〈倍速老化の恐怖〉痛みがまったくないのに体の中は地獄絵図…急に老け込む人に見られがちな6つの病態、その真犯人とは
集英社オンライン / 2024年9月23日 10時0分
疲労や衰えを急に強く感じるようになった。病気や不調、痛みが急に悪化したり種類が増えたりした…こうした人の体では、一般的な老化とは異なる急激な老化が起きているおそれがある。最新医学では、その原因は免疫の暴走とされている。世界的な評価を得た医学博士・飯沼一茂さんはそれを「倍速老化」と名づけたが、それを生み出す免疫暴走の恐ろしさとは? 飯沼さんの新著『倍速老化』より一部抜粋、再構成してお届けする。
倍速老化が起こっているサイン
免疫暴走には痛みもかゆみもありません。体の中で若返りを担うシステムが崩壊するような地獄絵図が展開されていても、それにより倍速老化が起こっていたとしても、私たちはつゆ知らず、というわけです。
ところが、背後からスッと忍び寄られるように、その実害はあるとき、さまざまな症状となって現れます。以下のような病態があったら、あなたの体内でもほぼ確実に免疫暴走、そして倍速老化が起こっていると考えてください。
【肌の衰え】
加齢とともに皮膚はある程度衰えますが、免疫暴走状態だとさらに加速します。それは炎症性サイトカインに、コラーゲンを分解する「コラゲナーゼ」という酵素づくりを促す作用があるからです。コラゲナーゼがたくさん分泌されると肌の弾力が失われ、シワやたるみが発生していきます。
また、免疫暴走状態だと肌でも炎症性サイトカインが出続けて、攻撃免疫が集結する事態に。すると、肌でも激しく免疫暴走が起きるという悪循環が起こります。これによって正常な肌の細胞にもダメージを与え、肌の衰えを加速させてしまうのです。
【肩、ひざ、腰、関節などの長引くコリや痛み】
免疫暴走が肩やひざ、腰、関節などの長引くコリや痛みとして現れることもあります。それは多くの場合、血流の滞りなどから起こり、周囲の細胞が酸素などの栄養不足に陥って炎症性サイトカインというサインが発令されているからです。つまり攻撃免疫が対応しているということになります。
自分の免疫で自分の細胞を攻撃する状態にも
高齢になると、体を動かす機会が減ったり体の可動域が狭まったりして、動かしにくくなるという問題が生じますが、その最初の段階には「動かない」ではなく「動かしていない」ことがあるはずです。このときに制御免疫が働けず、攻撃免疫が暴走して攻撃を続ける免疫暴走状態が起きてしまうことに。
また、免疫暴走を抱えていると、リウマチを発症するケースもあります。リウマチは遺伝的要因や環境的要因に加え、免疫系の異常が複雑に絡み合って発症するものです。
たとえば遺伝的素因を持っている人が、喫煙や感染症などのきっかけで免疫のバランスを崩すと、自分の免疫で自分の細胞を攻撃する、つまりリウマチとなってしまうことがあるのです。単なる関節痛なのかリウマチなのか、自己判断は難しいため、病院で検査をして確認することをおすすめします。
免疫暴走から肥満に至るケースも
【肥満】
過食や運動不足などで肥満になると免疫暴走が起こるのですが、逆に、免疫暴走から肥満に至るケースも増えてきています。
まず、炎症性サイトカインには脂肪細胞の分化を促すはたらきがあるため、脂肪組織が増えていきます。また、細胞に糖を取り込ませるインスリンのはたらきが阻害されるため血中に糖があふれて高血糖になり、その糖は脂肪へと蓄積される一方に。ホルモンバランスも崩れ、満腹感をもたらすレプチンというホルモンのはたらきが阻害されてしまうと食べても満腹感を得られず、過食になるのです。
加えて免疫暴走状態だと、エネルギー産生をしているミトコンドリアにも負担がかかるためエネルギー不足になり、糖や脂質の消費量も減ってしまいます。
このようにして肥満が引き起こされることもあるのです。
動脈硬化にご用心
【動脈硬化~心筋梗塞、脳梗塞】
世界で最多の死者数を叩き出している病気は「虚血性心疾患」ですが、免疫暴走はそのもととなる動脈硬化にも関わっています。
血中に活性酸素や悪玉コレステロールが増えてくると、活性酸素がつけた血管壁の小さな傷にコレステロールが入り込み、ふくらんでしまいます。こうして血管が狭まるのが動脈硬化の始まりですが、体内が免疫暴走状態だと動脈硬化は悪化するのです。炎症性サイトカインが出ることで、より血管壁が傷ついたり、悪玉コレステロールが酸化したりするからです。
もともと攻撃免疫は、血液中を漂っているコレステロールを異物とみなして攻撃しているわけですが、この血管壁のふくらみも異常とみなすため血管壁に入り込んでコレステロールを抱え込むように。すると、ふくらみが大きなコブのようになってしまうのです。これをプラークと呼びます。
また、攻撃免疫がコレステロールに対応しているあいだも炎症性サイトカインは出続けるため、血管は傷つく一方に。プラークも攻撃免疫をおびき寄せるため、どんどん大きくなっていき、動脈硬化が加速してしまいます。
こうしてプラークがパンパンに大きくなるとやがて破裂し、傷口をふさぐために血のかたまりができて血管の詰まりを起こすのです。これが心臓で起これば心筋梗塞、脳で起これば脳梗塞ということになります。
血管も傷つけられていく
【糖尿病】
糖尿病は「インスリン」というホルモンが機能しなくなることで、血糖値が正常な変動をしなくなる病気です。それによって血管などにダメージが蓄積され、さまざまな症状を引き起こします。
インスリンは細胞に糖を取り込ませて分解させるホルモンなので、インスリンがはたらかないと、まず大量の糖がずっと血中を巡ることになります。すると、その糖が血管の内側にある内皮細胞に入り込んでしまい、それを異常とみなした攻撃免疫は攻撃をすべく活性酸素が発生。その結果、血管も傷つけられていきます。
一方で細胞は、うまく糖を取り込めなくなりエネルギー不足になって活動ができなくなるため、疲れやすい状態に。しかも免疫暴走時に出ている炎症性サイトカインには、インスリンのはたらきを抑えてしまう性質が。これが最も注意を払うべき点です。
糖尿病は薬で治っていない
この50年間で日本の糖尿病患者数は、あろうことか50倍にまでふくれあがってしまいました。その間に医療は飛躍的な進歩を遂げ、多数の薬が開発されたにもかかわらずです。これは糖尿病が、薬では治っていないということ。
病院での治療のメインはインスリンを出す、血糖をコントロールするという対症療法ですが、その前にインスリンのはたらきが抑えられるおおもとの原因を放置しているわけです。
医師とは異なる一歩引いた目線から見ている私は、どこをどうやっても免疫暴走を解消しないかぎり糖尿病患者を激減させることはできないという結論に至ります。なぜなら、免疫が暴走しているかぎり体内の各所にダメージが蓄積し、どんな病気も簡単に悪化するからです。
有害なものを排除し、自らを新しくつくり替えるシステムを担う免疫がズタズタな状態なのですから、それは至極当然のことでしょう。
一定の確率でミスコピーも
【がん】
がんは遺伝子に傷がつき、私たちの体内で日々起きている細胞分裂の際に「ミスコピー」が生じることで起こる病気です。では、なぜ遺伝子に傷がつくのでしょうか。遺伝的要因もありますが、その割合は、がん患者全体のわずか5%程度と言われています。となると、残りの大半はいったい何が原因なのか。
それが、免疫暴走なのです。
というのも攻撃免疫の戦場では、つねに破壊兵器である活性酸素などがあふれており、正常な細胞にまで傷がつくことも多々あるからです。細胞が元気なうちは制御免疫とともに破壊と再生を繰り返すわけですが、同じ部位で集中的に何度も破壊と再生を繰り返していると、遺伝子が傷つきやすくなります。
そうすると何度もコピーしているうちに、一定の確率でミスコピーが起きてしまうのです。さらに、炎症性サイトカインが遺伝子の変異を誘導している可能性もあると言われています。
つまり、何かしらのトラブルを長期間抱えた部位ほど、がん化してしまいやすいということですね。B型・C型肝炎ウイルスの感染から発症する肝臓がんや、ピロリ菌感染から発症する胃がんなどがこの典型で、一度これらのウイルスや菌に感染すると一生体内に残ります。
そのため、本人も気づかないうちに感染したままとなった肝臓や胃で免疫暴走が起こり、破壊と再生を集中的に繰り返すうちに、がん化してしまうことがあるのです。
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