“暴走”に待った! 事実上の「全面禁煙令」が見送りとなったウラ事情

週プレNEWS / 2012年5月18日 6時0分

受動喫煙防止規定を盛り込んだ「労働安全衛生法」の一部改正案が修正へ。全面禁煙を推進する小宮山厚生労働大臣に何が?

大のたばこ嫌いで知られる小宮山洋子厚生労働大臣は歯ぎしりしているに違いない。職場における従業員の受動喫煙防止規定などを盛り込んだ「労働安全衛生法」の一部改正案が国会に提出されているが、民主党によって修正されることになった。

この改正案の問題について、週プレは今年の3月12日号で詳しく報じた。法案が成立すれば、事業規模にかかわらず 、全国の事業者は職場の禁煙、もしくは厚生労働省の定めた基準に合致する喫煙室を設置するなど空間分煙を義務づけられる。

新たに喫煙室を設置するとなると、事業者は数百万円ものコスト負担を強いられる。また、建物の構造によっては喫煙室の設置が無理なところもあり、事業者は結果として禁煙措置をとらざるを得ない。つまり、事実上の「全面禁煙令」になると指摘したのだ。

特に、飲食店にとって影響は大きい。店内を禁煙にすれば、喫煙者はその店を避けるようになり、店の売り上げにも影響する。外食産業の全国組織、日本フードサービス協会の担当者が話す。

「飲食店にとって、喫煙できる空間を提供するのもサービスのひとつ。従業員の受動喫煙防止という観点だけで、法律で一律に規制するのはなじまない業種なのです」

結局、民主党は受動喫煙防止対策に関する事業者の「義務」規定を修正し、「検討」規定にするという。小宮山大臣肝煎りの法案が、国会で実質的に審議入りする前に大幅に後退したのはなぜなのか。法案を所管する厚労省労働基準局労働衛生課の担当者に聞くと、「国会の話なので、こちらではどういう状況かわからない」と、当惑したように答えた。

「愛煙家の多い自民党から反対された」「喫煙者がさらに減ることで福島県などの葉タバコ農家が苦境に陥る」などの理由も囁かれているようだが、ある事情通はこう打ち明ける。

「今回の改正案の柱は、従業員のメンタルヘルス対策の充実、粉じん濃度の高い職場で働く労働者の健康を守るための対策です。受動喫煙防止規定は小宮山大臣の“ご機嫌”取りのために付け加えたようなもの。たばこ対策に敏感な自民党から『受動喫煙の問題以上に重要な項目がある。法案を修正しないと、消費増税法案の審議にも協力しない』という圧力がかかったという話もある」

消費増税法案は野田佳彦首相が「政治生命をかけて」まで実現しようとしている最重要法案。全面禁煙令などで自民党とよけいな摩擦など起こしたくないというわけか。

また、そもそも今回の改正案自体の問題を指摘するのはジャーナリストの須田慎一郎氏だ。

「厚労省が所管する法律に『健康増進法』があります。旧厚生省部局が所管する法律ですが、ここで多数の人が利用する公共施設や飲食店では『受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない』と規定されている。今回の改正案の趣旨はこの健康増進法に含まれるので、もともと屋上屋を架すような法案だったのです」

なぜ、そんなことになったのか。

「労働安全衛生法は旧労働省の所管です。今回の改正案が成立すれば、事業者が法律を守って禁煙や分煙を徹底しているかどうか、チェックするのは労働基準監督署になります。その分、予算も権限も拡大する。つまり、旧労働省系部局の権益拡大につながるわけです」(須田氏)

職場の禁煙や分煙措置は社会のルールとして徐々に浸透しつつある。たばこの値上げもあり、喫煙者の数も減っている。小宮山大臣のたばこ嫌いに乗じた“暴走”にストップがかかったのは当然かもしれない。

(取材・文/西島博之)



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