権力基盤が揺らいでいる? 金正恩“雲隠れ”の間に北朝鮮で起きた大異変

週プレNEWS / 2012年7月12日 10時0分

韓国に住む脱北者のひとりが首をかしげる。

「金正恩(キムジョンウン)が6月6日に朝鮮少年団の祝賀関連行事に顔を出して以来、ぷっつりと姿を見せなくなってしまったのです。彼の身辺に何か異変が起きているのかもしれません」

確かに妙だ。今年に入り、北朝鮮メディアが伝えた金正恩第一書記の動静は80回以上を数える。少しでも国民の人気を得ようと、精力的に現地指導に出かけているためだ。

それが6月に入って突然、1ヵ月近くも雲隠れしてしまうなんて。在京のコリアウオッチャーもうなずく。

「その後、7月に入って、金正恩が平壌(ピョンヤン)の児童百貨店、靴下工場などを視察した記事と写真を朝鮮中央通信が配信したのですが、なぜか、それらの写真の撮影日は『最近』としか明かされていない。6月上旬に予定していた勤労者団体の代表者会議が代表を選出しておきながら、なんの説明もなしに延期になったことや、折からの干ばつで食料不足が深刻となり、配給のない地方都市を中心に住民の不満も高まっていることも気がかり。何かがおかしいですね」

おかしいといえば、もっと異常なことがある。この1、2ヵ月、朝鮮労働党の機関紙である『労働新聞』の1面に、金正恩第一書記以外の幹部がでかでかと登場するようになったのだ。

前出のコリアウオッチャーがこう驚く。

「あり得ないことが起きています。これまで北朝鮮のメディアに金日成(キムイルソン)、金正日(キムジョンイル)、金正恩以外の政治家が単独で報道されたというケースは記憶にない。例外は、お飾りの国家元首にすぎない金永南(キムヨンナム)最高人民会議常任委員長が、わがままな金正日に代わって外国の要人と会談をこなしたときくらいのもの」

独裁下の北朝鮮では指導者はただひとりというのが鉄則。それ以外は高位の党人だろうが軍人だろうが、金ファミリーの“家来”にすぎない。ボスを差し置いて家来が目立つことなど、絶対にあってはならないことなのだ。

「そんなまねをすれば、その幹部は分派主義者として粛清されかねません。それほど金ファミリーによる独裁は徹底しているのです。ところが、今年の4月25日、5月5日と立て続けに、序列第4位の崔竜海(チェリョンヘ)朝鮮人民軍総政治局長が、護岸工事や大学の改修工事現場に出向いた様子がでかでかと写真付きで労働新聞に掲載され、コリアウオッチャーたちを驚かせました。それ以外にも、崔永林(チェヨンリム)首相が炭鉱や発電所などを訪れて指導する様子も、かなりのスペースを割いて報道されています」(コリアウオッチャー)

突然の雲隠れに、家来たちの台頭。これって、もしかしたら金正恩の権力基盤が揺らいでいるということなのか? コリア国際研究所の朴斗鎮(パクトゥジン)所長に聞いてみた。

「ひと言で言ってしまえば、金正恩という若殿がヘマをしでかさないよう、あるいは傷がつかないよう、実力のある家老たちが前面に出てフォローアップしているということ。つまり、独裁を補強する家老政治が行なわれているのです。幹部らがしばしば朝鮮の国営メディアに登場するようになったのは、そうした家老政治のひとコマにすぎません」

なるほど、若くて経験のない金正恩にトップの座はまだまだ荷が重い。だから、能力のある幹部がその不足点をカバーしないと、独裁権力そのものが行き詰まりかねないというわけか。そして、当の3代目が1ヵ月近くも雲隠れ状態だったのは、ひょっとして「リーダーになるのはムリ」と自信を失い、引きこもっていたせい?

いずれにしても、北朝鮮で権力の分散が進みつつあることだけは間違いなさそうだ。



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