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0.01秒の戦い! ゲームクリアのスピードを競うRTA(リアルタイムアタック)とは

集英社オンライン / 2022年7月3日 12時1分

ただクリアをめざすだけでなく、100分の1秒の世界でクリアタイムを競い合うRTA(リアルタイムアタック)というゲームの世界がある。eスポーツが注目される中、イベントも開催されるほどの人気を持つRTAの魅力とは? RTA in Japanを運営する中島和希(もか)氏、中村圭宏(Naka)氏にRTAの成り立ちやその魅力を訊いた。

ゲーム開始からクリアまでの”現実の経過時間”を競い合うのがRTA

ゲームの楽しみ方は実に様々だ。広大なマップを隅々まで探索したり、無駄を極力省いて効率的にゴールをめざしたり、人それぞれに好みのプレイスタイルがあるだろう。

そんななかでも一風変わったRTA(リアルタイムアタック)というゲームの遊び方がある。



「RTAとはその名の通り、いかに早くゲームをクリアするか競う、タイムアタックの一種です。大きな特徴はスタートからクリアまでの実時間を計測するという点にあります」(RTA in Japan・中島和希氏)

多くのゲームには「In Game Time(インゲームタイム。以下、IGT)」と呼ばれる、ゲーム内部で計測される時間が存在する。一般的なタイムアタックではクリアまでのIGTを競い合うのだが、ゲームをリセットすると最後に保存した時点までIGTも巻き戻るため、保存とやり直しを繰り返せば比較的簡単に良い記録を残せるのだ。

一方、RTAはクリアまで実際にかかった時間を競い合う。一度計測を始めたらミスによりリセットを余儀なくされてもタイマーはそのまま。一時停止や途中休憩も認められない。ゲームによってはクリアまで数時間、十数時間かかるものもあり、通常のタイムアタックより難易度もプレッシャーも格段に上がる。

「このスリルがたまらない、という人も少なくないと思います。私もその一人です。短い時間で攻略しようとすると、普通にプレイするよりも難しい操作や判断が求められるのですが、その分クリアしたときの感動や達成感も大きいんですよ」(中島氏)

「とくにアクションゲームでは努力の成果がはっきりとわかるんですね。自分の操作精度をあげるために、一つのゲームに1500時間以上費やしたこともあります」(RTA in Japan・中村圭宏氏)

RTAが行われたゲームは最低2万タイトル以上!

RTAは国内だけでなく、世界にもプレイヤーが存在する。海外ではRTAではなくスピードランと呼ばれることが一般的だ。ユーザーが自身の記録を投稿できる海外サイト『speedrun.com』には現在、115万人を超えるプレイヤーと、2万以上のゲームタイトルが登録されている。

「未登録の方もいると思うので、実際の走者(RTAプレイヤーのこと)はもっと多いでしょう。RTAをプレイするゲームもそのルールも多岐にわたり、みなさんそれぞれが面白いと思う方法で記録を狙っています」(中島氏)

RTAでは一つの作品に対して複数のルールが設けられている場合がある。例えばRPG(ロールプレイングゲーム)であれば、制作側が想定した手順をしっかりと踏んで攻略するルール、ありとあらゆるバグを駆使してとにかく早くクリアをめざすルール、収集アイテムをすべて集めるルールなど多種多様だ。

作品によっては本来クリアに10時間以上かかるところ、数十分足らずでエンディングまで到達するRTAもある。

「例えば野球ならダイビングキャッチ、サッカーならハットトリックのような、人々を魅了するスーパープレーがありますよね。

RTAではゲームを早くクリアするために様々なテクニックが求められるのですが、これもスーパープレーの一種と言えるのではないでしょうか。子どもの頃に遊んだゲームのRTAを見ると、あまりに緻密な操作の数々に『当時の自分と全然違う動き方をしている!』という驚きがありますよ」(中村氏)

同時接続数は最高18万人! RTAの祭典「RTA in Japan」とは?

中島氏によれば、RTAが盛り上がりを見せ始めたのは2010年初頭頃。当時、海外ではすでにRTAのイベントも開催されるようになっていたそうだ。一方、国内ではじめて複数のタイトルが集まる大規模なオフラインRTAイベントが開催されたのは2016年のこと。それが、中島氏と中村氏が理事を務める「RTA in Japan」である。

「世界ではどんどんRTAが広まっているのに、国内で披露できる場がないのが非常にもどかしかったんです。私自身、一人の走者として業界を盛り上げたい、もっと走者を増やしたいという思いで、RTA in Japanを立ち上げました」(中島氏)

中島さん(写真左下、中央)が2018年のRTA in Japanで披露した『時と永遠〜トキトワ〜』のRTA。中島さんは同作品のワールドレコード保有者でもある

RTA in JapanはRTAプレイヤーがオフライン、オンラインなどで一堂に会し、それぞれが代わる代わる自身の得意ゲームのRTAを行っていくイベントだ。4〜5日間を通して開催され、期間中は24時間、参加者によるRTAが次々と披露される。大会の模様はTwitchで生配信されており、アーカイブはYouTubeでも視聴可能だ。

2016年12月に行われた第1回の参加者は50人前後だったそうだが、回を重ねる毎に規模が拡大していったという。

「2021年の冬に開催された12回目のイベントの参加応募者は500人と、初回と比べて10倍に増えました。視聴者数も増え続けており、直近の大会の同時接続数は平均で約5万人。最高同時接続数は10万人に上っています。

歴代最高の同時接続者数は2021年夏のRTA in Japanで行われた『リングフィットアドベンチャー』のRTAで、18万人も集まりました。運営側としても、どうしてここまで盛り上がっているのかと不思議に思うくらい、盛り上がりましたね」(中村氏)

「eスポーツがサッカーなら、RTAは陸上競技」

ゲームの大会といえば、eスポーツを思い浮かべる読者も少なくないだろう。その注目度から、RTAも一つのカテゴリーとして組み込まれていく可能性がありそうだが、中島氏と中村氏はRTAがeスポーツになることはないだろうと語る。

「RTAのテクニックはスポーツでいうスーパープレーだとお話しましたが、RTA自体は陸上競技や水泳のように、勝敗よりも純粋なタイムに重点を置いています。一方、eスポーツで取り上げられるゲームは野球やサッカーのような、試合がメインの作品。方向性が少し違うんです」(中村氏)

「RTA in Japanは世界記録をめざす大会と誤解されがちなんですが、実際はショーケース、走者の技術のお披露目会なんです。今はとにかくRTA走者の活躍の場の提供に注力していて、それ以上のことはまだ考えていません」(中島氏)

最後に、お二人にRTAの魅力をお伺いした。

「本来ならクリアに数十時間以上かかることが想定されているゲームが、1時間足らずでクリアできてしまうこと。一つのプレイスタイルとしてもかなり面白いので、まずは気軽に始めてみてほしいです」(中島氏)

「RTAで披露されるテクニックは一見難しそうなんですが、コツを知ってしまえば簡単に再現できるものも少なくないんです。もちろん練習次第ではありますが、誰にでも記録を狙うチャンスがある。そのハードルの低さもRTAの魅力ではないでしょうか」(中村氏)

2022年も、8月11日から15日にかけて『RTA in Japan Summer 2022』が開催予定だ。イベントの模様は例年通りTwitchからリアルタイムで視聴できる。一つのゲームに情熱を注いだ猛者たちのスーパープレーが、今年も見られるかもしれない。

取材・文/笠木渉太

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