学食に“おひとり様”席を設置、学園祭には強制参加。今、大学が過保護すぎる理由とは?

週プレNEWS / 2012年6月13日 6時0分

国内778校の四年生大学すべてに足を運んだ大学研究家の山内太地氏が明かす、近年の過保護すぎる大学カリキュラム

英語のシラバスがアルファベットの書き方から始まる、入学試験の不合格者数がゼロだったなどなど。低偏差値のいわゆる「Fラン大学」のおかしなエピソードは、定期的にネットをにぎわしている。

だが、今の大学は偏差値の高低を問わず、もっとすごいことになっていると言うのが、大学研究家の山内太地氏。日本国内の四年制大学778校すべてを訪問し、『22歳負け組の恐怖』をまとめた山内氏に、“最高学府”の実態について聞いてみた。

「高卒者の半数が大学に進学していますから、学生が皆、勉強する気のない学校があっても当然です。授業内容が低レベルだなんて、そんな話をしても意味がない。それより大きな問題があります。サークルに入らずバイトもせず、1年次で友達ができないままひとりで浮いてしまい、居場所がなくて退学してしまう学生が少なくないことです。これは偏差値が高い学校も同じ。東大には保健室に精神科まであるのですが、人間関係に悩む学生が多く、診察まで10日待ちもザラだそうです」

―学生は皆、かつてなかったレベルで対人関係に悩んでいると。

「今、学食で増えているものをご存じですか? 横一列に並ぶカウンター形式で、壁に向かって食べるスペースです。ひとりでごはんを食べていても気にならない場所を大学側が用意している。そうしないと学生が来なくなってしまうのです」

―就活でも、友達が多そうかどうかは、面接官が見るポイントのひとつだといわれていますね。

「日本の産業の多くがサービス業ですからね。対人スキルが高くないと、大学を出てからも苦労します。結婚も危ぶまれるでしょう。ですから、あの手この手でひとりぼっちにさせないようにして、学生のコミュニケーション力を上げさせようとする大学が出てきています。例えば、嘉悦(かえつ)大学という東京の小平市の学校では、学園祭の参加は強制です」

―なんて過保護な!

「学園祭だけではありませんよ。入学のとき、スタンプラリー形式でサークルの先輩や教員の話を聞いて回るオリエンテーションがあります。授業でもグループワークを多用するなどして、かつては30%を超えていた退学率も大幅に減ったそうです。

ほかでは、立教大学の経営学部も面白いですね。1年生を全員、数人のチームに割り振って、企業の人を講師にして商品開発などをテーマに議論させます。ここで重要なのが、お互い顔も名前もわからない新入生にグループワークをさせる点。そして男女比は半々です。ここで、いろいろなドラマが生まれます」

―つまり、必然の出会いを無理やりつくっていると……。

「『将来、恋愛や結婚できるようになるための訓練が今の学生には必要なんだ』と、この授業をやっている教授に言われましたよ。

1年次からグループワークをやる授業は多くの大学にありますが、その授業を全員に受けさせるところはあまりない。でも、履修は自由としていたら、コミュニケーション弱者の学生がそんな授業を取るはずがありません。人間関係ができる前の新入生に強制参加させることがこの授業のポイントです」

―学生を放っておいてくれるのが大学のいいところだと思っていました。

「コミュニケーション能力が高い人はそういう学校でいいでしょう。また、対人スキルとは場を盛り上げる能力というふうに思われがちですが、これが本当のコミュニケーション能力といってよいものか、議論はあると思います。しかし現実に、放任では学校に来なくなってしまう学生が大勢いる。そして、彼らは将来にわたって損をしかねない。ですから、こうしたカリキュラムにあきれているのは周回遅れの反応というべきだと思います」

(撮影/高橋定敬)

●山内太地(やまうち・たいじ)



フリーライター、大学研究家。47都道府県11ヵ国および3地域の865大学1152キャンパスを見学。著書に、『アホ大学のバカ学生』(共著、光文社新書)、『大学生図鑑2012』(晋遊舎)など。メールマガジン『親が知らない進学のヤバい話』を発行。ツイッターアカウント@yamauchitaiji

『22歳負け組の恐怖』



中経出版 1365円







人間関係の格差化、経済のグローバル化で、高校・大学という時期を普通に過ごしていたのでは「普通の幸せ」も得られない世の中になりつつある。そんななかで、対人スキルも高くない普通の若者はどうしたらよいのか。数々の大学の試みから探る



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