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プロアマ入り乱れる大喜利が今アツい! ネットの遊びがライブシーンになるまで

集英社オンライン / 2022年7月26日 14時1分

プロのお笑い芸人と素人が混ざり合い、回答の面白さで切磋琢磨している大喜利シーンが今、人気急上昇中だ。チケットが即完売する企画ライブも少なくなく、その場から有名芸人も輩出。そのプレイヤーたちの多くは「ネット大喜利」出身らしい。シーンの中心人物たちが集まる「大喜る人たち」のライブ終了後に、盛り上がりの経緯を聞いた。

チケット即完で満席

今年5月、東京・西新宿のナルゲキ。148席の劇場でこの夜行われたのは「大喜る人たち」という大喜利ライブだ。

ステージ上に椅子が一つ。出演者が入れ替わり立ち替わりこの椅子に座って、大喜利のお題に答えていく。MCを除く出演者17名のうち、7名は趣味として大喜利に参加するアマチュアの大喜利プレイヤー、いわゆる「素人」だ。



けれど2000円のチケットは完売で、自由席のため開場時間から堰(せき)を切ったように観客が集まった。

A・Bブロックに分かれて登場する出演者。Aブロックは左から、MCの早乙女零(クロアド)、寺田寛明、栗原、レッドブルつばさ、サツマカワRPG、しらす(牛女)、店長、六角電波、青木大地(ぎょねこ)、オジマアロー(ぎょねこ)、MCの大久保八億(クロアド)

2018年、小さな会議室での動画収録から始まった「大喜る人たち」。

大喜利のお題ごとに切り取った短い動画をYoutubeなどの動画プラットフォームに公開して徐々に人気を得て、現在はYoutubeチャンネル登録者数約7万人となった。出演者のほとんどが一般には無名の芸人かアマチュアでありながら、多くの動画が数万回再生を数え、有料のライブにもこうして人が集まる。

会場は満席

M-1グランプリ決勝進出で知名度を得る前からこの企画に出演している真空ジェシカ・川北茂澄は、「華はない。回答の面白さだけで戦っている」と評する。単発の短いボケで笑わせる大喜利はただ面白さだけで戦えるのだということを、動画の再生回数の多さが示している。

大盛り上がりの会場

お題が出ると、ほとんどノータイムで手が上がる。そして、初答から大受け。「すごいなぁ」と感嘆の声が客席から漏れ出る。

回答しているのは決して有名人ではない。それでも満席の会場は異様なほどの熱気に包まれ、爆発するように笑いが起きる。出演者が回答を重ねるごとにその威力がどんどん高まっていく。

こうした大喜利だけのライブは「大喜る人たち」の他にもさまざまな企画が存在し、それぞれに支持者を集めている。アマチュア出演者の名前を冠したライブのチケットが発売即完売したり、東急のイベント公募プログラムによって開催された「大喜利渋谷杯」ではアマチュア出演者が渋谷スクランブル交差点の巨大ビジョンに映し出されたり。

今の大喜利シーンの盛り上がりを説明するとこういうことになるけれど、とにかくよくわからなくても面白い大喜利を、よくわからないままに楽しむ人が増えているというのが現状だろう。盛り上がりの経緯について、「大喜る人たちseason21」終了後のナルゲキで古参の出演者たちに座談会形式で話を聞いた。

座談会メンバーは、芸人の寺田寛明、警備員(ハチカイ)、Yes!アキト、アマチュアの六角電波、ぺるとも、冬の鬼、加えて主催者の小川悠介(なお、シーンの中心的な企画ライブを主催する芸人・寺田寛明には後日、追加の取材を行った)。

Aブロックと入れ替わりで登場したBブロック出演者。左から、MCの早乙女零(クロアド)、冬の鬼、警備員(ハチカイ)、ぺるとも、マツモトクラブ、平井“ファラオ“光(馬鹿よ貴方は)、ぼく脳、なかがわりょう(フランスピアノ)、Yes!アキト、小林メロディ(ブリキカラス)、栗谷(カカロニ)、MCの大久保八億(クロアド)

きっかけはネット大喜利と誰でも参加できるイベント

――まずはみなさんの大喜利歴を教えてください。

六角電波 10代からやっていて、人前でやり出して13年くらいですね。「ネット大喜利」を入れると15年くらい。

一同 すげー!

寺田寛明 大喜利13年もやってんだ!

六角電波 寺田さんもほぼ同じくらいでしょ!

寺田寛明 僕は15歳頃からネタをやるほうのお笑いライブには出ていたので、芸歴は15年以上になりますね。ただ、当時のお笑いライブではネタ以外の演目で大喜利をやる文化はなくて、僕も大喜利をやっていたのはネットです。

ライブ終了後のナルゲキ客席にて。左列手前から時計回りに、寺田寛明、警備員(ハチカイ)、六角電波、ぺるとも、冬の鬼、Yes!アキト、主催の小川悠介。

ピン芸人の寺田寛明(マセキ芸能社所属)/R-1グランプリでも連続で決勝進出している実力者。シーンの先駆けとなったライブ「大喜利千景」を主催している

六角電波 僕は誰でも出られる大喜利大会があると教えてもらって、「大喜利天下一武道会」にエントリーしたのが19歳でした。

寺田寛明 六角さんは初参加で優勝してますよね。僕も2010年頃に「天下一」に参加したのがいわゆる大喜利イベントの最初です。「天下一」は予選から始まるトーナメントの大会なんですが、4日間で行われる予選の枠がすぐ埋まってしまうんですよ。200人くらい回答者として参加していたんじゃないかな?

六角電波(アマチュア)/さまざまな大喜利イベントを主催し活発に活動している大喜利プレイヤー。寺田によれば、「理論派。どこから出てきたのかわからない存在。大喜利には面白いと強いがあるが、強い人。もっと評価されるべき」

六角電波 当時は他の大喜利プレイヤーと顔を合わせる機会って「天下一」くらいしかなかったですよね。

警備員 僕はネット大喜利から数えると15年くらいです。2ちゃんねる(当時)の大喜利スレ出身で。

冬の鬼 警備員のTwitterのIDなんだっけ?

警備員 自宅警備員だから警備員って名前をつけて……、Vipperの警備員で@kvipperです。ニュー速VIP掲示板に大喜利スレがあって。「笑いに自信のあるやつ集合」っていう……。

一同 (笑)。

警備員 笑いに自信があったので……。

冬の鬼 まんまと集まった。

寺田寛明 Vipperで警備員って名前のやつが面白いわけないだろう。

冬の鬼 それが面白いという奇跡の状態(笑)。

警備員 そのスレッドで大喜利専門サイトを知って、冬の鬼さんとか六角電波さんと知り合って。

ぺるとも 俺はネット大喜利が中1からで、10年くらいやっています。

寺田寛明 ぺるともは最初に会ったとき、高校生だったもんな。

ぺるとも 人前に出たのは高校生のときからですね。長すぎて自分でも引いちゃうな(笑)。

ぺるとも(アマチュア)/著名なプレイヤーの中では世代が下だが、「ぺるともNight」や「大喜る人たち Seasonぺるとも」など、名前を冠したライブが満席に。寺田によれば、「ぺるともの人気は檜原洋平(ママタルト)がイジり出したのがきっかけで、それに返すうちにどんどん面白くなった」

六角電波 今日のMCだった大久保八億さんとかも初めて会ったときは高校生でしたね。冬さんは?

冬の鬼 俺はネットの大喜利みたいなのはやっていなくて、いきなり生の大喜利に出だしたのが2011年くらいですね。

冬の鬼(アマチュア)/あらゆるジャンルの王者を集める地上波番組に大喜利王者として呼ばれるなど定評がある。寺田によれば、「誰にでも伝わるように回答しているが玄人にも面白い。例えるならフリースタイルダンジョンのR指定。一般のお客さんの入り口になる」

ぺるとも みんな歴が長すぎる。

寺田寛明 今日はじじいたちの集まり。

一同 (笑)。

――Yes!アキトさんはもともと地元の北海道で芸人としての活動を始めたそうですが、大喜利も当時から?

Yes!アキト そんなことより椅子から落ちそうです!!!

六角電波 筋肉を使えば修正できるのでは……。

椅子から落ちそうなYes!アキト

Yes!アキト (絞り出すように)先週、(大喜利を)始めました。

冬の鬼 「椅子から落ちそうなYes!アキト」ってキャプションの写真が載るよ(笑)。

――ありがとうございます、撮れました(笑)。

Yes!アキト 「札幌オーギリング」というプロレスと大喜利の融合みたいなイベントに出てました。8年くらい前かな? ただ上京して2、3年は大喜利をやってるって知らなくてブランクがあります。実質5年くらい。

ピン芸人のYes!アキト(サンミュージックプロダクション所属)/ピンとして『R-1グランプリ』決勝、また3人組ユニット・怪奇!YesどんぐりRPGとして地上波番組への出演多数。寺田によれば「アクションで考えられる、フィジカルが強い大喜利。声からして面白く、求心力がある。少し発想が違う存在」

大喜利が芸人を目指したきっかけ

――ネット大喜利というのがあったんですね。

六角電波 大喜利で競うための、投稿と投票ができて集計までしてくれるCGI(コモン・ゲートウェイ・インターフェイス)を作った人がいたんですよ。

冬の鬼 誰もわからないよ、掲示板とかを作動させられるプログラムのCGIの話(笑)。

Yes!アキト 「爆笑オンエアバトル」(NHK)を模したネタで競うサイトとかもあったよね。

寺田 僕もそのサイトで大喜利をやっていました。

六角電波 そのサイト出身の芸人さんとかもいますね。アマチュアが大喜利できる場が最初はネットにしかなかったんです。

警備員 お笑いが好きな人が、自分も表現したいと思ったときに一番たどり着きやすかった。僕も山口県だったのでネット大喜利ばかりやっていました。

六角電波 大喜利大会は主に東京にしかなかったですしね。僕もイベントを主催していますが、会議室とかで集まってひたすら大喜利をやるという集まりがあって、それをライブ化したのが寺田さんの「大喜利千景」だと思います。それまでは大会はあっても内輪でやってる感じで。広く宣伝してお客さんを集めるライブはあまりありませんでした。

寺田寛明 大会というのは競技やバトルなんですよね。「大喜る人たち」のようにワイワイやる感じの場所がなくて。競うのではなく好きに回答する、というのをやってみたら、結構盛り上がりました。

警備員 実は、僕は「大喜利千景」に出たくて上京したんですよ! ネット大喜利の知り合いの人たちも立っている舞台があるって知って。2016年に上京して、翌年には「千景」に出演していました。

トリオで活動する警備員(ハチカイ、パッチューネ所属)/ハチカイとしては結成2年目でキングオブコント準々決勝進出。寺田によれば、「警備員の回答はコントのようにキャラクターに入る憑依型なのが新しい。切り取りの動画でも伝わりやすく、時代に合っている。バズる大喜利」

六角電波 「千景」がなかったらハチカイもなかったんだ。

警備員 お笑い芸人になったのもそれがきっかけです。

Aマッソや錦鯉も出演した「大喜利千景」

――「大喜利千景」がエポックメーキングだったんでしょうか?

寺田寛明 最初はルノアールの会議室で始めたんです。会議室代を考えるとライブ会場が借りられるんじゃないかと思い始めて、ライブにしてみたら意外と初回からお客さんが来てくれた。観客の半分くらいは芸人だったとは思いますが。

「大喜利千景」の初期を振り返る寺田

冬の鬼 初期はAマッソさんや錦鯉さんとかも出演されてましたね。

寺田寛明 当時のメンバーが賞レースで結果を出し始めていますね。にゃんこスターの2人も「千景」で出会ったらしいですよ。当時はスーパー三助がアンドレというコンビで、アンゴラ村長とそれぞれ「千景」に出演してもらっていたんです。

平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)も「大喜利千景」初期から出演している

警備員 僕はお客さんとして錦鯉さんやAマッソさんが出演する回を見てました。

寺田寛明 「千景」が今までと違ったのは、競技ではなかったことと、芸人も呼んだことです。だから名の知れた芸人さんのファンが見に来てくれて、そこから面白いアマチュアに気づく、という今までにない流れができたんです。最初の集客は芸人頼りでしたがライブ自体にファンがつき始めて、もう10年やっています。

――周りの芸人はアマチュアに対してどう感じていたんでしょうか?

寺田寛明 同じ会場で別の時間帯にやってるライブの出演者からの「大喜利だけやる素人ってなんなんだよ」って批判は小耳に挟んだりしました。なんで素人が劇場に出てるんだよって。でもだんだん、「こいつらちょっと面白すぎないか?」という空気になってきて、見方が変わった。尊敬し合えるようになって。

比較できない独自の面白さがある

――そんな中で「大喜る人たち」が始まったわけですね。

冬の鬼 大喜利だけの人たちとプロの芸人さんを混ぜたライブは寺田さんの「大喜利千景」しかなくて、「大喜る人たち」が急に現れたような印象です。

寺田寛明 どうして始まったのかは僕たち演者もよくわかっていない(笑)。

警備員 「千景」でやっていたようなことをYouTubeやTikTokに一気に持っていったのが「大喜る人たち」で、そこで全く大喜利のコミュニティを知らない人たちも見てくれて、案外受け入れてもらえたなという感じですよね。

寺田寛明 僕は配信や動画で公開する発想がなかったので、すごいなと。大喜利をYouTubeにするとこんな反応があるんだなと不思議な気持ちで見ています。

小川悠介 最初は自分が見たくて始めたんです。IPPONグランプリのようなメジャーな大喜利コンテンツもありますが、この界隈には比較できない独自の面白さがあって。

小川悠介/「大喜る人たち」を主催。フリーで映像制作を行っている

Yes!アキト 小川さんは何を見てこの界隈を知ったんですか?

小川悠介 「大喜利千景」です。仁木恭平さん(現・ケビンス)を見に行ったのがきっかけで。でも詳しくなったのは「大喜る人たち」を始めてからですね。

寺田寛明 仁木は「千景」の初回から出演してもらっている古株ですね。

小川悠介 アマチュアだけのイベントでも異常に盛り上がっていたんですよ。そのライブの熱狂をネットに持っていけば、受け入れてくれる人がいるはずだと考えました。

小川の目論見は当たり、冒頭に述べたように配信コンテンツの再生回数もライブシーンへの観客動員も増加の一途を辿ることとなった。後編では、今見てほしい大喜利コンテンツを聞いていく。

取材・文/宿無の翁
撮影/幸地一成

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