会長との関係でも世間を騒がせた。インタビュー後編では、性転換手術にいたるまでの葛藤や、パリコレへの意気込みについて聞いてみた。
すべては「可愛く生きたい」っていう思いから
–––––性転換手術は何歳のときにしましたか?
矢神サラ(以下、同) 19〜20歳くらいのときには手術を受けようと決断したのですが、実際に受けたのは「ひげガール」で働いていた23歳のときです。性転換手術後、戸籍上の性別も女性に変えました。
手術する病院に関しては、自分で調べたり、周りのニューハーフの先輩たちに聞いたりして、タイの病院に決めました。通訳などをつけずに単身で乗り込んだので、手術代はめちゃくちゃ安くて、当時のレートで100万円ちょっとでした。
実は、去年もう一回女性器を作り直したんです。なぜかと言うと、私の女性器が7〜8cmまで浅くなってしまっていたからです。手術後は棒などを入れてケアしないとどんどん浅くなっていっちゃうんですけど、私は多忙でケアする時間がなくて。それで、またタイに行って掘り直してきました。修正だったんですけど、通常の性転換手術と同じ費用だったので、200万円ちょっとかかりました。
–––––手術はどういったことが大変でしたか?
痛かったのはもちろんなんですが、2回目のときは、それよりも絶食が辛かったです。大腸を切って女性器にするので、入院中は何も食べられないし、寝たきりでやることもないから、毎日すごくつまらなくて病みました。
術後3日間断食して、そのあと5日間は病院で出されたオニオンスープだけ。退院後も1ヶ月間くらい食事制限を課せられました。
–––––整形手術に性転換手術……。どうして命がけの大変な思いをしてまで、自分を変えたいと思うのでしょうか?
すべて「可愛く生きたい」っていう思いからですね。可愛いって、最高じゃないですか。不細工のまま生きるのは絶対にイヤ。
誰に対しても嘘はつかない
–––––ひげガールを辞めてからは、何をされていたんですか?
「ひげガール」は「昼職やります」と言って卒業したんですよ。それで、医療事務と看護助手を始めました。でも、その病院が午後診療のみだったので、「夜も働けるかもしれない」と思い、昼夜掛け持ちで働くことにしたんです。
体も戸籍も女性になったので、求人サイトで見つけた女の子が働く歌舞伎町のバーラウンジの面接を受けてみたら、受かったんです。夜は、その店のキャストとして働いていました。
25〜27歳の3年間、夜の仕事は週6回、昼の仕事は週5回出勤していました。死にものぐるいで働いていたので、あまり寝てなかったですね。1日2時間睡眠とか普通でした。そのときの経験があるから、今すごく忙しくても、あまり大変に思わないんですよ。
–––––自分の店を持とうと思ったきっかけは?
もともと独立したいという夢があったんです。自分でお店を開いて、次のステージに進みたいと強く思っていて。それで、28歳のときに六本木にニューハーフと女の子が働くミックスバーをオープンさせることができました。
先ほども言いましたが、私は昔、K-POPアイドル・少女時代になりたかったんです(笑)。なので、店名は少女時代の日本デビュー曲にちなんで「GENIE」にしました。
独立したことが、人生の転機になっていると思います。雇われるのと雇うのでは、得られる経験値がまったく違う。自分が動いてお金を生まなきゃいけないっていう責任と重圧を経験しました。
–––––大手音楽プロダクション会長との関係がネットで話題となっていましたが、どういった関係なんですか?
アハハ! すごく可愛がってもらっています(笑)。やっぱり音楽が好きな方なので、一緒に六本木のクラブのVIP席で乾杯させてもらったり、私のお店で飲むこともあります。お酒が入るとすごくテンションが上がる方なので、とても楽しいですよ(笑)。
–––––そもそも、どうやって仲良くなったんですか?
もともと共通の友人がいて、その子たちが「サラちゃんを紹介したい」って言ってくれていたみたいなんです。それで、とあるフェスに行ったときに、隣のVIP席にたまたまいらっしゃって、共通の友人に紹介してもらいました。
その日のアフターパーティーも一緒で、その数日後も一緒に飲んで、一気に距離が縮まった感じです。
–––––YouTubeのコメント欄ではお2人に恋愛関係があるのか等の質問が来ていましたが?
困った時に相談したり、飲みに誘いたくて一方的に夜中に電話をかけたりしていますが、可愛がっていただいてるだけでそのような関係はないです(笑)。2人とも酔っ払っている時に顔を合わせることが多いので、そんな感じにもならないですし、むしろ恋愛相談し合っています(笑)。
–––––どうして多くの著名人から愛されることができるのですか?
私は誰に対しても同じ態度で接しているので、目上の方とも近しい距離になることができるんだと思います。誰に対しても嘘はつかないし、素直に感情を表現しています。
LGBTQの人たちのセーフティーネットを作りたい
–––––モデルとして来年度のパリコレ出演が決まったと伺いましたが、心境をお聞かせてください。
今年度のLAファッションウィークに参加した経験が大きく意識を変えるきっかけになりました。帰国後はレッスンの回数を増やして、ベテランのモデルさんたちに見劣りしないように練習しています。わからないことだらけなので、ひたすら質問しています(笑)。ベテランモデルの方々とは経験値が違うので、一緒の現場になった時にはさりげなく緊張しないコツとかを聞いています。
–––––今後の目標は何ですか?
次世代を担うLGBTQの子たちに対して、私なりに社会貢献をしていきたいです。
小学校や中学校の教育の場で、今ではLGBTQが取り上げられ始めていると思うんですけど、当事者としては、それを推奨してほしいわけではなくて。その子たちがはじめて「自分がそうかもしれない」ということに直面したとき、相談ができる窓口が必要だと思うんですよ。
そういう悩みを誰にも相談できなくて、自死してしまう子もきっとたくさんいると思うんです。そういう子が救われるような、LGBTQのセーフティーネットを作りたいなって考えています。
自分も小中学生時代に辛い経験をしたので、そういった気持ちを和らげられるような存在になりたいです。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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