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マンチェスターシティとリバプールの「2強時代」はどこまで続くのか?

集英社オンライン / 2022年8月5日 22時1分

日本時間8月6日、イングランドのプロサッカー1部リーグ「プレミアリーグ」の新シーズンが開幕する。現在はサッカー解説者・指導者として活躍する元日本代表・戸田和幸氏に、22/23シーズンの展望を聞いた(トップ画像 charnsitr / Shutterstock.com)

元日本代表・戸田和幸が見どころを解説! 今季プレミアリーグの展望と優勝予想

輝きを増すプレミアリーグの魅力

––近年日本でもイングランド・プレミアリーグ(以下、プレミア)の人気が高まっている印象ですが、同リーグが持つ魅力とは一体何なのでしょう?

第一にプレミアに資金力があり、サッカー界の一流選手や監督・スタッフといった優秀な人材が集まってきている、ということが挙げられると思います。あとはイタリアも、スペインも、ドイツも、それぞれに深い歴史があり、応援の仕方などもさまざまですが、イングランドは『サッカーの母国』と言われていて。ライブ映像からも伝わる、その古き良き雰囲気と、現代サッカーとしての新しさ・スタイルが多くのファンに届いているのではないでしょうか。



––たしかに、スタジアムの雰囲気の良さはテレビの中継越しにも伝わります。

現地のスタジアムは、基本的に毎試合どこも満員なんですよ。昨シーズンのプレミアは、1試合平均で約4万人来場していて。スタジアムの雰囲気や周辺の環境も含めて、イングランドの人々の生活にすごく浸透しています。皆、週末の試合を楽しみに生きているというか。今だといわゆる「フーリガン」的な存在もまったくなく、すごくエキサイティングな空気を味わえる場所になっています。

––テレビのスポーツニュースにおける試合結果の伝え方なども、日本とは異なるそうですね。

テレビをつければいつでもサッカーのニュースが放映されていますし、新聞を開けば至るところに関連記事が載っています。特に試合後は、イギリスの公共放送・BBCで元イングランド代表のギャリー・リネカー氏がたっぷり90分かけて、お笑いやタレント要素もなく、試合を細かく解説してくれます。「きちんと試合内容を伝える」ということにフォーカスしてサッカーを取り上げる…そのあたりの文化は、日本と はちょっと違うかもしれませんね。

元日本代表のミッドフィールダー。桐蔭学園高等学校卒業後、1996年に清水エスパルスに入団。2003年にはイングランド・プレミアリーグのトッテナム・ホットスパーに移籍。現在はサッカー解説者として、またSHIBUYA CITY FCのテクニカルダイレクター兼コーチとしても活躍。近著に『解説者の流儀』(洋泉社)

––スポーツ面においても、現在プレミアは「欧州No.1リーグ」と表現されることが多いですよね。近年プレミア勢が力をつけている理由を、戸田さんはどのように分析されていますか?

まず、競争力が抜群に高いことが挙げられます。たとえば、昨シーズン残念ながら2部リーグに降格してしまったノリッジ、ワトフォード、バーンリーといったチームにも、当たり前に各国の代表選手が所属しています。この選手層の分厚さは、他リーグの状況とは少し異なるのではないでしょうか。

通称「BIG 6」と呼ばれる特にプレミアで競争力のあるチーム(マンチェスター・シティ、リバプール、チェルシー、トッテナム、アーセナル、マンチェスター・ユナイテッド)には超一流の選手が多く所属していますが、一方で2部から昇格してきたチームにも、たとえば22/23シーズンだとフラム所属のFWアレクサンダル・ミトロヴィッチなど、普通に代表選手がいたりして。そういった部分は、やはり今のプレミアの凄さを物語っていると思います。

昨シーズンの激闘を振り返る

––昨シーズンは最終節まで優勝・降格争いが繰り広げられる大接戦でした。

優勝チームと降格チーム、そしてUEFAチャンピオンズリーズ、UEFAヨーロッパリーグ、UEFAヨーロッパ・カンファレンスリーグといったコンペティションの出場チームが最終節まで決まらなかったのは、実は1992年にプレミアが創設されてから初めてのことで。「最後の最後まで決着がつかなかった」という意味では、非常にエキサイティングなシーズンでした。

––特にマンチェスター・シティ(以下、シティ)とリバプールの優勝争いには、白熱したファンも多いと思います。

1位のシティと2位のリバプールの勝ち点差が、最終的に1ポイント。シーズン通して38試合やって、たったの1ポイント差ですよ。シティは29勝6分3敗 で、リバプールは28勝8分2敗と、実はリバプールの方が負けは少ないんです。そして総得点数はシティが99得点、リバプールが94得点。総失点数は同じ26。どこかの試合でリバプールが1試合でも勝っていたら、全部ひっくり返っていたんです。それほどギリギリの戦いというか、世界最高レベルのぶつかり合いでした。

昨シーズン、リバプールとの激闘を制し、チャンピオンとなったマンチェスター・シティ(出典元:John B Hewitt / Shutterstock.com)

––現在のシティとリバプールは、世界中のサッカーファンから注目される2チームかと思います。昨シーズンの両チームの印象をお聞かせください。

昨シーズンのシティに関しては、「明確なストライカー(=9番)」がいないチームでした。年明けのある時期まで2桁得点を取る選手が誰もいませんでしたが、一方で複数の選手が7〜9点取っていて。明確なストライカーはいないんだけど、いろいろな選手がそのポジションに入りながらゴールを決め、最終的にチームとして99得点取って、優勝する。点の取り方に関してもいろいろなバリエーションがありましたし、やはり、チームとして大変魅力的だなと感じました。

リバプールに関しては、DFフィルジル・ファン・ダイクが前シーズンの負傷から戻ってきたことが一番大きいトピックでした。ある意味、一番の“補強”だったと言えると思います。結果的にチャンピオンズリーグでもほとんど負けることなく決勝まで進みましたし、ひと言で言えば、シーズン通して「とんでもなく強かったな」と。

私は「シティがリバプール化して、リバプールがシティ化している」とよく表現しているのですが、シティにジョゼップ・グアルディオラ監督、リバプールにユルゲン・クロップ監督が就任してから、この2クラブはお互いをライバル視して、影響し合って、進化してきているんですね。カウンターのイメージが強いリバプールも、実は今だと平均ボール保持率は6割を超えていて。逆に、これまでポゼッションスタイルが持ち味だったシティは、どんどん攻撃が加速してきていて、カウンターもすごく意識している。お互いの良いところをそれぞれが取り入れることで、パフォーマンスレベルを高め合っているんです。

わずか1ポイント差で優勝を逃すものの、圧倒的な強さを見せつけたリバプール(出典元:ph.FAB / Shutterstock.com)

––ほかのチームはいかがでしょう? まずはチェルシーとアーセナルに関してお伺いできますか。

チェルシーは、英国政府による制裁の件もありますが、新加入のFWロメル・ルカクがあまりフィットしませんでした。やはりトーマス・トゥヘル監督のチームには、どっしり構える「9番」タイプは合わなかった、というのが私の見解です。トゥヘル監督のチームって、「掴みどころのなさ」が持ち味なんですよ。「何をしようとしているのか、把握しづらい」というのが、今のチェルシーの強みなんです。前線の選手もかなり流動性があり、ショートカウンターやロングカウンターもできて、攻撃のバリエーションもある。そこにルカクが入ったときに、そういった動きが出づらくなってしまった印象です。

アーセナルは、最後に勝ち点を多く取り逃がしてしまったなぁと。残念ながらチャンピオンズリーグへの出場権は逃してしまいましたが、一方で着実に選手の入れ替えが行われています。日本代表・冨安健洋選手をはじめ、マルティン・ウーデゴール、ブカヨ・サカ、エディ・エンケティア、エミール・スミス=ロウ…選手の平均年齢が下がり、パフォーマンスに若干の波はあるものの、チームとしてすごく躍動したシーズンを過ごせたと思います。

––BIG 6の残りの2チーム、マンチェスター・ユナイテッドとトッテナムはいかがでしょう?

マンチェスター・ユナイテッドに関しては、残念ながら「失敗のシーズン」と言えるかもしれません。シーズン途中にラルフ・ラングニック氏が暫定監督として招聘されて、私はかなり期待していたのですが、パフォーマンスがなかなか向上せず。得点と失点が57点と、同一なんですよね。失敗のシーズンでプレミア6位を取れるのはすごいことではありますが、マンチェスター・ユナイテッドというビッグクラブとして考えると、やはり物足りない結果だと思います。

一方トッテナムは、4位フィニッシュでチャンピオンズリーグ出場権獲得と、健闘しました。シーズン開幕戦でシティに勝利しましたが、当時のヌーノ・エスピーリト・サント監督は特徴的なことをやっていて、それが上手くハマっていない印象で。シーズン途中でアントニオ・コンテ監督に交代し、その後、うまくチャンピオンズリーグ圏内に滑り込んだなと思います。

22/23シーズンの優勝争いの行方

––プレシーズンマッチをご覧になって、昨季王者であるシティの仕上がりはいかがですか?

まずシティには、ドルトムントから若手FWアーリング・ハーランドが加入しました。昨シーズンのシティにはいなかったストライカータイプの選手ですが、この選手がどうチームに作用するのか。プレシーズンのバイエルン・ミュンヘン戦ではゴールも決めましたし、リバプール戦でもチャンスはありましたが、私の見解では、動きの頻度・連続性、トランジションの反応などの部分で、もう少し「慣れ」が必要かなと。ただすごい才能を持った選手なのは間違いないですし、動きは非常にロジカルで、駆け引きもできる。チームにフィットするまで、そこまで時間はかからないんじゃないかなと思います。

それより個人的には、ガブリエル・ジェズス、ラヒーム・スターリング、オレクサンドル・ジンチェンコ、そしてフェルナンジーニョといったレベルの選手がいなくなったことのほうが気になっています。結局シティはさまざまなコンペティションを高いレベルで戦い続けなきゃいけないので、選手の数と質を考えたときに、若干スケールダウンした印象ではありますね。新しい選手たちが、どこまでそれをカバーできるのかがポイントになってくる気がします。

22/23シーズンよりマンチェスター・シティに新しく加入したノルウェー代表のアーリング・ハーランド(出典元:Vitalii Vitleo / Shutterstock.com)

––リバプールは、昨年シーズン通算25ゴールを記録したFWサディオ・マネが退団することになりました。これはリバプールに、どのような影響を与えるのでしょう?

マネはウインガーとしても、9番的なストライカーとしても、“One Of The Best”な選手です。個人的にもまだリバプールで見たかったので、移籍してしまったのは少々残念ですね。

リバプールには、昨年プリメイラ・リーガ(ポルトガル)のベンフィカでブレイクしたFWダルウィン・ヌニェスが新たに加入しました。ですが、プレシーズンを見る限り、マネが昨シーズンやっていたようなことは、まだできないと思っています。

というのも、昨シーズンの中で、マネは大きく進化したんですよ。元々左ウイングが彼の主戦場だったのですが、FWロベルト・フィルミーノのコンディションが上がらない中、9番の位置にコンバートされて。そこで、リバプールのプレッシングの強度がさらに一段階上がったんです。さらに周囲が想像していたよりも、中盤に降りてきてプレーするのが上手い。カウンターの起点となったり、自分がカウンター時に飛び出したりと、リバプールを攻撃・守備面で大きく支えてきました。彼がいなくなったというのは、戦力的にはやはりダウンです。相変わらず、リバプールが強いのは間違いないですが。

––BIG 6以外に、22/23シーズンで特に注目しているチームはありますか?

やはり、日本代表・三笘薫選手が所属するブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンは、気になっている人が多いのではないでしょうか。このチームの強みは、良い選手が多く揃っている一方で、超一流と呼ばれるビッグ・プレーヤーがいないため、コレクティブにいろいろなことができること。1試合平均のボール保持率も55%くらいで、「守備一辺倒からのカウンター」というスタイルのチームではありません。プレシーズンを見ていても調子は悪くありませんし、三苫選手との活躍と合わせて、期待したいですね。

––最後に、22/23シーズンの優勝争いについて展望をお聞かせください。

基本的には、昨シーズンの最終順位が目安になると思います。シティは多少戦力的にスケールダウンした印象がありますが、それでも上位争いに関わってくるのは間違いありません。シティ、リバプールがやはり筆頭候補になると思うのですが、アーセナルもこの2チームに肉薄する可能性があります。プレシーズンでは、チェルシー相手に4-0で勝利しました。もちろんこれがシーズン前だというのは忘れてはいけませんが、選手たちも躍動していますし、現状BIG 6の中では一番コンディションがよいのかもしれません。次にチェルシー、あとトッテナムも選手層が厚くなったので、あとはそれが最適な形で発揮されると、良い結果につながるのではないでしょうか。


取材・文/集英社オンライン編集部

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