男性用ピルの実現で“コンドームいらず”の時代がやってくる?

週プレNEWS / 2012年8月29日 19時0分

アメリカからビッグニュース! 8月17日、アメリカのベイラー医科大学の研究チームが、男性用のピル(経口避妊薬)の実用化に期待を抱かせる画期的な研究結果を発表した。

その内容について、東京・飯田橋中村クリニックの院長で泌尿器科専門医の中村剛(たけし)氏がこう説明する。

「彼らは抗がん剤の研究を進めていく過程で『JQ1』という新物質を発見したのですが、マウス実験の結果、この物質がマウスの精子形成を一時停止させる作用を持つことが明らかになりました。JQ1をマウスに投与すると精液中の精子が激減し、運動能力も著しく低下。さらに投与をやめると精子形成能力が回復し、その後、マウスが生んだ子供も健康だったということです。これは、いまだ存在しない男性用ピルの実現に大きく近づく研究結果として多くの研究者に注目されています」

さらに中村氏が続ける。

「現在、男性の避妊手段といえばコンドームかパイプカットしかありません。コンドームは破れる恐れがあり、パイプカットは手術費が高く、一度カットすれば元に戻すことはできない。その点、男性用ピルは避妊成功率が高く、安価で、投与をやめれば元の体に戻せる。だからこそ、男性用ピルは長年開発を望まれていました」

ところが、実用化の可能性について、東邦大学医学部教授の永尾光一氏(泌尿器科)が解説する。

「男性用避妊薬の場合、それを服用した後、1ミリリットル当たりの精子濃度(平均5000万個)が1万個未満(重度乏精子症の状態)にならなければなりません。私の試算によれば、今回の研究結果は1ミリリットル当たりの精子濃度が550万から1400万個と、まだ500倍以上も高い。現段階では実用化には程遠いと言わざるを得ません」

男性用ピルの開発の苦難の歴史を永尾氏が説明する。

「男性用ピルの研究は1970年代から始まっています。その過程で女性用ピルの開発は着々と進み、日本でも99年に認可が下りて普及が進んだ。では、なぜ男性用ピルの開発は進まなかったのか。女性の避妊は月1回の排卵を抑制するだけでよく、ホルモン調節によって比較的容易に実現できました。それに対し、男性は毎秒1000個もの精子を作り、1回の射精で1億個の精子が放出される。人為的にその機能を停止させることは簡単ではないということです」

これまでにも世の男性に期待を抱かせる避妊研究はいくつも話題になったが、いずれも実用化には至っていない。

永尾氏によれば、現在の最先端研究はテストステロンなどのホルモン投与を用いたものだという。

「ボディビルダーで無精子症になっている人がウチの病院にも来院されますが、それは自分の体に男性ホルモンを多量に投与しているから。その男性ホルモンを活用した避妊研究は昔から行なわれ、すでにヒトでの研究を終えているものもあります。その研究では被験者1045人に対して約95%の人が、実用化のひとつの基準である重度乏精子症の状態に達し、投与をやめれば生殖能力は元の状態に戻るという結果も出ています」

成功率95%。それでもダメ?

「5%の失敗で望まない妊娠を招く恐れもある。だから、製薬会社が製造に踏み切らないのです」

確かにそのとおりだ。その点、今回発見されたJQ1には、その5%の壁を超えられるかもしれないと期待を寄せる声もある。

「今回の研究結果は、これまで主流だったホルモンによる男性避妊とはまったく異なるアプローチで生まれている点が画期的。今後の研究次第では、避妊成功率100%に限りなく近づく可能性もあります」(永尾氏)

研究がうまく進んだとして、男性用ピルはいつ実現する?

「マウス段階での実験成功から人体実験、治験……とスムーズに進んだとしても、5年から10年はかかるでしょう。実用化されたとなれば価格は女性用ピルと同等の2000円(1ヵ月分)がひとつの目安になる」(前出・中村氏)

意外と安い? 研究者の皆さん、ぜひ頑張ってください!

(取材・文/興山英雄)



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