加藤嘉一「街の書店は“社会の縮図”。ネット書店にはない情報が詰まっている」

週プレNEWS / 2012年8月27日 15時0分

世界のどこへ行っても、ぼくが必ずすることは“書店ウオッチ”。



そこには、ネット書店にはないあらゆる情報が詰まっているんです!

ここ1、2年、ぼくは中国だけでなく欧米、中東、東南アジアなど世界中を行き来しており、日本に帰国するのは月に一度くらい。帰国時に必ず実行するのが書店めぐりです。特に東京駅に近い丸善丸の内本店と八重洲ブックセンター本店、紀伊國屋書店新宿本店、三省堂書店有楽町店を定点観測店にしています。最低でも3時間、長ければ半日いることもあり、入念にチェックして20冊ほど購入します。

日本にいるときばかりではありません。中国はもちろん、世界のどこに行ってもまず向かう場所は書店。オーストリアのウィーンでは至る所に書店があって驚きました。一方で香港などは書店が少ない街です。書店を軸に、街全体を把握していくのがぼくの旅の基本です。

もちろん、自分の研究や取材、執筆の資料を探すという目的もあります。しかし、それ以上に重要なポイントは、書店という場所は“社会の縮図”だということ。そこにどれだけの人がいて、どんな本が置かれ、売れているのか。常に変化していく棚のラインアップをキャッチアップすることで、社会で何が起こっているのか、世間で何が注目されているのかを垣間見ることができます。

例えば、日本では数年前は「中国はすごい!」といった論調の本が多かったのですが、最近は中国の“崩壊”を示唆する本が増えている。ほかにも「20歳若返って見える」という本や「デフレの正体」に関する本など、直近の“売れ筋”から読み解けることは多々あるんです。

知的経済の時代、はやっている本のタイトルを知るだけでもインスピレーションが刺激され、新しいアイデアが生まれてしまう。ぼくの実感では日本の書店はハイレベル。いろいろなコンテンツが整理され、スタッフの方も研究熱心で本をよく知っています。大学生でも社会人でも、書店に行って本を眺めるだけで有意義な時間を過ごせるはずです。そこで涼もうなどとヤワな考えを持たず、気合いを入れて入店すれば、書店ほど優れた知的な学校はないと断言します。

ぼくは長い時間書店にいるので、平積みの本だけでなく棚の隅々まで見て、ピンときたらその場で買うタイプですね。平積みの本を選ぶのは簡単ですが、いろいろな棚をじっくり見ていくと、「なぜ、こんな素晴らしい本が奥に眠っているんだろう」という宝探しもできます。敬愛するマックス・ウェーバーの本よりも、なぜダイエット本が目立つところに置かれ、売れていくのか……などなど、思索にふける時間を楽しむのも格別。

ところで、出張続きで家にあまりいないぼく個人は使いませんが、中国では定価の30%割引というような破格で本を売る『当当網(ダンダン)』というネット書店が、人気を誇っています。同書店は出版社から安く本を仕入れている。本を書いている人間として言わせていただければ、その分、著者に入る印税も街場の書店より低いんです。著者の生活、権利を尊重するという意味でも、ぼくは街の書店で本を買います。

ネット書店は確かに便利ですから、ケース・バイ・ケースで使い分ければいい。個人の自由です。ただ、そればかりで“知の小宇宙”たる街の書店に足を運ばなくなるのは賢明とはいえません。「面倒くさい」というだけで己を向上させるチャンスを逃している人、本当にそれでいいと思っているなら、その理由を逆に教えて!!

今週のひとこと



書店は社会の縮図。こんなに優れた知的な学校はありません!!

●加藤嘉一(かとう・よしかず)



1984年4月28日生まれ。高校卒業後、単身で北京大学へ留学。年間300回の取材、200本のコラム執筆、100回の講義をこなし、国境を越えて多くの著書を持つ国際コラムニスト。最新刊『脱・中国論-日本人が中国とうまく付き合うための56のテーゼ』(日経BP社)が好評発売中!



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