加藤嘉一「人生で少なくとも3回は大きく異なるポジション、分野に挑戦すべき」

週プレNEWS / 2012年6月4日 15時0分

この春、ぼくは大きな“変化”を決断しました。住み慣れた場所、やり慣れた環境……それらをリセットしてこそ成長があるんです!

常々、「現状に甘んじることなく、現状を打破していくことで人は成長する」と言ってきました。ぼく自身がそれを実践していなければなんの説得力もありませんが、わかりやすい形でそのタイミングがやって来ました。

この春からぼくは、約9年間を過ごした北京を離れ、上海の復旦大学で教鞭(きょうべん)をとっています。夏までの間、新聞学院(ジャーナリズム学科)で生徒たちと熱い論議を交わしながら日々を過ごします。

なぜ、住み慣れた北京から上海へ行ったのか。まず北京での生活が長すぎたということが理由として挙げられます。ひとつの場所、ポジションに長く居座ると、人間は必然的に堕落していく。あらゆる面でマンネリ化を招いてしまう。ぼくにはその状況が耐えられませんでした。

絶えずポジションと視点を変え、自分に刺激を与えてこそ有意義な人生が送れる。少なくともぼくはそう信じています。自分の思考回路や活動をアップデートするには、北京から離れる必要があった。復旦大学には、お誘いいただいたので行きました。それ以上の理由はありません。西北大学であろうが武漢大学であろうが、もしこのタイミングで誘われていれば赴任していたでしょう。

ぼくが重視しているのは「インプット」と「アウトプット」の関係とバランスです。今も北京に滞在していれば、きっとこれまでと変わらず連日のように北京大学に身を置き、原稿を書き、CCTV(中国中央電視台)などのコメンテーターとしてテレビに出演していたでしょう。しかし、それではアウトプット過多です。疲弊し、枯渇(こかつ)するばかりでインプットをする余裕がなくなってしまう。

また、長年過ごしてきた北京という場所にいる限り、ぼくの周囲には複雑な人間関係が存在する。さまざまな誘惑に駆られてしまう。自分の一存では抑止できない事柄をリセットするには思い切って環境を変えるしかないという結論に至り、行動に移しました。

大きな口を叩くようで恐縮ですが、日本球界ですべてをやり尽くしてメジャーへ挑戦したイチロー選手と似たような境遇です。これまでと同様に心身を削り、同じ舞台から発信しても、もう他人からは「当たり前」という評価しか得られません。おそらく北京に残れば安定した収入と社会的地位は保障されていたでしょうが、精神的にはつらい日々になってしまうでしょう。新鮮味にも生産性にも欠ける。あえて“絶頂期”に変化を求めて撤退することで、階段を一歩駆け上がることができると、心のどこかで信じている。

復旦大学の授業では、ジャーナリズムについて講義するのみならず、著名人を招いて学生たちと一緒にパブリックな問題を討論しています。また、読書や研究といったインプットの時間もできる限り確保し、己を見つめ直し、再構築することに腐心しています。

上海という土地柄からか、復旦大学の学生は北京大学の学生よりも垢抜けている印象ですね。資本家の子息が多いようで、テクニカルな問題で悩む学生が少なくない。ぼくがこのコラムでしばしば吠えているように、気合いを入れて学生たちを鍛えています(笑)。

今回、あらためて確信しました。人間はひとつの場所にとどまることなく、人生で少なくとも3回は大きく異なるポジション、分野に挑戦して、己に向き合うべきです。環境を変えることなく、ステップアップし続けられる術があるなら、逆に教えて!!

今週のひと言



ひとつの場所にとどまり続けてもステップアップはできません!

■加藤嘉一(かとう・よしかず)



1984年4月28日生まれ。高校卒業後、単身で北京大学へ留学。年間300回の取材、200本のコラム執筆、100回の講義をこなし、国境を越えて多くの著書を持つ国際コラムニスト。近著に『北朝鮮スーパーエリート達から日本人への伝言』(講談社)、『いま中国人は何を考えているのか』(日本経済新聞出版社)がある。



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