思考本の大半は『思考力がアップした気がする』だけ

週プレNEWS / 2012年8月30日 6時0分

果たして、古今東西の「思考」はビジネスマンにとって必読なのか? 時間のムダなのか? ビジネス本ウオッチャーの漆原直行氏が解説する

書店のビジネス書コーナーを占拠する「思考本」の数々。「決断思考」や「交渉思考」を掲げベストセラーを記録するタイトルが刊行される一方で、「本当に役に立つのか?」と内容に疑問を呈したくなる本もちらほら……。そこで、自身も過去に出版社でビジネス誌や関連書籍の編集に携わり、2000冊に及ぶ有象無象を読んできたビジネス本ウオッチャーの漆原直行氏に、思考本について教えてもらった。

漆原氏によると、ビジネス思考本には2種類あるという。

「財務諸表の読み方やマーケティングのノウハウといった、実際の業務を遂行する上での思考法やコツを解説した実務書の類い。これは仕事内容に即した本を読み込めば役に立ちます。でも、勝間和代の著作なども含まれますが、実態が判然としないコンサルたちが書くような、イマドキの主流であるビジネス・思考本は違う」

後者の思考本では、論理的思考や仕事術、自己啓発などの知見がコンビニ的に総動員され、パッと見よくできているように見える。しかし……。

「読者の危機感や不安を散々あおり、読後は『思考力がアップした気がする』『自分には可能性がある』といった万能感を醸成してくれます。が、熱が冷めると怖い。“読書家”たちは具体的に何も身についてないのに、金と時間ばかり浪費するハメに。ある程度の距離感で懐疑的に読むべきです」

なお、気をつけるべき思考本にはいくつかのパターンがあるという。

「海外の新しい思考法を概説する本がよく出ますが、エッセンスを紹介するにとどまり、現場への応用がまったく勘案されていないものが多い」

ほかに、著者のパーソナルブランディング本にも要注意だという。

「略歴に『著書多数』と書いて自慢したいという動機が透けて見える。この手の輩は本当に多い。あと、タイトルに『金額』を組み込むのは版元の常套手段。ビジネスの世界ではわかりやすい指標ですから」

結局のところ、思考本はツッコミを入れながら読む程度でいいのだと漆原氏は言う。そうなると、思考本を読む意味はどこにあるのか。

「当然読むだけではなんにもならない。あくまで物事を考える上での土台を作る、自力をつけるために補助的に用いる程度でしょう」

漆原氏によれば、思考本を読むよりも、職場で尊敬する先輩に成功体験を聞いたり、好きな本を教えてもらうほうがよほど実際の仕事に役立つとのことだ。

「ビジネスマンは今いる環境で結果を出すことが第一。それを避けて本にすがろうなど思考停止もいいところ。長年そこで場数を踏めば、おのずと思考や成功哲学は身につくもの。まずは今の環境で結果を出す、そこから思考が始まるんです」

思考本を読むだけで、劇的な仕事力アップをもくろむのは無理があるようだ。

(撮影/五十嵐和博)

■週刊プレイボーイ37号「読んだら危険な思考本はコレだ!!」より



【関連ニュース】

週プレNEWS

トピックスRSS

ランキング