茂木健一郎「僕のTwitterが炎上してばかりいるのも『挑戦』です」

週プレNEWS / 2012年8月28日 6時0分

「特にアウェーというか逆風を受けながら進んでいくような経験が大事」と語る茂木健一郎氏

挑戦ってなんだろう? 努力とはどう違うのか? あまり深く考えたことはないけど、なんとなく挑戦のほうが字面がカッコいいなんて思っていたところに、本書『挑戦する脳』は脳科学の視点から答えを示してくれた。

著者は自身が小学1年のとき、縄跳びの3重回しに挑戦し成功したときの感覚を「異界に通じるような爽快感」「世界の見え方が変わった」と書く。それは、既存のパラダイム(価値観)のなかで、性能を表す数値をひたすら上げていくような「努力」とは違う。まったく新しい条件のなかで脳が働くこと、それを目指すことが「挑戦」だというのだ。

―「失われた20年」と呼ばれる日本の停滞は未知の領域への挑戦がないからだ、とありますね。

「予測可能な未来だけを論じていれば、挑戦する姿勢が失われるのは当然です。失敗したときには『想定外』という言い訳もできるでしょう。しかし、現実の世界は規則性だけで成立しているわけではない。ランダム性や偶然が入り混じった『偶有性』があって、そういう予測不能な状況に対応していくのが本当の挑戦なんです」

―「挑戦することが人間の存在理由」とまでお書きになっていますが、現代の日本人は臆病になった?

「エネルギーが足りないと思いますよ。優等生的な努力はできても、世間ではタブーとされているような領域に挑戦することはできない。僕なんか、ほら、世間では“悪いヤツ”みたいに言われることもあるでしょ(笑)。脳科学の世界でも、『意識』という従来は扱わなかったテーマを研究しているのでバッシングされています。でも、今の日本にはヒール(悪役)が必要だと思うな」

―挑戦して、悪役になって。そうすると、脳ではどんなことが起きるんですか?

「まず、潜在的な本能が活性化しますね。直感力が鋭くなるというか。例えば、僕は誰かと出会ってすぐに『この人とは仲良くなれるか』がわかるようになりました。僕はそういう部分が強くなりすぎて詮索をしなくなってから、とても仲良しなのにその人が何をしている人か知らない、なんてこともあるんですけど(笑)。しかし、世間のオトナは肩書を気にして、その枠組みの中でしかものを考えられない。それよりはずっといいでしょう。そして何より、挑戦することには『新しい自分になる』喜びがあるんです」

―若い世代にはどう読んでもらいたいですか?

「人間が挑戦をし続けるには、自分の未来は自分で決められるという自由意思の支えが不可欠です。『自由』はこの本の大きなテーマでもあるし、研究を続けているんですが、各世代に『自由と感じるか?』というアンケートをとると、23歳の回答群が特異点なんです。

基本的には年齢とともに自由と感じる率が高くなっていくのに、ここだけガクンと落ち込んでいる。就活を経て社会人になる年齢だから、その大変さが表れているんだと思いますが、それが25歳ぐらいからまた自由と感じられるようになっていく。

このように、自由っていうのは自分が『なりたい!』と思えば実現できるのではなくて、条件が整わなければ自由にはなれないものです。若い世代にはその条件となる“自分の武器”を増やしていってもらいたい。知識、技術、経験……これらは挑戦をしなければ得られないんです。

僕は、特にアウェーというか逆風を受けながら進んでいくような経験が大事だと思います。苦手な人に会うとか、ソーシャル・ネットワークを使うのでも、仲良しクラブ的なFacebookよりも、いろいろな人との接点があるTwitterを選ぶとか。さまざまな人とやりとりができる環境では誤解があって当然ですから、僕のTwitterはしょっちゅう炎上しています(笑)。でも、そこにあるのが挑戦なんです」

(取材・文/田中茂朗 撮影/高橋定敬)

●茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)



1962年生まれ。脳科学者。東京大学大学院理学系研究科で博士号を取得後、ケンブリッジ大学などを経て、現在はソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。主な著書に『脳と仮想』(新潮社)、『今、ここからすべての場所へ』(筑摩書房)など

『挑戦する脳』



集英社新書 777円



学習の本体は挑戦。挑戦はわかりやすい形をとるとは限らない。私たちの日常の中に挑戦は存在していて、多くの人がそれに相対し生きている。そのような挑戦を前にして、脳はどう働くのか? 異端の脳科学者がそのメカニズムを説く





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