宮城、福島など被災地復興の切り札として期待される「植物工場」

週プレNEWS / 2012年5月11日 6時0分

完全人工光でレタスを栽培する千葉大学柏の葉キャンパスの植物工場。毎日2000株、1株100円前後で東京のレストランに卸している

植物工場とは、コンピューターで環境制御された室内で、LED照明などを使って野菜を栽培する施設のこと。これが今、被災地の農業復興や食の安全の切り札として注目されている。

今年4月、津波による甚大な被害を受けた宮城県多賀城(たがじょう)市の「みやぎ復興パーク」内に、最新鋭の植物工場が開設されることが発表された。施工主の「みらい」によると、この夏に稼働する施設では、通常90日かかるレタスの栽培期間を35日に短縮して栽培するという。来年には地元スーパーなどへの出荷が始まる予定で、「これで復興が加速する」(多賀城市震災復興推進局・佐藤昌史氏)と、地元も期待を寄せるプロジェクトだ。

同じく宮城県の大衡(おおひら)村には、別の企業がパプリカを栽培する工場を建設。原発事故の影響で米の栽培を自粛した福島県川内村の遠藤雄幸村長も、復興計画の中で植物工場を造ると宣言している。

農作物を室内で栽培する植物工場なら、農地の荒廃や放射線による土壌汚染の影響を心配することなく農業ができる。植物工場は被災地の救世主になる可能性があるのだ。植物工場の権威、千葉大学大学院園芸学研究科・丸尾達准教授は、そのメリットをこう説明する。

「植物工場は一般の畑よりも面積当たりの効率がはるかに高い。完全人工光型の場合、同じ耕地面積で畑の50倍の収量がある。建物を上に積み上げれば100倍、200倍に収量を伸ばすことも可能です」

同大学では、この完全人工光型の植物工場を利用してレタスを栽培している。丸尾氏によると、無菌状態かつ無農薬で、季節や天候、異常気象などにも関係なく、年中同じ質の野菜を育てることができ、今では毎日2000株のレタスを1株100円前後で東京のレストランなどに卸している。LEDや蛍光灯に頼っている分、東京電力が検討する電気代値上げへの対応は今後の課題だが、それも高い収穫量でカバーできる見通しだ。

これが被災地の農家に広まれば、確かに救世主となるかもしれない。だが、ネックになるのは導入費用。前出の「みらい」によると、「建物抜きの内部設備だけで1坪120万円かかる」そうで、農家が気軽に出せる金額とはとても言えない。

「でもね、今、日本の農家の平均年齢は約66歳。このままいくと農家の数は10年で3分の1になる。後継者が育たないのは、農業がつらくて儲からない仕事だからです。植物工場が普及し、農業が楽で儲かる仕事になれば、後継者も増える。将来的には、海外輸出もできるほど低コストの植物工場を実現したい。コストを下げるための研究は日々進めています」(丸尾准教授)

千葉大学と同じく完全人工光型を採用しつつ、独自の研究開発でリーフレタスをメインに40品目ほどが栽培可能な施設を有する両備ホールディングス(岡山県)開発責任者の水田満氏は、野菜工場の展望をこう語ってくれた。

「技術の進歩に伴ってコストが下がることは歴史が証明している。ウチは植物工場を始めて2年ですが、LED照明を野菜の栽培に適するように調節するなど、短期間で生産効率を3割アップさせました。コスト的には完全に事業ベース水準に近づいています。世界人口は増え、気象も変動する。従来の農業だけでは食料が賄えない時代が来ます。多くの人が工場産の野菜を食べて暮らす、そんな日が来るよう、挑戦はまだ始まったばかりです」

(取材/戎 小次郎)



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