加藤嘉一「今、中国の若者の間でプーチンが大人気。不思議だと思いませんか?」

週プレNEWS / 2012年5月28日 15時0分

皆さんは“カリスマ”を見たとき、どう思いますか? ぼくは「なぜ自分はあそこにいないのか」と心から悔しく、腹立たしく思ってしまいます。

2012年は世界各国で国家首脳の選挙が行なわれる、あるいは国家リーダーが代わる“節目の年”です。この5月にもフランスで現職のサルコジ氏が大統領選挙に敗れました。世界は確実に動いている。ぼくは当事者意識を持って、動態を実感しています。

ロシアではウラディミール・プーチン氏が大統領に復帰しました。00年から2期8年間大統領を務め、08年からは首相、そして今回再び大統領の座へ返り咲き。まさにロシアの顔として、国際政治の舞台でも存在感を示しています。

長く政権の中枢に君臨し続ける彼のイメージは“独裁色”を帯びており、ロシア国民からの反発は少なくないようです。それでも、前回の大統領就任当初、危機的状態にあったロシア経済を立て直した実績を鑑みれば、強引ながらも戦略を明確に持った指導者だとぼくは認識しています。

実は、いま中国の若者の間でプーチンが大人気なんです。同盟国でもなく、イシューによっては敵対関係にある隣国のリーダーがなぜ人気を集めるのか。不思議だと思いませんか?

現在の中国は“権威”という価値観が低くなってきています。かつては毛沢東や鄧小平といった、カリスマ性と実力を兼ね備えた指導者が国家と人民を引っ張っていましたが、昨今の集団指導体制ではリーダーの存在感が薄くなり、指導者個人の魅力もクローズアップされにくくなっている。

どうやら中国にはカリスマを求め、待ち望む伝統的空気があるようです。中国人民たちは、かつて自国に君臨していた“カッコいいカリスマ”の姿をプーチンに重ね合わせて見ている。冷酷なまでの鋭い眼力と洗練された頭脳、そして行動に移ったときの強引ともいえる剛腕。カリスマといえば、アップル社のスティーブ・ジョブズ氏が死去した際も中国では日本以上の大騒ぎになりましたが、彼らにとってプーチンとジョブズは同列で語るべき人物なのかもしれない。この感覚は日本人にはわかりにくいかもしれませんが、ぼくの周囲の人間は素直に「プーチンはすごい」と称賛しています。

中国の人たちはまたカリスマを見ると「悔しい」とも言います。いわく、中国もかつてはカリスマが君臨していた国家なのに、どうして現在はプーチンやジョブズのような“皇帝”が存在しないのか、と。こういうことを素直に言える感性というのは、ぼくも素直に面白いなと思います。

一方、日本人は国内外の政治家や、突出した結果を出した個人に対し、どちらかというと無関心で冷淡な場合が多いですよね。「出る杭は打たれる」ことに慣れ切ってしまった日本の社会では、建設的な意見が極めて生み出しにくい。残念なことです。

かく言うぼくは、カリスマを見ると「どうして自分があの場所にいないのだろう」と悔しさや腹立たしさばかり覚えてしまいます。このコラムを読んでくださっている若い人たちにぼくが訴えたいのは、ぜひ当事者意識を持って社会を見て、参加してほしいということ。言論の自由がありますから称賛も批判ももちろんOKなのですが、それだけでなく、自分だったらこうする、ああすると考える有権者になることが一番必要だと思うんです。

えっ、ぼくがそうなったらどうするかって? それは“革命”ですよ! 半分冗談ですが、男として生まれたからにはあくなき執念を持つべきだと思います。「どうでもいい」なんて言う人がいたら、その理由を逆に教えて!!

今週のひと言



中国ではいまプーチンが大人気。ぼくたちも“当事者意識”を持とう!

■加藤嘉一(かとう・よしかず)



1984年4月28日生まれ。高校卒業後、単身で北京大学へ留学。年間300回の取材、200本のコラム執筆、100回の講義をこなし、国境を越えて多くの著書を持つ国際コラムニスト。近著に『北朝鮮スーパーエリート達から日本人への伝言』(講談社)、『いま中国人は何を考えているのか』(日本経済新聞出版社)がある。



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