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「闇落ちしてよかった」スターライト・キッドが語る“ヒールターン”のすすめ

集英社オンライン / 2022年7月7日 13時1分

女子プロレスラーは美しい。顔面を殴り合い、髪を引っ張り合い、全身汗まみれになり、化粧は崩れる。それでも彼女たちが放つ極上の美しさに、観客は目を奪われる。今回は女子プロレス界が生んだ最高のマスク・ウーマン、スターライト・キッドの美しさの秘密に迫る。

ヒールターンしたら、欲が出てきた

“闇に踊るスカイタイガー”ことスターライト・キッド

痛い。悔しい。勝ちたい――。闘いを通して、感情を表現するのがプロレスラーだ。顔の表情や全身の細かな動きから、わたしたちは彼、彼女らの感情、そして生き様を感じ取る。

では、顔の半分以上がマスクで覆われている覆面レスラーはどうか? 感情もまた覆われてしまうのか? そうとは限らない。感情表現が豊かな覆面レスラーは確かにいる。その代表が、“闇に踊るスカイタイガー”ことスターライト・キッドだ。



2015年10月、キッズレスラーとしてスターダムでデビュー。年齢非公開だが、今年“年齢不詳の新成人”になった。テクニックとスピード、そして生来のプロレス脳を併せ持ち、海外からの評価も高い。

しかし、真面目で控えめな優等生タイプ。正規軍・STARSに所属していた頃は、「“スターダムのアイコン”岩谷麻優の隣にいる人」――そんなイメージが強かった。

それが、2021年6月、正規軍・STARSがヒールユニット・大江戸隊との「全面戦争イリミネーションマッチ」に敗れたことから、大江戸隊に強制加入させられた。闇落ち――いわゆるヒール(悪役)ターンを余儀なくされたのだ。

キッドは変わった。マスク、コスチューム、メイクといった見た目の変化と共に、より自由に、より欲深く、より感情豊かにプロレスをするようになった。相変わらず顔はマスクで覆われ、目と口しか見えない。それでも世界中のプロレスファンを魅了し続ける彼女の魅力とは――。

大江戸隊に移籍したときは「ものすごく悩んだ」と話すキッド

――昨年6月、突如、STARSから大江戸隊に移籍したときは、見ていて本当につらかったです……。ショックを受けたファンは多かったと思いますが、ご自身ではどんな心境でしたか?

STARSが嫌いで抜けたわけじゃなかったから、ものすごく悩んだ。心はSTARSにいるのに、体は大江戸隊みたいな感じだったな。ちゃんと大江戸隊に切り替えるまでに時間がかかった。

――7月、岩谷麻優選手が「1vs5スターライト・キッド奪還マッチ」で大江戸隊全員に勝利しました。でもキッド選手はSTARSに戻ることを拒否しましたね。

大江戸隊でやっていくっていう意志を固めたあとだったんだよね。ちょっと迷ったけど、それでまた戻ったら意味がないというか。やっぱり状況を変えないと、人って変わらないから。自分のために残った。

――個人的には一般人も、時にはヒールターンってしたほうがいいと思っていて。わたしも隙あらば、ヒールターンしようと思ってるんですよ。

アハハハハ! どういうこと!?

――口調とかメイクとかをガラッと変えたら、強く生きられるようになる気がするんですよね。

うんうん。いいきっかけにはなるかもね。

――キッド選手は闇落ちしてよかった?

よかった! STARSの頃には見えなかった部分がいっぱい見え始めた。特に人間の欲深さみたいなものに気づいたというか。

今は「自分が自分が」っていう意識しかない

海外からも高く評価された、AZMとの一戦(2.23長岡大会)©スターダム

――「大江戸隊にいる自分のほうが素」とおっしゃっていますね。

うん、素に近い。STARSのときは優等生みたいな感じだったから。まあ、根はめちゃくちゃ真面目なんだけど、いまはヘンに気を使わないというか、本当にやりたいことができてる。自由だよね。なんでも発言できるし。

――マイクパフォーマンスもすごく上手です。STARSの頃はそもそもマイクを持つ機会があまりなかったですよね。

やっぱり、(団体のアイコンである)岩谷麻優という存在が大きかったと思うんだよね。岩谷麻優の妹分だったから、彼女より上には立っちゃいけないという意識があったと思う。だけどいまは「自分が自分が」っていう意識しかない。プロレスラーはそうじゃないとダメだなって思った、すごく。

――当時は、妹分でいることに疑問は感じていなかった?

うん。「岩谷麻優と一緒に頑張っていこう」みたいな感じだったね。彼女の隣にいて、超えたいという気持ちはあったけど、行動は伴っていなかった。そこまで欲がなかったんだと思う。気持ちを表に出すことはなかったし、発信力が全然足りてなかったのかなぁって。そのときはそのときですごい楽しかったし、いまだから気づくことなんだけど。

――いまは大江戸隊の中心にいますよね。

自分が大江戸隊としてやっていくって決めてから、初めて全部を変えて出場した大会で、リーダーの(刀羅)ナツコが怪我をしたんだよね。だれが大江戸隊を引っ張っていくのかってなったときに、自分しかいないんじゃないかと思った。ユニットを引っ張っていかなきゃいけないっていう気持ちが芽生えてきて、欲深さがどんどん出てきたかな。

――気持ちが変わって、プロレスにも影響があった?

あった! 周りがやってないことをやりたい、みたいな。自分が一番でいたい、みたいな。周りと同じでいたくないから、技の入り方とか、種類を変えたりとか、マイクもそう。周りが言わないようなことを言ってやろうって思う。どうしたら自分が一番注目されるかをめっちゃ考えるようになったのかな。

キッド流「マイクの極意」

――キッド選手はゆっくり、はっきり喋るから、すごく伝わる。

聞き取りやすいって言われる。そういう意見をいただいてから、もっと聞こえやすく喋ろうってすごい意識するようになった。マイクってお客さんに伝わらないと意味がないから。

――そのために本を読んだり、映画を観たりして、勉強していますか?

たぶん普通だったらみんなそれするんだけど、自分は全然してなくて。自分の中で考えてるだけ。本とか嫌い。文字が嫌い(笑)。

――マイクの上手さは天性のものなんですね!

でも他の人のマイクは、映像とかでたまに見るかな。一時期、ジュリアがすごい目立ってたじゃない? そのときに、ジュリアはどんなことを言ってたんだろうとか。

ジュリアとのマイク合戦。刺激的な言葉の応酬に、ファンは魅了された ©スターダム

――6.5後楽園ホール大会でジュリア選手と試合後にマイク合戦になりましたね。ジュリア選手は刺激的なマイクでファンを魅了しているわけですが、キッド選手も決して負けていなかった。二人のやり取りは、言葉のチョイス、抑揚、間合い……すべてが芸術的で美しかったです。

ジュリアはたぶん、わたしのことをずっと下に見てたと思う。「キッドがここまで来るとは思っていなかった」っていう記事も読んだし。だから、ジュリアも超えないといけないなと思ってる。一時期、本当にジュリアだけの時代みたいになっちゃってたけど、そんなんじゃつまんない。そういう人間が増えるといいよね。もっと欲を出してくるような。

――大江戸隊はもっとガンガン前に出てもいいのかも。

そう、大江戸隊ね、静かなんだよな。ナツコは「自分が自分が」っていう感じではないけど、一つ一つの発言に説得力がある。頭がいいんだよね。あとヒールとしての見せ方が本当にすごい。でもナツコと自分はヒールとしての種類がちょっと違うから、ナツコが戻って来たときに、ぶつかるのか共闘するのか。あんまり組んだことがないから、そこは楽しみだなぁ。

――大江戸隊のメンバーは、仲はいい?

マジで仲いい! みんなでナツコの家に行って餃子パーティーとかするし(笑)。自分の家に来たときは、たこ焼きパーティー。普段からスタバに行ったりとか、みんなマジで仲いい。居心地がいいよね。

――大江戸隊の餃子パーティー、いいなぁ! どんな話をするんですか?


プロレスの話ももちろんするし、みんなアニメとかめっちゃ好きで。わたしは全然わからないんだけど。プロレスの話は、これからどんな風にしていきたいかとか、アパレルのグッズの話とか。

――キャリアとしては、キッド選手はもうスターダムの中でも上ですよね。

キッズからやってると、キャリアだけが積み重なっていく面が嫌だなぁっていうのがあって。AZMとかもたぶんそうだと思う。キャリアだけが積み重なって、芽が出るのが自分は遅かったから。いまもうスターダムって、(林下)詩美とか上谷(沙弥)とか見てもらえればわかるけど、キャリアは全然、関係ないからね。そこで比べられたりするのはすごい悔しいなぁと思う。

「東京ドームを満員にしたい」

アーティスト・オブ・スターダム王座のベルトを防衛中(with鹿島沙希&渡辺桃)

――当面の目標は?

今年に入ってハイスピードのタイトルを落としたけど、ゴッデスとアーティストを取って、大江戸隊が週刊プロレスの表紙を取ったりとか、自分が目標にしてたことは達成できた。次はシングル戦線を頑張ろうかなぁって思ってる。白のベルト(ワンダー・オブ・スターダム王座)に挑戦表明したから。次は白と赤(ワールド・オブ・スターダム王座)だよね。

※7月9日(土)立川ステージガーデン大会にて、王者・上谷沙弥が持つワンダー・オブ・スターダム王座に挑戦が決定。
[発売中]『STARDOM MidSummer Champions 2022〜真夏の王者たち〜』東京・立川ステージガーデン – スターダム✪STARDOM (wwr-stardom.com)


――キッド選手は赤白、両方のベルトを狙えるレアな選手だと思います。

フフフ。両方取ったのは、岩谷麻優が最後なのかな。わたしみたいに体が小さい人たちって、そういうトップに見られないというか。「ハイスピードだけ」みたいなイメージで見られるのがすごい嫌で。そういうイメージを変えたい。その先頭になるのが自分。赤にはまだ挑戦したことないけど、視野に入れてるし。マスクウーマンが団体の顔になるっていうのをやりたい。

――やってほしい……!

スターダムのトップじゃ狭いかなって思うから、女子プロレス界。いや、プロレス界だよね。プロレス界の全盛期を取り戻したい。この前、格闘技(那須川天心VS武尊戦)で東京ドームが超満員になったけど、あれをいまの時代にプロレスでできたらすごいなぁって思う。夢だなぁ。

あとはスターダムで東京ドーム大会はやりたい。いまのスターダムがあるのは生え抜きの選手たちが支えてきたからだけど、「生え抜きが弱い」って言われるのがすごい悔しくて。わたしは負けたくないんだけど、生え抜きの人たちはあんまり欲がない。そこを引き出せるようにもなりたいと思う。


撮影/林ユバ

【大会情報】
真夏の祭典『5★STAR GP 2022』が今年も開催決定!

~開幕戦DAY1~
2022年7月30日(土)開場4:30PM 試合開始5:30PM
東京・大田区総合体育館
~開幕戦DAY2~
2022年7月31日(日)開場2:00PM 試合開始3:00PM
東京・大田区総合体育館

【真夏の祭典】史上最多26選手による『5★STAR GP 2022』が今年も7/30開幕! 出場権争奪リーグ戦も開催! – スターダム✪STARDOM (wwr-stardom.com)

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