細田 守「宮崎駿になりたくてアニメをやってるわけじゃない!」

週プレNEWS / 2012年7月28日 6時0分

『時をかける少女』『サマーウォーズ』の俊才、細田守監督が挑んだ“子育てアニメ”『おおかみこどもの雨と雪』の裏テーマは……“人妻のエロス”!?

『時をかける少女』(2006年)や『サマーウォーズ』(09年)で、高校生を主人公にした爽やかなSF青春ストーリーを描いた細田守監督。両作品ともロングヒットし、数えきれないほどの映画賞を受賞。現在、巷で最も支持されているアニメ作家と言っても過言ではない。

が、その監督の最新作『おおかみこどもの雨と雪』の主人公は、“おおかみおとこ”の子供を産み、ひとりで育てる女性、花。そんな意外なヒロイン像には、“青春映画の名手”という細田監督のイメージを覆す裏テーマが隠されていた……!?

***

―アニメ=少年少女が主人公、という作品が多いなかで「母」を主人公にした本作は新鮮でした!

細田 ありがとうございます。お母さんって、今までのアニメでは子供を見守るサブキャラとして扱われてきましたよね。実写でも、こういう子育てをテーマにした作品は少ない気がする。ただ……「人妻モノ」っていうと、また別のジャンルで大量にあるんですが。

―わはは! 確かに「人妻モノ」と言えますね。しかも、“おおかみおとこ”に先立たれた花は「未亡人」でもある。

細田 未亡人! さらにイイですね~! あ、映画の宣伝さんが不安そうな顔をしているので、マジメな話をしましょう(笑)。映画においていつも脇に置かれがちな母親ですが、実際はそこにこそ描くべき「成長の物語」があるはず。だって、子育てっていうのは子供が成長するだけじゃなく、母親も成長するものだから。その成長を描こうとすれば、必然的に……エロスが必要になってきますよね。

―またエロ話を!(笑)

細田 いやいや。マジメな話、人の成長や人生って、エロス抜きでは語れませんよ。実際、主人公の花が子供を授かったのは、“そういうコト”があったからでしょう。

―それです! まさか細田監督の映画で、開始10分後にベッドシーンが見られるなんて驚きでした。

細田 だって、子育てをテーマにするにあたって、その根拠となるシーンを“ほわんほわん”って感じでボカすなんてウソになっちゃうじゃないですか。だから、この映画ではやっぱりエロスにこだわりましたねぇ、うん。

―エロスの話はよくわかりました(笑)。では、なぜ母親の物語を作ろうと思ったんでしょうか?

細田 きっかけはすごく身近なことで、子供ができた周りの夫婦たちに影響されたんです。面白いもので、ものを作っていくとだんだん足元のことに興味が向いてくる。『サマーウォーズ』だって、うちの奥さんの親戚に影響されて、奥さんの実家のある長野を舞台に「親戚が集まって何かする話」を書いたのが発端ですから(笑)。普段の食卓で出るような話題の中に、かえって世界の広がりみたいなものを感じるんです。

―ちょうど本作の制作中に東日本大震災が発生しましたが。

細田 ええ。しかも、子供を連れた花が東京から田舎に引っ越すシーンの絵コンテを切った直後に、あの地震が起こって……。だから、「今住んでいるこの場所が荒野になったときに、子供を抱えて自分たちはどこに向かい、どう生きればいいのか」っていうことを強く意識せざるを得ませんでしたね。

―東京を追われて田舎へ向かう花たちの行動は“疎開”を思わせます。しかも、向かった先の土地は、圧倒的な自然と濃密な人間関係に取り巻かれた、新参者には厳しい場所で……。

細田 あそこは、僕の生まれ育った富山県上市町(かみいちまち)がモデルなんですが、出身者としては“都会の人が思うほど田舎って甘くないぞ”という思いがありまして(笑)。コンビニもなく不便な上に虫だらけだし、地域のコミュニティから一歩でも外れると生きていけない。まさにサバイバルです。花が引っ越した当初、近所のおばさんから芋をもらうシーンがありますが、あそこで対応を間違えると、もう終わり。「ああ、こういうときにちゃんとできる人が主人公でよかったなぁ」なんて思いながら、コンテを切りました(笑)。

― そんな場所で、花のふたりの子供、姉の「雪」と弟の「雨」は、人間とオオカミの中間のような“おおかみこども”であることに悩みながら成長していきます。これは、ゲイや特殊な趣味を持つ、「マイノリティ」の物語とも受け取れますが……。

細田 う~ん。僕はマイノリティを描いたつもりはないですね。だいたい、マイノリティ、マジョリティっていう区別をする人自体が僕は信用ならない。自分はマジョリティ側に立っているって思っているからこそ、大津のいじめ事件のようなひどいことができるんでしょう? でも本当は、誰しもがちょっとずつ違った資質や趣味を持つマイノリティ。そのことを自覚し、「自分は人と違う。おかしいんじゃないか?」と悩みながら生きる人のほうが描きがいがあるというのかな。そのいじらしさこそ、人間らしいと思います。



■僕は「面白い映画」を作りたいだけ

―細田監督は、“ポストジブリ”“ポスト宮崎駿”といわれることも多いと思うんですが……。

細田 ほんとにそう! フランスに行ってもアメリカに行っても、そういわれるんです。

―ご自身では、どうお考えなんですか?

細田 確かに、僕は『となりのトトロ』も『ルパン三世 カリオストロの城』も好き。そもそも、宮崎監督たちの作品に触れたことがきっかけで、小学校の卒業文集に「アニメ監督になりたい」と書いたくらいだし、実際に美大を出てジブリの入社試験も受けてますから。ただ、僕は宮崎駿になりたくてアニメをやってるわけじゃない。そういう“ポジション”につきたいがために仕事をしているわけじゃなくて、あくまで自分の「面白い映画」を作りたいんです。

―人のマネをしても、本当に「面白い映画」はできないでしょうし。

細田 そうそう。宮崎駿的なものだったら、宮崎さんが作ればいいんです。ほかの誰かが作っても興覚めするだけですよ。要するに、「面白い映画」っていうのは、人それぞれの価値観や切り口で世界を見ることによって生まれてくるわけだから……って、こんな話でいいの? もっとエロスの話をしようよ! それが週プレにしかできない切り口じゃない?

―じゃあ、お願いします!(笑)

細田 ズバリ、見どころは花が農作業をしているシーンですね。あそこは、スタイリストさんとずいぶん話し合い、ものすごく体にフィットしていて、かつお尻の見えそうな服にしたんですよ。農作業こそ豊穣を願う場所、エロスを発散する場所ですからね。あそこで軍手とかモンペとかはダメでしょう。よーく目を凝らしていただくと、下着も見えるかも……。

―ちょっ、宣伝さんがついに立ち上がってしまいました!

細田 (早口で)ぜひエロスという視点でもう一度、映画を観てください。必ずです。これが週プレに言えるすべてです!

―監督、リップサービスよすぎですよ~!

(取材・文/西中賢治 撮影/高橋定敬)

●細田 守(ほそだ・まもる)



1967年生まれ、富山県出身。91年、東映アニメーションの前身である東映動画に入社、アニメーターを経て演出家に。05年に独立し、翌年監督した『時をかける少女』で名を知らしめる。09年、『サマーウォーズ』で名声を不動のものに。11 年、スタジオ地図設立

映画『おおかみこどもの雨と雪』



全国東宝系にてロードショー公開中



東京の大学に通う花は、人間の姿で暮らす“おおかみおとこ”の彼と恋に落ちる。ふたりは結婚し、“おおかみこども”の姉弟を授かるが……。



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