加藤嘉一「食事のオーダーこそ自分の価値を上げるチャンス」

週プレNEWS / 2012年9月3日 15時0分

食事のオーダーは大きなチャンス。



進んでリスクを取りましょう!

言論の世界を生きるぼくですが、時に意外なオファーを受ける場合があります。例えば、グルメ番組。ぼくは食べっぷりがすごくいいそうで、一度起用してみたいとテレビ番組のスタッフの方に言われることがあるんです。しかし、残念ながら料理に関しては門外漢。丁重にお断りしています。

ぼく自身は「食」へのこだわりはほとんどありません。栄養価が高く、衛生面での問題がなく、腹八分目に収まればオールOKです。

ぼくが食事の際に重視していることは「オーダー」。デートや接待などの食事の席で、率先して注文するのが苦手な方もいらっしゃるのではないでしょうか? オーダーこそ自分の価値を上げるチャンス。この機会を黙って見過ごす手はありません。

中国では、10人くらいで円卓を囲んで食事をする機会が多々あります。全員が席に着くと、ぼくはすかさず「私が注文してもいいですか?」と申し出ます。列席者の中には「えっ?」と思う人もいるでしょうが、ぼくの信条は常にリスクを取ること。半ば強引に話を進めます。もし食事がマズかったら、全額支払ったあげく殴られてもいいというスタンスです。

食事はコミュニケーションが最も活発になる場ですから、いいオーダーをして皆さんが満足すればぼくの株は上がり、その後の交渉が円滑になる。グルメは世界の共通言語であり、人々の心をつなぐ架け橋なんです。

加藤嘉一流オーダーの極意は3つあります。ひとつ目は「研究」。その店にはどんなメニューがあり、会食の参加者たちはどんな好みを持っているのか。事前のリサーチが最重要です。

ふたつ目は「バランス」。前菜から始まり野菜、メイン、デザートまで飽きのこないアラカルトで攻める。ここは直感とインパクト重視です。時には普段なら食べないような珍しい料理を注文してみたり、自分のオリジナリティを少し出してみたり。例えば、ぼくは紹興酒を温めて針生姜(はりしょうが)を入れる飲み方を勧めることが多いのですが、これは往々にして大好評です。もちろんおなかにたまりすぎず、ちょうどいい腹加減で食事が終わる分量を読むことも大事ですね。

3つ目の極意は「場を支配する」こと。オーダーを取って仕切りながらも料理の説明をしたり、トークで盛り上げたり。時には店員さんをも味方にして、したたかに切り盛りすることが必要になってきます。

事前の研究、バランス感覚、場の支配。オーダーに限らず、ビジネスの世界にも通じる極意のように思えてきませんか? これこそが「戦略的思考」です。

元外務審議官で、株式会社日本総合研究所・国際戦略研究所理事長の田中均(ひとし)氏は、戦略的考え方の要かなめは“ICBM”―情報(Information)、確信(Conviction)、大きな絵(Big picture)、力(Might)の4要素だとおっしゃっていました。難しい外交交渉に挑むには、この4要素に立脚した戦略が必要だと。大いに同感です。“ICBM”は、食事のオーダーから外交交渉まで、すべてに通じる戦略的思考の基本になるでしょう。

ぼくの基本姿勢は、常に戦略的思考を持ち、すべての場、すべての機会を力に変えていくこと。オーダーでも一回一回が勝負です。居酒屋で、判を押したように生ビール、鳥の空揚げ、ポテトフライばかり頼む人がいますが、そんな“思考停止”から何が生まれるのか、逆に教えて!!

今週のひと言



列席者の好み、分量、バランス……会食の席でのオーダーは決して



簡単ではありませんが、成功すれば必ず“リターン”がついてきます!

●加藤嘉一(かとう・よしかず)



1984年4月28日生まれ。高校卒業後、単身で北京大学へ留学。年間300回の取材、200本のコラム執筆、100回の講義をこなし、国境を越えて多く の著書を持つ国際コラムニスト。最新刊『脱・中国論-日本人が中国とうまく付き合うための56のテーゼ』(日経BP社)が好評発売中!



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