石原都知事の尖閣諸島購入宣言にも中国の反日ムードが高まらない理由

週プレNEWS / 2012年5月7日 10時0分

石原慎太郎東京都知事が尖閣諸島購入計画を打ち出したのが4月14日。現在、中国ではネットを中心に抗議の声が広がっている。反日ムードは、これからどんどん加熱していくのだろうか。中国情勢に詳しいジャーナリスト、富坂聰氏はそれを否定する。

「今後、中国をさらに刺激するような事態が何度も発生すれば別ですが、現時点で『反日』がフレームアップする可能性は高くないと考えられます。今回の件に対して、中国国内での報道のトーンは、過去に反日デモが発生した2005年や2010年と比較すればずっと抑制的。中国当局による外交ベースでの抗議はあれど、民間が大規模な抗議行動を起こすとは考えにくいと感じます」

その理由とは何か。実は、今の中国には尖閣問題に構っていられないほど難題が溢れているのだ。富坂氏が続ける。

「例えば内政面では、当局は今年秋に開催される中共十八大(第18回中国共産党全国代表大会の略。同国を統治している中国共産党の最重要会議)を無事に成功させることで手いっぱい。この会議で習近平(しゅう・きんぺい)が新しい国家主席に選出される予定ですから、失敗は絶対に許されません。加えて、今月初めには党内の有力政治家だった薄熙来(はく・きらい)が失脚しました。その後処理にも追われています」

中国きっての有力政治家と見られていた薄熙来。失脚した直接の原因は、元側近の王立軍(おう・りつぐん)が2月初めに四川省成都にあるアメリカ総領事館に亡命未遂事件を起こしたこと。加えて、薄熙来の夫人である谷開來(こく・かいらい)が金銭トラブルを理由に英国人ビジネスマンを殺害した疑いで逮捕されたこと。さらに、その後の捜査を通じて、薄夫妻が不正に蓄財した数十億ドルを海外に送金していた疑惑までも明るみに出た。ひとりの政治家が、中国政界を大きく揺るがすスキャンダルを立て続けに起こしたのだ。

それだけに、中国国内は揺れに揺れている。東アジア情勢に精通するジャーナリストの福島香織氏は語る。

「薄熙来の失脚は、単に彼ひとりの問題にとどまるものではありません。中国共産党の高官たちは、さまざまな金脈や人脈によってつながっているのです。今回、薄の失脚で党高官のさまざまな悪事や利権が明るみに出た上、その情報の一部が王立軍の亡命未遂事件によりアメリカにまで知られてしまいました。中国当局の有力政治家たちは誰もがスネにきずを持つ身ですから、自分自身もスキャンダルに巻き込まれないかと戦々恐々としているはずです」

また、政治混乱だけではない。日本ではあまり報じられていないが、現在、中国は尖閣とは別の重大な領有権問題にも直面している。

4月10日、中国・フィリピン両国が領有権を主張する南シナ海のスカボロー礁(中国名「黄岩島」)付近で、フィリピン海軍による中国漁船の拿捕未遂事件が発生。中国側が救援のために艦船を出動させる騒ぎが起きたのだ。

「現地では、両国艦船のにらみ合いが続いています。中国にとっての南シナ海海域は、尖閣諸島周辺海域以上に、資源・経済面での重要性が高い場所。中国は尖閣問題だけにかまけている余裕はありません」(前出・富坂氏)

内に政治スキャンダル、外には領有権問題と、今の中国はまさに“内憂外患”。尖閣諸島にばかり構っていられないのが本音だろう。

(取材/安田峰俊)

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