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〈オウム真理教は死なず〉公安調査庁がSNSで異例の注意喚起…担当者が語るその理由「当時を知らない若者たちがオウム真理教のターゲットに…依然として麻原彰晃の影響下にある」

集英社オンライン / 2024年9月22日 10時0分

6月下旬より、公安調査庁が公式サイトおよび公式Xにて、「オウム真理教」に関する特集をはじめ、ネット上で大きな話題になった。なぜこのタイミングでオウム真理教の企画だったのか、その理由について公安調査庁に話を聞いた。

【画像】オウム真理教の影響が今も…後継団体の施設で発見された驚きの光景

公安調査庁が改めてオウム真理教を特集した理由

今年6月、公安調査庁の公式Xが〈公安調査庁では、今後、全8回に分けて、オウム真理教について解説します。オウム真理教ってどんな団体?何をしたの?今は何をしているの?そんな方々はぜひご覧ください〉というポストを投稿した。

するとSNS上では反響が大きく、このポストは1100万以上のインプレッションを獲得。〈これは記録したい〉〈なんじゃこりゃすごいぞ〉〈公安仕事してる〉〈風化させないようよろしくお願い致します〉〈いまの若者はぜひ見るべき〉といった声が寄せられた。

その後、公安調査庁は予告通り、8月初旬まで8回にわたってオウム真理教に関する特集を展開。団体の概要から、当時起こした事件の詳細、そして現在も続いている後継団体の不穏な動きなどを解説していった。

それにしても、1980〜1990年代に精力的な活動を見せたオウム真理教の特集を、なぜ令和の今になってしたのだろうか。公安調査庁の渉外広報調整官・市川慶さんが答えてくれた。

 まず本題に入る前に、公安調査庁とはそもそもどういった組織なのか。「公安」という言葉自体は、漫画やドラマで目にする機会こそ多いが、その実態を詳しく知っている人は少ない。

「公安調査庁における調査官の仕事は、大きく分けて『調査(現場)』と『分析(本庁)』の2つに分かれます。

調査については、当庁が関心を有している事項について情報を有している情報提供者に協力を依頼し、ヒューミント(人的情報収集)により情報を得ることがメインの業務となります。情報提供者から提供を受けるためには、信頼関係を構築していくことが何よりも重要であり、現場の調査官は日夜、情報提供者と接触しながら信頼関係をコツコツと築き上げるための活動をしています。

分析については、現場から報告される情報やインターネット上などの公然情報から脅威評価レポートを作成し、関係省庁に対して情報提供することがメインの業務となります。膨大な情報の取捨選択や、情報そのものの信頼性の判断など精度の高い分析を行なうためには、豊富な知識と経験が求められます」(渉外広報調整官・市川慶さん、以下同)

当時を知らない若者がオウム真理教に入信?

公安といえば、アニメ『名探偵コナン』の安室透が公安に所属することで有名だが、彼は公安警察であり、公安調査官とはまた違う。公安調査庁は法務省の外局で、公安警察は警察庁警備局が統括する組織の一つなのだ。

さて話を戻し、なぜ今このタイミングで、公安調査庁がオウム真理教特集を企画したのか。

「本年6月27日は松本サリン事件が発生してから30年、来年3月20日は地下鉄サリン事件が発生してから30年と、節目の年となります。いわゆるオウム真理教が現状においても一定の危険性を有している一方で、未曽有のテロ事件である両サリン事件から30年が経過し、“オウムを知らない世代”が増えつつある現状に鑑み、いわゆるオウム真理教の問題を風化させず、その危険性をしっかりと理解してもらうための広報が必要であると考え、今回の企画を発案しました」

実は現在、後継の主要3団体「Aleph(アレフ)」「山田らの集団」「ひかりの輪」は、オウム真理教を知らない世代をターゲットにして勧誘活動をして、毎年、新規の構成員を獲得。団体が過去10年間に報告した新規構成員の年代は、20〜30代が全体の7割以上を占め、年に100人以上が入会した年もあるという。

また、新規構成員の中には、勧誘を受ける前から自発的に入会を希望する者はほとんどいない。Alephが展開する勧誘活動は、対象者が入会の意思を示さない場合、強い口調で詰め寄るなどして、断りづらい精神状態や環境に追い込んで入会させる事例も存在する。

これらの団体に入会してしまうと、どんな被害を受けることになるのか。

「Alephは入会者に対して、毎日の来道(道場に通うこと)や修行、麻原彰晃への帰依を指導しているほか、インターネットやテレビ、新聞などから得られる情報を遮断させています。出家した構成員を管理下の施設に集団居住させて、一般社会と融和しない独自の閉鎖社会を構築しているのです」

Alephおよび、山田らの集団は、施設内に麻原の写真を掲示したり、麻原の発言を収載した教材等を用いた活動を行なったりするなど、麻原に対する絶対的帰依を示している。また、ひかりの輪は、麻原を投影した仏画を施設内に掲示しているほか、年3回の「集中セミナー」(1月、5月、8月)などにおいて、麻原が行なった活動の基礎的ないし本質的部分を維持したカリキュラムを実践しているという。

 さらに精神的な支配だけではなく、金銭面でも被害が発生している。

公安調査庁が注意喚起を続ける理由

「これらの団体は『功徳を積むため』として、継続的な布施を推奨したり、集中セミナーなどへの参加を促し、参加費を徴収したりしていました。ただAlephは現在、公安審査委員会がくだした再発防止処分により、金銭の受贈与(布施など)が禁止されたほか、在家の構成員の指導を行なう道場が使用禁止となったことで、これまで年末年始・GW・夏期など定期的に開催していた集中セミナーなどを開催できない状況にあります」

Alephの収益事業において、多額の収入を上げていたのは、在家の構成員による布施や年末年始・GW・秋期など定期的に開催していた集中セミナーの参加費(年間で最大1億円ほどの収入)等によるものだった。しかしこの処分により、金品その他財産上の利益の受贈与が禁止されたほか、在家の構成員の指導を行う道場が使用禁止となったことから、これらによる収入は大幅に減少している。

 さらに当該団体は、新規構成員を獲得する一方で、組織から離脱する者も同程度おり、全体の構成員数は、近年、大きな変化は見られないという。

活動がかなり制限され、勢力を増すこともできていないならば、改めて世間に呼びかける意図とはなんだったのか。

「当該団体は依然として麻原の影響下にあり、現在も無差別大量殺人行為に及んだ当時の危険な体質を有していることから、活動が活発化することが懸念されるため、組織拡大に向けた勧誘活動の実態について注視しています。

いわゆるオウム真理教は、現在においても、観察処分を課されている団体であり、公安調査庁では入庁した職員全員に対し、庁内研修等でカリキュラムを設けるなど、関連業務の重要性を周知徹底しております。今後も、オウム真理教が過去に引き起こした事件の風化防止を目的とした積極的な広報を実施していく所存です。また、団体に対しては、引き続き、当該団体に対する観察処分を適正かつ厳格に実施していきます」

取材・文・撮影/集英社オンライン編集部 

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