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虐待で3本足になった保護猫・しじみちゃんと漫画家の幸せな日々

集英社オンライン / 2022年7月29日 14時1分

虐待にあい足が3本となってしまった保護猫のしじみちゃん。この猫を飼い始め、すっかり“親バカ”になってしまったのが、飼い主の漫画家・天道(あまじ)グミさんだ。ツイッターで猫マンガエッセイを連載したところ話題になり、2020年4月には『3本足のしじみちゃん』として書籍化。そんな天道さんとしじみちゃんとの幸せあふれる生活をご紹介。

保護猫カフェで出会った3本足の猫

漫画家・天道グミさんが保護猫のしじみちゃんと出会ったのは、2018年4月のこと。もともと実家では犬を飼っており、「犬派」だったという天道さん。野良猫に名前をつけるほど猫好きな、同じ漫画家でパートナーでもある同居人の影響で猫を飼いたいと思うようになったという。



「『ペットショップで買ってしまうと不幸な猫ちゃんが増える』と耳にしたことがあったので、ペットショップで購入するのではなく、保護猫カフェを巡りながらビビッと来る猫ちゃんを探していました」(天道さん)

こうして数件の保護猫カフェに通うこと約8ヶ月。「いいな」と思った猫との出会いもあったが、最後の決心が踏み出せないでいたときに、隣駅にも保護猫カフェがあることをインターネットで知る。そこで出会ったのが、虐待により壊死(えし)した右前足を根元から断脚した猫だった。

天道グミさんの愛猫しじみちゃん。虐待にあったことが原因で右前足がない

「ジッとケージの中からこっちを見ていて、『あら、かわいい子がいるわね』というのが第一印象でした。保護主の方にケージから出してもらうと、人間に虐待された過去を持つにもかかわらず、人懐っこいんです。とにかく、本当に可愛くて。ピンと来たというか、私たちを呼んでくれたような気がしました」

運命を感じた天道さん。まずは本当に飼うことができるか猫と飼い主の相性を確かめるためのトライアルとして1週間、一緒に生活することになった。3本足ということで不安もあったが、保護主によれば4本足の猫と変わりないほど活発で、階段も登れるとのこと。「“普通の猫”としてお迎えすればいいんだ」と準備を進めた。

まん丸の目が愛らしいしじみちゃん

トライアル当日、家に到着した直後は不安そうな声で鳴いていたものの、ケージから出してあげると、家中を探検し始めたという。

「お迎えしてみたら、めちゃくちゃ元気で普通の猫ちゃん。猫は環境の変化に弱い生き物ですが、全くもの怖じしてなくて安心しました」

猫との生活がスタートしたのも束の間、あるトラブルが天道さんを襲う。鼻水や目のかゆみなど、仕事が手につかないほどの猫アレルギーの症状が出たのだ。

「猫カフェや知人の猫ちゃんと触れ合っていたときには何もなく、花粉症もないのでアレルギーとは無縁だと思っていたんです。特に鼻水の症状がひどくて『これは飼えないな』と思うほどでした」

そこで、掃除を徹底し、毛が付きやすいカーペットは撤去。市販の漢方を服用したところ、症状は収まっていった。そしてトライアル最終日、正式に引き取ることを保護主に連絡した。

「私は運良くアレルギー症状が収まりましたが、犬や猫を飼う前にはアレルギー検査をすることをお勧めします。もし、ペットショップで買ってしまったあとだったら取り返しがつきません。その点、保護猫カフェは何日かけて通ってもいいし、トライアル期間もあるので触れ合う時間をしっかりとれます。これは保護猫カフェの良いところだと思います」

猫は「しじみ」と命名。以前、自宅の庭に来ていた茶色ベースの年老いた野良猫を「あさり」と呼んでおり、引き取った猫は黒色ベース。「あさりの分まで幸せにする」という思いを込めて「しじみ」と名付けた。

大好きな「お尻叩き」をおねだりするしじみちゃん

しじみちゃんとの生活で早寝早起きに

3本足というハンディキャップを感じさせないほど、活発で遊ぶことが大好きなしじみちゃん。天道さん宅にめいっ子家族が遊びに来たときは、3日後にようやく「足が1本ない」と気が付かれるほどだった。

「遊ぶのがとにかく好きなんです。最近は、紐状のおもちゃを買ったので、それをヘビみたいに動かして追いかけるというのが流行っています。でも、原稿の締め切り前は相手ができないことがあってかわいそうなんですよね。『ごめんね』って言って大好きな猫草を与えて許してもらっています(笑)」

漫画家は座って作業をしている時間が長く、腰や首を痛めてしまう人も多い。しじみちゃんとの遊び時間は気分転換やストレッチにもなっているという。

「猫は気持ちの切り替えが上手。私はすごく下手で、沈んでいるときはとことん沈んでしまうというタイプでした。3本足でも気にせずひょうひょうと生きているしじみを見るとすごく元気が出ます。いてくれるだけで幸せな存在ですね」

しじみちゃんを迎える以前、連日の原稿執筆で体調を崩してしまい休業していた時期もあった天道さん。猫との生活を始めたことで良い効果もあった。

「猫が眠くなったら一緒に寝て、毎朝起こしくるのに合わせて起きるので、自然と早寝早起きで生活リズムが整うようになりました。これもしじみのおかげですね」

ツイッターで漫画連載、飼い主の参考になる情報も

休業期間中の天道さんはリハビリを兼ねて、2018年7月からツイッターでしじみちゃんをテーマにした漫画の投稿を開始。漫画には、獣医へのかかり方やストラバイト結石対策など、猫を飼う上で直面する問題や困り事も描かれている。ただ、天道さんは「飼い主にとって参考になる情報も掲載する」と特に意識していたわけではないという。

「最初は、誰かに読んでほしいと思っていたわけではないんです。『しじみがかわいい』と感じた新鮮な気持ちや、さまざまな出来事に伴って起こる面白さや記憶に残しておきたいことを記しておきたいと思って描き始めました。本当にただの日記なんです(笑)」

その漫画が編集者の目に止まり、2020年4月に書籍化、現在まで2巻が発売中だ。本書にはツイッターで公開している作品に加えて、30ページ以上の描き下ろしや写真、同居人によるおまけ漫画なども収録されている。

「猫ちゃんを飼っている方たちに『あるある』として楽しんでいただけたら嬉しいです。これから猫を飼いたいな、保護猫ってどうなんだろうなと思っている人も、参考の一つとして読んでいただけたらなと思います」

取材・文/堤 美佳子
写真提供/天道グミ

3本足のしじみちゃん

天道 グミ

2020年4月24日発売

1,100円(税込)

A5判/176ページ

ISBN:

978-4-8342-8507-9

虐待に遭い足が3本となったしじみちゃん。けれどハンデをものともせず、走ってたくさん遊びます! 著者Twitter発、幸せ猫エッセイ。

3本足のしじみちゃん 2

天道 グミ

2021年12月24日発売

1,100円(税込)

A5判/176ページ

ISBN:

978-4-8342-8520-8

遊びが大好き3本足のしじみちゃん。今日も元気に「お尻叩き」をおねだり。ポンポンポンポン…。著者Twitter投稿作品に30ページ超の描き下ろし、写真も盛りだくさんのハッピー猫エッセイ第2弾!

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