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「いつフリーに?」は偏見。TBS上村彩子アナが目指すSDGsなアナウンサー像

集英社オンライン / 2022年7月22日 15時1分

起業家からお笑い芸人、スポーツ選手にいたるまで、各界のトップランナーをゲストに迎え地球の未来を語り合うラジオ番組『スナックSDGs』(TBSラジオ)。こちらで今年4月から“2代目ママ”を担当しているのがTBSの上村彩子アナウンサーだ。担当して約3ヶ月が経ち、SDGs(持続可能な開発目標)に対する意識に変化があったという。

ラジオ番組『スナックSDGs』でパーソナリティーを務める上村彩子アナウンサー

等身大のSDGsを実践中!

――マスターを務める大石英司さん(UPDATER代表取締役)とともに、2代目ママとしてパーソナリティを担当されている上村さん。もともとSDGsに対してはどのようなイメージを持っていましたか?



上村彩子(以下、同) 「持続可能な開発目標」と聞くと、やはり最初は難しそうなイメージがありましたね。社内で実施しているSDGsのキャンペーンで「取り組んでいるSDGsは?」と聞かれても、「何かやっているっけ?」「カッコいいことを答えなきゃいけない!」と思っていました。でも、このラジオで本当に多様なジャンルのゲストの方にお話を聞いて、「これって本当にSDGs?」と思うことでもきちんとつながっていることを知り、とても身近なものなんだと感じました。

――すでに上村さんが実践されていたことで「これもSDGsの一つだったんだ」と思ったものはありますか?

私はジムに週1回通っているんですが、これも自分の心や身体の健康を保つ行動、つまりウェルビーイングなのでSDGsにつながるんですよね。また、職業上、メモをたくさん書き込みたいので資料を紙にプリントアウトすることも多いんですが、大量の紙を使ってしまうと自分の心も痛むので、縮小して2ページのものを1ページで収まるように調整したり。

あとは、物を捨てる前に、誰か必要な人がいるかもしれないと思ったらフリマアプリで出品したり、それを発送するときも、別のネット通販で取っておいた梱包材を再利用したりもしています。

どれも当たり前のようにしていたことで、取り立てて「SDGsをやっています!」とアピールするようなことではないと思っていましたが、きちんとつながっている。自分にできる「等身大のSDGs」でいいんだと、このラジオを通して改めて気がつきましたね。

「マイノリティの人たちの気持ちが全然わかっていなかった」

――番組の中で、特に印象的だったエピソードやゲストはいらっしゃいますか?

「パートナー」をテーマに、加藤茶さんと結婚された加藤綾菜さん、臨床心理士で女性のパートナーとYouTubeチャンネルを運営されているみたらし加奈さんのお二人をゲストにお呼びした回です(2022年5月7日、15日放送回)。

加奈ちゃんとは大学時代の知り合いで、このラジオの担当が決まった際に「呼びたいゲスト」として挙げた一人。私が加奈ちゃんと出会った当時、彼女には男性のパートナーがいたのですが、その後なかなか会えないまま社会人に。加奈ちゃんが女性のパートナーとYouTubeを始めたときに「あれ? 男性が好きじゃなかったのかな?」とずっと気になっていたんです。この番組で再会を果たして、どのように自分のセクシュアリティに気がついたのか、家族へのカミングアウトについてなどお話してくださいました。

彼女は「好きになった人が好きな性」のパンセクシャル(全性愛者)。その言葉も初耳でした。これまでは自分にとって近い存在の中で「LGBTQ+」の方がおらず、ニュースなどで扱うにもどうしても自分ごとにするのが難しかったんです。でも、この再会をきっかけに今年5月に初めて「東京レインボープライド」(LGBTQ+の日本最大規模のイベント)に足を運びました。

そこには住宅紹介やお墓、新婚旅行のアテンド、高齢になったときの相談会などさまざまなブースが出展されていました。LGBTQ+の人たちが自分の想像以上に生きづらいことが多いのだと驚きました。一緒に住みたいと思っても部屋が借りづらい、一緒のお墓に入りたいと思っても同性婚が認められなければ親戚からの理解が得られないと叶わない。

マジョリティの方に属している自分は当たり前のように受けていた恩恵も、受けられないことが非常に多いことを知り「マイノリティの人たちの気持ちが全然わかっていなかったな」と改めて感じた経験でした。

もう一つは、双子のお兄さんとともに福祉実験ユニット「ヘラルボニー」を設立された松田崇弥さんにご登場いただいた回です(2022年6月4日、12日放送回)。ヘラルボニーは、主に知的障がいのある方々が描いたアート作品を商品として世に伝えているブランド。知的障がいがある人たちを「異彩」と定義して、その異彩を社会に放っていくべく活動をされています。

松田さんのお話で印象的だったのは、「アートの価値が正しく評価されて、そこに社会的な価値が生まれるという循環をつくりたい」というお話です。「障がい者のアートだから買ってあげよう」「助けてあげよう」ではなく、アートとして純粋に価値があったら値段もついていくはず。それこそが新たな福祉の形だなと思いました。

“アナウンサー”というマイノリティ

――上村さんが今後目指していく「SDGsなアナウンサー像」はありますか?

私が発した言葉が、差別や偏見を助長することがあっては絶対にならないので、言葉についてはより意識していきたいですね。アナウンサーはOAするまでの「最後の砦」。生放送でVTRの中で間違った表現や言葉があったら、私たちがスタジオでその場で訂正すれば後から謝罪しなくても済みます。

放送ガイドラインでは細かく規則が決められています。その一つが「障がいがある/持つ人」という表現。「障がいを持つ人」は「自分の意思で持っている」と捉えられかねないので、「障害がある方・ある人」という表現にしなくてはいけません。また、「女子アナ」という言葉も、女性に対するマイナスの意味が含まれたり、子どもじみた文脈で使わないようにする、といった記載もあります。

もしかしたら、私も“アナウンサー”というマイノリティには所属しているかもしれないですね。勝手なイメージを持たれて、嫌なことを言われたことは何度もあります。

――例えば、どのようなことを言われたのでしょうか?

「すぐやめるんでしょ?」「いつフリーになるの?」は社内外問わずよく言われますね。同じ会社員として入社したにもかかわらず、他部署の人は言われないのにアナウンサーという職種なだけで言われてしまう。頑張ってやっていても、なぜやめる前提で愛社精神がないようなイメージを持たれてしまうんだろうと思います。

あとは「スポーツ選手と結婚するんでしょう?」も。仕事でアスリートにお会いする機会が多いのですが、男性アナウンサーは同じ質問をされている場面に遭遇したことがありません。世間のイメージがあるんだと思いますが、性別の違いや役割を決めつけた表現を、私はしないようにしようと思いますね。

例えば、友人との会話の中でも今までは「彼氏・彼女はできた?」と聞いていたけど、「パートナー」の方がいいんだなとか、話し始めるときに「普通は……」と言ってしまいがちですが、普通なんて自分の主観でしかないなとか、さまざまなことに意識を向けるようになりました。言葉を扱うアナウンサーという職業上、受け取った人がどういう気持ちになるか想像力を働かせて言葉を使っていきたいですね。

――最後に、「スナックSDGs」の“ママ”としてどのようにSDGsの大切さを伝えていきたいですか?

「堅苦しい」「難しそう」と思われがちなテーマだからこそ、本当はそんなことないと伝えていきたいです。例えば、猛暑や異常気象による災害が起きたら、地球に異常が起きていると感じられますが、そうでなければ自分ごととして捉えにくいものもあると思います。このラジオをきっかけに気づいたり知ったりするだけでも、何かアクション起こせるはず。リスナーの方たちも一緒にスナックで座って聞いているような感覚で、楽しく学んでいく手助けができたらいいなと思っています。

【番組情報】
スナックSDGs powered by みんな電力
放送局/TBSラジオ
放送日時/毎週土曜日、午後7時30分~8時
パーソナリティ/大石英司(UPDATER代表取締役)、上村彩子(TBSアナウンサー)
公式HPはこちら>>
https://www.tbsradio.jp/2030sdgs/

取材・文/堤 美佳子
撮影/吉楽洋平

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