加藤嘉一「香川選手は従来の日本人像とは違うタイプのメンタルの持ち主」

週プレNEWS / 2012年9月24日 15時0分

名門マンチェスター・ユナイテッドで新シーズンを迎えた香川真司選手。



ぼくが注目するのは、彼の持つ日本人らしからぬ“ノリ”です。

イングランドのサッカープレミアリーグ、マンチェスター・ユナイテッド(以下、マンU)に移籍した香川真司選手が、本拠地のオールド・トラッフォードに立ち、ゴールを決める姿を見て、同じ日本人として心から誇りに感じ、体が震えました。チームの要であるトップ下を任され、屈強な選手たちを相手にスピードと判断力の高さを駆使して戦う彼からは、日本人が国際社会でアピールすべき“個”の強さがあふれ出ています。世界を相手にする同じ20代の人間として、ぼくは刺激を受けています。

多くのファンの視線、お金、情報が集まるマンUで戦うのは、想像を絶するプレッシャーがあるでしょう。しかし香川選手は、それをすべて腹におさめて淡々と戦っている。まさしく現代版“サムライ”です。昨季まで在籍していたドイツ・ブンデスリーガのドルトムントに残留していればポジションも保証され、気心知れたチームメイトのなかでこれまで以上のパフォーマンスができたことは間違いないのに、さらに上を目指すために移籍を選択した。しかも、軽やかに。

ぼくが思うに、香川選手は従来の日本人像とは違うタイプのメンタルの持ち主ではないでしょうか。一見おとなしそうに見えますが、各種報道などを読む限りでは決して真面目一辺倒というわけではない。お酒は飲むし、朝食を取らないで昼まで寝ていることもあるそうですし、人をうまく“いじる”こともできる。もちろん陰で努力しているのは間違いありませんが、それ以前に、何事にも物おじしない、明るく振る舞うスタイルは、弱肉強食の世界で闘っていくのに適している。たとえるならば、ブラジルやスペインの選手のようなラテン系の“ノリ”。それが世界トップの舞台でもファンタスティックなプレーを持続できている要因ではないでしょうか。

香川選手の活躍を見ながら、国際社会で戦うために、今の日本人に最も足りないのがこの“ノリ”なのだと考えるようになりました。細かいことはアクションを起こしてから考えればいい。見る前に飛ぶ勇気、破天荒さ、ワイルドさ。グローバル化する世界では絶対に必要な資質です。厳しい競争社会のなかで指をくわえて遠慮をしていたら、あっという間にチャンスを失ってしまいます。

この“ノリ”は、ある面では“割り切る力”と言い換えられるかもしれません。国籍や人種の壁を超え、どんなシビアなリーグだろうと純粋にサッカーを、自分のプレーを楽しむ。香川選手は、新しい日本人像を世界の人たちにアピールしてくれることでしょう。

ところで、こうなると気になるのが本田圭佑選手です。またもロシア残留が決まった今、日本代表でエースとして君臨する本田選手は、香川選手の飛躍をどんな気持ちで見ているでしょうか。虎視眈々と“大きな獲物”を狙っているに違いありません。

見た目のイメージとは裏腹に神経質でこだわり続ける本田選手と、心がフラットで物事を純粋に楽しんでいるような香川選手。対照的なこのふたりが、今後どのような道を歩んでいくのか。どんな化学反応を起こしていくのか。個人的に興味津々です。

ぼくも新天地・ボストンへ渡り2週間がたちました。香川選手のようなノリと突破力を持って、加藤嘉一という“個”を知らしめていきたい。石橋を叩きすぎて後手に回る日本人気質を捨てずして、世界でブレイクスルーする方法があるなら、逆に教えて!!

今週のひとこと



香川選手の“ノリ”は、



新たな日本人像をアピールしています!

●加藤嘉一(かとう・よしかず)



1984年静岡県生まれ。高校卒業後、単身で北京大学へ留学、同大学国際関係学院修士課程修了。現在はハーバード大学ケネディスクールフェロー。国境を越えて多くの著書を持つ国際コラムニスト。最新刊『脱・中国論 日本人が中国とうまく付き合うための56のテーゼ』(日経BP社)が好評発売中!



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