“業界全滅”を避けるウルトラC? 日本家電はアップル様と手を組め

週プレNEWS / 2012年9月7日 14時0分

スマホ市場の約50%、タブレット端末の約80%の世界シェアを占めているのがアップルとサムソンだ

日本家電業界、ついに“赤信号”―。液晶の雄・シャープの業績が、「経営危機」と報じられるまでに悪化している。世界トップの座に君臨してからわずか数年の間に、いったい何があったのか? 青息吐息の日本の家電メーカーに明るい未来はあるのだろうか?

■“戦後処理”に追われる日本の家電メーカー

ほんの数年前には液晶テレビ「AQUOS」のひとり勝ちで世界を席巻していたシャープが、土俵際まで追い詰められている。 懸命の再建策を実行中でありながら、今年度も当初予測を大幅に超える2500億円の赤字見込み。すでに発表された5000人に加え、さらに3000人のリストラが断行される予定だ。大阪・堺の太陽電池工場や東京都内の所有不動産は売却の方向で、中国とメキシコのテレビ組み立て工場も、資本提携先の台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業への売却を検討しているという。

今のシャープの苦境を招いたのは、「テレビを制する者は家電を制す」という日本家電業界の“テレビ至上主義”だった。

数十年前、ブラウン管テレビの覇権を競う“第一次世界テレビ大戦”に勝ったのは、ほかならぬ日本メーカー各社。その波に大きく乗り遅れたシャープは、次の最先端技術として液晶テレビ開発に社運をかけた。

しかし、薄型テレビのシェアを争う“第二次大戦”でスタートダッシュに成功したシャープの栄光は長くは続かなかった。リーマン・ショックから始まった不況で、世界市場のトレンドは「技術」から「安さ」へシフト。中国や韓国のメーカーが瞬く間にシェアを伸ばしていったのだ。大手証券会社アナリストのA部長が解説する。

「近年、世界一の座を死守するべくシャープが行なった巨額の設備投資は、今となっては市場動向を完全に見誤った方策だというしかない。急激な円高の進行という不幸もあったけれど、シャープの歴史を考えれば、そもそもが後に引けない戦いだったのかもしれないね……」

そして何より深刻なのは、この一大事にも日本の他メーカーがどこもシャープに手を差し伸べられない状況にあること。家電ジャーナリストの、じつはた☆くんだ氏は涙ながらにこう語る。

「状況がのみ込めない人は、とにかく家電量販店のテレビ売り場の惨状を一度見てください。最前列には韓国・LG電子のスマートテレビ。特売コーナーには中国製の激安ノーブランド品。シャープが世界に誇る超高画質クアトロン搭載のAQUOS70インチモデルは、売り場の隅で30万円台で投げ売りされています……」

本土決戦ともいえる国内の家電量販店でも、中国や韓国のメーカーにジリジリと売り場スペースを奪われつつある日本の家電メーカー。各社とも工場閉鎖や人員リストラ、余剰在庫の格安処分という“戦後処理”に追われているのが現状だという。

「『最も技術的に優れた製品が最も高く売れる』という発想はバブル時代の幻想。ガラパゴス化の危険性にもっと早く気づくべきでした」(前出・じつはた氏)



■日米安保ならぬ“日米電保”を結べ?

このままでは借金が株価の時価総額を超えかねないシャープは、小型の高性能液晶、次世代液晶に活路を求める方針を打ち出している。しかし、スマホの市場はアップルとサムスン電子が世界シェアのほぼ50%、タブレット端末では約80%を占めており、国産メーカーは全社を合計しても5%にも満たない。小型液晶製造が安定的な主力事業となるには、いずれかの陣営に入るしかないというのが現実だ。

「とはいえ、サムスンと組むのは日本メーカーには無理。数年前、ソニーがサムスンと対等にタッグを組んだ頃とは力関係が全然違いますから、“下請け”として、中国や台湾のメーカー以下の指し値で製品を納入させられることになる。しかも、ヘタをすれば支払いは韓国ウォンです。竹島問題で日韓通貨スワップ協定も先行きが怪しく、いつウォンが大崩れするかわからないというリスクは無視できません」(前出・A部長)

となると、残るはアップルしかない。しかし、今や世界一の大企業となったアップルが、青息吐息の日本メーカーと手を結びたがるだろうか?

「実は、昨年アップルが部品調達や生産委託を行なった156社のうち、32社は日本企業。パナソニック、ソニー、東芝……。シャープもそこに含まれます。同じくアップルの大口受託先である台湾の鴻海が筆頭株主となった今こそ、ガッチリと受注額を増やすチャンスといえるでしょう。

しかも、アップルは現在、サムスンとの特許訴訟が泥沼化しており、韓国メーカーへの不信感は相当なものです。多少高価でも、守秘義務などのルールを守る日本メーカーは、アップルにとって優良なパートナーです」(前出・じつはた氏)

敵の敵は味方。こうなりゃ、日米安保ならぬ“日米電保”を結ぶべきか?

「他メーカーのスマホ価格下落率が発売後半年で30%、1年で50%にも及ぶなか、アップルの製品価格の安定感は別格です。この際、シャープの堺工場はiPhoneとiPadの専門工場に、パナソニックの大阪・尼崎工場は発売間近といわれるiTVの専門工場に! いっそのこと、ソニーもウォークマンをやめてiPodを作る! これが国産家電メーカー再生の一番の近道です。ええ、なんだか複雑な気分ですが……」(じつはた氏)

この案は極論だとしても、グローバル市場ではごく少数のスタンダード製品だけがひとり勝ちし、その関連企業だけが安定経営を果たせるというのは否定しようのない事実。先端技術に傾倒し、ガラパゴス化してしまった日本のメーカーも、高すぎる授業料を払って教訓を得たはずだ。

10年前、アップルが世界一の企業となることを誰が想像しただろう? 頑張れシャープ、そして日本家電メーカー。今の苦境が次の大躍進の原動力となることを信じたいぞ~。マジで。

(取材・文/近兼拓史)



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