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相方である前に友達――その絆とユルさが生むマユリカの行き当たりばったりの笑い

集英社オンライン / 2022年7月4日 15時1分

神戸出身、幼馴染の阪本と中谷で結成された漫才コンビ「マユリカ」。ふたりの妹の名前を組み合わせてコンビ名とした彼らは、いわば苦肉の策であった「ポッドキャスト」と「ビキニ写真集」から、500キャパの単独公演を東京で即完させるほどの人気を獲得するに至った。インタビュー後編では、そのネタづくりから「仲良しコンビ」の今後を語る。

説得力という意味での「M-1」は大きい

――仕事は忙しくなっているかと思いますが、充実感はありますか?

中谷 僕は充実してきている感じはありますね。今思い返すと、コロナ禍で家から出られなかったり、昼まで寝ていたりしていた時期が長かったので、仕事で動けているのは嬉しいです。

阪本 お仕事自体をいただけるのはありがたいです。ただ、タイプ的に休みがないと、何のために生きているのかわからなくなる人間なので。「月2回だけでも休みはください」と会社には言っていますね。



――現状のマユリカとして欲しているのは、やはり賞レースでの結果でしょうか。

阪本 目標というか今年の「M-1」はめっちゃ大事やなとは肌で感じています。去年、「M-1」では敗者復活まで行かせてもらって、こうやってビキニ写真集も出したのに、今年3回戦負けだったらわけわからんじゃないですか(笑)。いろもんというか、エロにかまけてしまっていると思われるのが。

中谷 ビキニ写真集を出したからって、エロにかまけているわけではないやろ(笑)。

阪本 “説得力”という意味での「M-1」は大きいですよ。そこはしんどいところでもありますが。

中谷 そうそう。もともと、「絶対にM-1獲るぞ!」と意気込んでいるタイプでもないだけに。注目されている感じがあるので。

阪本匠伍/お酒が大好き。毎晩寝る前にはかなりの量を飲んでいるとのこと。バンド「ジュースごくごく倶楽部」では、ジンジャーエール阪本名義でボーカルを担当

中谷祐太/お酒は飲まないが、突如として痛風を発症した。ラッパー、MCDUNBO兼Mrs.ヒポポタマス名義で作詞・作曲も行う。作曲の際はGarageBandを使用

コント漫才が、僕らにある引き出しだった

――おふたりは設定やシチュエーションがあるコント漫才にこだわっていますが、なにか理由はあるのでしょうか?

阪本 こだわっているというか、僕らはしゃべくりの引き出しが圧倒的に少ないんですよ。

中谷 しゃべくりのネタ、やったことがあんまりないんですよね。

阪本 普通のネタを作ろうと思っても作れなかった。

――逆にコント師になるという選択肢はなかったんですか?

阪本 NSCの最初のネタ見せで漫才をやったので、そこからダラダラと続けてきた感じですね。最初にコントやっていたらコント師にやっていたかもしれない。

中谷 そうかもしれんな。

――漫才では、中谷さんが女性役を務めることが多いですよね。

中谷 あれは良いアイディアが浮かんだとかではなくて、素のままの僕のツッコみがあまりに下手だったんです。たまたま、なにかのネタで僕が女性役をやったのが(ネタを書く阪本的には)良かったみたいで、「もっとこういう言い方をやってほしい」とかいろんな要望をもらうようになって。それが僕らの持つ引き出しだった、というところですからね。

阪本 中谷はこんなにもキモいのに、素のツッコミがイケメンのスタンスなんですよ。

中谷 こんなにもキモいって何やねん(笑)。あんまり上手じゃないという自覚はありますけどね。

――中谷さんの「えっ!」と高い声で驚くところがコントの中でも印象に残ります。「うなげろりん」でも、阪本さんにボロクソ言われているときに発せられることがありますが、あれは日常会話でも同じようなリアクションなのでしょうか?

中谷 いやいや、そういうものではなくて。

阪本 ネタから生まれたリアクションですね。

中谷 阪本からネタ用としてもらった武器なので、ポッドキャストでも使っているという感じですね。

――ちなみにネタはどういったところから発想しているのでしょうか?

阪本 ネタが浮かんでくるとかそんな大層なものはないですね。新ネタライブがあるからそのときにひねり出している感じで。

――ネタ帳に書き溜めているとかもなく?

阪本 全然ないですね。ネタのことを四六時中考えるとかもないです。言葉を選ばずに言えば、ライブに向けておろさなしゃあないからおろしてる。

中谷 ハハハハ!

――強制的に作るタイミングがあるから作っていると。

阪本 そういう時間がないと、僕らふたりともほんまに怠け者なんで。

中谷 ネタづくりはほんま人によりますね。言われなくてもコンスタントに作り続けている人もいますし。

阪本 僕らはそういうタイプではないので、いつでもギリギリで作ってます。

――設定としてはすごくわかりやすいのも特徴ですよね。「ドライブデート」や「夏祭り」、「結婚相談所」など。そういう設定は、ご自身の実体験から生まれるものなのでしょうか?

阪本 僕らは全然ですよ。学生時代に特に恋愛経験とかもなかったので。

中谷 かといってあまり経験してないような突飛なものはできないから、わかりやすい設定が多いかもしれないですね。なんとなく正解がわかるものを作っているというか。

中谷の豪快な笑い声はポッドキャストの名物。ときに「グフフフフ」とドラえもん(大山のぶ代版)のようになり、阪本から「ドラえもんぶるな」と注意される

今の楽しい時間を大切にしていきたい

――ニッポンの社長さんやロングコートダディさん、ビスケットブラザーズさんなど、マユリカさんと同期、または仲が良いコンビも東京やテレビで見られる機会が増えました。

中谷 僕らはそのあたりも恵まれていますね。彼らのことは何でも知ってるつもりでしたけど、テレビとかで見ると、「そういうところがあるんや!」みたいな発見があって楽しい。たとえるならば、父の乳房みたいな。こういう形なんや、とか、こういう色してるんや、とか、そういう驚きがありますね。

阪本 ……たとえ、合ってんの? 父の乳房は別に盲点にはならへんやろ。

中谷 いやでも親父の乳房見なくない? まじまじと。

阪本 ……(呆れて)。

――(笑)。阪本さんは課外活動として、芸人仲間とバンド「ジュースごくごく倶楽部」を、中谷さんもkento fukayaさんのプロデュースで「ZiDol」というアイドル活動をやっていますが、漫才とともに両立していきたい気持ちはありますか?

中谷 そんなそんな。僕のアイドル活動は誘われるがままやっているだけなんで、軸にはならないです(笑)。

阪本 「ジュースごくごく倶楽部」は仲の良いメンバーとやっているので、本当にストレスゼロなんです。だから、趣味に近いですね。周りのメンバーには野心があって、もっと大きい会場でとか、ゆくゆくはテレビも出たいという気持ちがあるみたいですけど、僕は今の楽しい時間を大事にしていきたいですね。

中谷 しんどいのがイヤなんや(笑)。

阪本 仕事になりだすとな。「テレビやからこういう風にしてほしい」とか言われるのもアレなんで、今のまま楽しく。

得意とするのはコント漫才。中谷は女性役を務めることが多い。先日「紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA」で行われた単独公演は即完だった

避けたいのは“M-1のM流れ”だけ

――一方で中谷さんは、芸人として野心みたいなものはありますか?

中谷 僕も野心まではないですね。ある程度お仕事をいただけて、このままやっていけたら嬉しいですね。野心というか、今いろいろ充実している中で、「M-1」だけは結果が出ないとか、河童の川流れのような状態だけにはならないようにしたいなと。

阪本 河童の川流れ? それも使い方合ってる?

中谷 えっ! ほら、俺ら一応漫才師としてやってるのに、本業だけうまくいかないとかイヤやん。「M-1のM流れ」だけにはならないように。

阪本 M-1のM流れ……?

――見出しにしておきます(笑)。そういう課外活動への考えかたも含めて、ベースとしては楽しくやっていくというのがマユリカさんのスタンスなのかもしれないですね。そのふたりのズレのなさやある意味でのゆるさが、世間的にマユリカの評価としてある「仲の良さ」にも繋がっているような気がします。

阪本 どうなんですかね……僕らが仲良いというか、他のコンビが特殊なんじゃないですか。
中谷 それはそうやな。

阪本 僕らは3歳から一緒におるんで。逆に他のコンビは、NSCとかで「一緒にコンビを組もう」というところからはじまっている人たちが多いから、「ご飯に一緒に行くのも恥ずかしい」とか言ってますけど。

中谷 友達からはじまったその関係性が、芸人になってもずーっと続いて今まで来た感じですね。

阪本 僕らは30年近く、一緒にいるので。これが普通ですね。

(了)

撮影 飯本貴子
取材・文 森樹

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