古賀茂明が“あの発言”の真意を語る。「停電を演出しているとしか思えない政府と関電の“不作為の作為”」

週プレNEWS / 2012年6月1日 6時0分

関電にやってほしいことは「停電だ!と脅すことではなく、供給責任を果たすために会長、社長が土下座してでも電力を買い集め、節電をお願いするということ」と語る古賀茂明氏

「停電テロ」――元経済産業省官僚の古賀茂明氏がテレビ番組で放ったこの言葉が、ネットを中心に批判されている。確かに、そのまま聞けば不穏当な言葉ではある。だが、そこにはこんな真意があった。

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政府が昨年7月に発表した「2012年夏の電力需給見通し」。原発が稼働しなければ、関西電力管内では19%の電力不足になるというもの。当時、「根拠薄弱な数字でいたずらに不安を煽(あお)るな!」と強く批判された。

そして、今年4月、関西電力と政府は、この夏の電力不足は16%になるとの見通しを出して、これまでの9ヵ月でほとんど状況が改善していないことを示した。しかもその後、不足の数字は日を追うごとに縮小、本当のことを言っているのかと疑う声が上がった。

一方、昨年に計画停電、電力使用制限令を出すなど極めて厳しい状況だった東電管内。今年の夏の見通しは、なんと原発なしでも4.5%の余剰が生じるという。東と西でなぜこんな違いが生じるのか。

もともと、経済産業省の原発推進官僚も電力会社も一貫して全原発を再稼働させたいと考えていた。天下りや巨額の予算などの原発利権を守るためだ。これまで“原子力村”は、政治家も学会もマスコミもカネや脅しでねじ伏せるということを続けてきた。今回も彼らはそのやり方で乗り切れると考えていたのだろう。

現に、今年1月、2月に経産省周辺から聞こえてきたのは、3月11日が過ぎれば「喪が明ける」という声だった。3月中の大飯(おおい)の再稼働決定に疑いを持つ者はほとんどいなかったようだ。だからこそ、関電はこの夏の対策など真面目に考えてこなかった。

ところが、政府・関電の目算はまったく狂ってしまった。橋下徹大阪市長らの反対で世論が完全に再稼働反対で固まってしまったのだ。

仙谷由人(せんごく・よしと)と政調会長代行の「(原発再稼働がなければ)日本人は集団自殺だ」という発言に始まり、あらゆる手段で「電力不足の危機」を煽ったのだが、その間も関電の危機感はゼロ。需給対策は進んでいなかった。

それを示す典型例が「はぴeポイントクラブ」だ。

これは、電気の使用量に応じてポイントがたまり、ホテルの宿泊券などの景品と交換できるというもの。節電とは真逆の、電力使用を促進するキャンペーンだ。電力危機だ!と叫ぶのなら、直ちにこのサービスは廃止だろうと思って、関電に聞いてみると「廃止も含めて検討します」。決してやめると言わない。関電としては、大飯が動けば廃止なんて必要ないということなのだ。

東電との比較で問題にされたのは、緊急電源の設置努力だ。東電は火力発電の上積みのため必死に小型の発電機を調達した。ちりも積もれば山となる。これまでに200万kWを超える電力を確保した。

一方、関電が調達したのはたったの2万kW。ふた桁違うのだ。東電は余裕が出てきたので3月末でリースを受けていた25万kWの発電設備をアメリカの「ゼネラル・エレクトリック(GE)」に返したそうだが、それを関電が借り受けることにすればいいのに、今頃交渉中という。もし、去年から本気でGEにお願いに行っていればとっくに契約が成立していただろう。

さらに、経産官僚をはじめとする政府も関電のこうした不作為を放置してきた。政府としても電力不足の脅しで大飯を動かしたいのだから、電力が足りるなどということになったら困るのである。

ところが、大阪府市のエネルギー戦略会議の議論でどうも電力は足りるのではないかという疑いが深まった。すると政府は、電力料金が上がるぞ!という脅しを始めた。

そもそも、電力不足の根拠の基礎となる数字にまやかしがある。「2012年夏の電力需給見通し」は今年の夏が2010年並みの猛暑になることを前提としており、「西日本(*1)の電力需要のピーク」はそれを元に計算されている。

しかし、政府の計算は各電力会社のピークを単純に足し合わせた数字にすぎない。福井と鹿児島では天気や気温が違うことからもわかるように各社の電力需給のピークが同じ日の同じ時間に重なるワケではないのだ。

時間ごとの西日本の需要を見ていき、その夏の“本当の”ピークを出すと、政府の数字よりも150万kWも低いことがわかった。つまり、実際の需給は政府が出した数字よりも150万kW余裕があることになる。これを関電に融通すれば、大飯原発3・4号機の発電量234万kWの過半を補うことができる。いよいよ政府と関電は行き詰まった。

これまでの経緯を見れば、結果として、政府や関電はやるべきことを怠り、あるいは遅らせてしまうことで電力不足の危機を招いた責任があることは明らかだ。しかも、その原因が、原発を再稼働したいという願望にあるので、今後もこうした事態が急速に改善する見通しは低い。

私は、5月17日放送の『モーニングバード!』(テレビ朝日系)に出演し、この一連の不作為による危機的状況を「停電テロと呼んでもいい事態だ」と言った(*2)。仮に火力発電所で事故が起きたら、それをきっかけに原発再稼働につなげようとしているのではないかという話が出るほど、政府や関電は不信感を持たれている――あの発言はそういう趣旨だ。

ところが、関電は「停電テロ」の言葉尻をとらえて「そんなこと検討していません」という趣旨の声明を出した。電力会社が真面目な顔で「テロなんかしません」と言うとは。図星だったのか、という冗談さえ聞こえてきた。

こんなつまらない言葉の遊びをする前に、まずやってもらいたいこと。それは、停電だ!と脅すことではなく、供給責任を果たすために会長、社長が土下座してでも電力を買い集め、節電をお願いするということだ。そういう地道な努力が見えれば、誰も停電テロなんて言葉を思いつくことはなくなるだろう。

(*1)電力会社6社:中部、北陸、関西、中国、四国、九州



(*2)http://www.youtube.com/watch?v=VCU5MJwxafUで視聴可能

●古賀茂明(こが・しげあき)



1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。民主党政権と霞が関を批判した著書『日本中枢の崩壊』(講談社)がベストセラーに。現在、大阪府市統合本部特別顧問

(撮影/山形健司)



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