1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. カルチャー

SNSでのいじめ・暴力告発はNG! 知っておくべき3つのリスク

集英社オンライン / 2022年8月4日 13時1分

元少年院の先生で人気Vtuberでもあるかなえ先生の犯罪教室。子どもたちを被害者にも加害者にもさせないためにいじめ・犯罪からの身の守り方を教えてくれる『もしキミが、人を傷つけたなら、傷つけられたなら』(フォレスト出版)から一部抜粋・再構成してお届けする。

部員の告発で明らかになった暴力の実態

近年はSNSに動画や画像を投稿する形で大衆に不祥事や犯罪被害を告発する事案が増えています。暴露や内部告発を援助するような匿名SNSアカウントも増えています。今回はあくまでSNSの話に限って、かれらの対応やSNSで告発することのリスクなどについてお伝えしましょう。

2020(令和4)年の4月20日、SNSに投稿された6秒の動画が世間に大きな波紋を呼びました。動画には、机に向かって棒立ちになっている男子生徒が、男性コーチに勢いをつけて何度も蹴られる映像が記録されており、同高校の他のサッカー部員によって撮影されたものとされています。



動画が撮影された場所は、男子サッカー部の寮で、男子生徒に暴行を加えているのは30代のサッカー部の男性コーチです。
この動画は一気にSNSで拡散され、いわゆる「炎上」の状態になりました。

強制的に撮影された「謝罪動画」

2日後の4月22日には同校男子サッカー部の公式のツイッターおよびインスタグラムアカウントに、暴行の被害生徒を含む11人が横に並んで顔を出し、事の経緯を説明する動画が投稿されました。

そして、動画の中でなぜか一連の騒動について選手である彼らが謝罪をし、コーチから暴行を受けた原因を「部員が感情的になってコーチをバカにするような発言をしたから」としたうえで、日常的なコーチや監督による暴力を否定しました。

この動画が投稿された当時は、「あくまで生徒たちが自主的に投稿したもの」とされましたが、ネットでは「子どもを矢面に立たせるな」と批判が殺到し、再び炎上(子どもたちよりも学校の対応に対する批判が公式SNSに殺到した形です。子どもたちに対する批判はほとんどありませんでした)。

しかしその後、この謝罪動画の投稿に、サッカー部の監督が深く関与していたこと(具体的には顔出し等の指示)が明らかになりました。

この件に関しては、たくさん思うことが多いのですが、一言でいうと「卑劣な大人たちが子どもを炎上の火の粉の盾に使った最悪な暴行事件」です。

生徒たちを全面的に肯定するのは危険

このケースでは、「閉鎖的な学校および部活内で起きている暴力問題を外部の力を借りて状況を改善したい」という部員による必死のSOSが、結果的には世間に伝わりましたが、私は少し複雑な気持ちになります。

なぜなら、ほんのちょっとしたきっかけやタイミング次第で、告発者自身が誹謗中傷を受けていた可能性だってある【理由①】からです(たとえばの話ですが、告発者の過去の非行が見つかったりすると、一気に掌を返されるかもしれません)。

今回の事件は、ネット民が「コーチや監督を悪と認定したから」部員や投稿者への被害が大きくならなかっただけの話ということです。ポイントは「ネット民は決して部員 や被害生徒に対して同情したり、助けてあげようと思ったりした」わけではないということ。その理由は、著書『もしキミが、人を傷つけたなら、傷つけられたなら』に詳しく書いていますので、読んでいただけると幸いです。

多くのコメントを読んでいくと、部員や被害生徒は、悪の大人の象徴たるコーチや監督を叩くことを正当化する理由にしかならなかったことがわかります。そして今回、さらに残念なことに、本来子どもの盾となって彼らを守らないといけない大人たちが、子どもたちだけ顔と名前を出して謝罪する動画を投稿させました。SNSでの告発をきっかけにこのような見せしめを受けてしまったわけです。

一度ネットに公開されてしまった情報は、簡単には消せません。【理由②】

もしかしたら今回の件がデジタルタトゥー(インターネット上に半永久的に残ってしまう自身にとってネガティブな情報)となって、彼らの人生に暗い影を落とすかもしれません。

テレビ番組や新聞への情報提供

スマホが広く普及したことによって、いつでもどこでも誰でも物事を記録できる社会になりました。今後も、SNSから事件や不祥事が明るみに出ることは増えるだろうと思います。

しかし、事情を知らない第三者が介入することで問題が大きく解決に向けて前進することもあれば、第三者同士の場外乱闘状態となってしまい、事態の収拾が困難になることや、デマを拡散されてしまい無関係な人が傷つく危険性があります。【理由③】

つまり、SNS告発はさまざまなリスクを伴った大きな賭けなのです。では、どうするか?

あくまでも一例ですが、私はいきなりSNSに投稿するのではなく、テレビ番組や新聞に情報提供を行ってほしいと考えます。多くのニュース番組は、視聴者からの情報提供を受けつけています。今回の暴行事件のように暴行の場面を収めた裏付けとなる写真や動画、音声があれば、すぐに動いてくれるでしょう。

また、マスコミはふだんから取材活動等で個人情報の取り扱いにも慣れていることから、SNSにいきなり告発するより個人情報等の漏洩のリスクも減らせます。今回の事件は決して放置してはならない問題ですが、改めてネットの活用という意味で冷静にリスクとリターンについて考えていただければと思います。

『もしキミが、人を傷つけたなら、傷つけられたなら』(フォレスト出版)

犯罪学教室のかなえ先生

2022年7月21日

1540円(税込)

単行本(ソフトカバー) ‏240ページ

ISBN:

978-4866801735

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください