“対日”威嚇の切り札? 中国海軍初の空母「遼寧」の実力

週プレNEWS / 2012年10月4日 10時0分

中国初の空母「遼寧(リャオニン)」が同国の海軍に配備された。

この空母は、1998年に中国がウクライナから購入した旧ソ連製の空母「ワリャク」を同国が独自に改修したもの。マカオの企業がカジノに利用するという名目で購入したが、その後は中国の遼寧省大連(だいれん)に渡った。

ワリャクがウクライナで初めて進水したのは88年。その“中古”を中国は長い時間をかけて“新品”の空母に仕立て直した。

尖閣諸島をめぐって、日中関係は悪化の一途だ。このタイミングで空母を配備するのは、やっぱり日本に対する威嚇のためなのだろうか?

中国の軍事事情に精通する社会学者の田辺義明(たなべよしあき)氏はこう話す。

「対日威嚇というより、10月1日の国慶節(こっけいせつ/建国記念日)に向けた国威発揚(こくいはつよう)という意味合いのほうが強いと思います。中国人にとって国慶節は非常に重要な日。日本に当てはめれば、盆と正月が一度に来るようなもので、過去にも国慶節に向けて設計・製造された戦闘機は数多くありますよ」

田辺氏は、中国人にとって空母は「憧れの的」だという。

「アメリカの原子力空母が登場する映画『トップガン』が96年に中国で公開され(アメリカでは86年に公開)、大ヒット。これを契機に、中国ではテレビCMなど、広告のキャッチコピーに『空母』という言葉がよく使われるようになりました。『スーパーマーケットの空母○○』といったように“デカい”の代名詞として空母が乱用されたんです。それは今も変わっていない。だから、遼寧の配備は、中国の指導部にとって自国の軍事力を国民に誇示する格好の材料になるんです」

では、遼寧の実力はいかなるものか。軍事ジャーナリストの世良光弘(せらみつひろ)氏に聞いてみた。

「全長約305m、6万7000t、戦闘機は最大36機搭載可能ですが、アメリカが2008年に、日本に初めて配備した空母『ジョージ・ワシントン』に比べると遼寧は艦載機(かんさいき/軍艦に搭載され、そこでの運用が可能な航空機)の搭載能力、打撃力などは劣る。しかし、それ以上に懸念すべき問題点が遼寧には存在します。

それは蒸気の圧力を利用して航空機を加速させ、空に打ち出すカタパルトがついていないということ。代わりに、坂になった甲板の上を高速で走らせ、その勢いを使って自力で飛ぶスキージャンプ甲板を使っています。

しかし、この方式でも時速180キロ以上の加速が必要なので、重装備の機体だと失速の恐れがあり、発艦させることができなくなってしまいます。また、航空機を着艦(ちゃっかん)させるために必要なアレスティングワイヤーが未調達との指摘もあります。これらのことから一部のメディアでは遼寧は空母を使いこなすための“練習用”なのではないかという報道もありました」

ということは、日本にとってあまり脅威ではない?

「決してそんなことはありません。中国は『J-15(殲撃[せんげき]15型)』という最新鋭の戦闘機を開発していて、これが遼寧の艦載機になるといわれています。その実力は日本が所有する主力戦闘機F-15とほぼ互角とされ、これを搭載した空母を東シナ海に配置すれば日本にとっては十分に脅威になると思います」(世良氏)

中国の事情に詳しいジャーナリスト、福島香織(かおり)氏も強調する。

「中国では現在、4隻の空母を開発しており、2、3年後には2隻目が完成するといわれています。あの国は中長期的な国家戦略を明確に持っていて、それらを着実にこなしている。現状、海上での戦力は日本のほうが上でも、10年後20年後はどうなるのかわかりませんよ」

中国の軍拡は着々と進んでいる。日本人は、そのことをキチンと認識すべきなのだろう。



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