加藤嘉一「早くもボストンの洗礼を受けました!」

週プレNEWS / 2012年10月22日 13時0分

初めての土地で生活を始める際には、想像以上にアクシデントが多いものです。



ここボストンでも、やはりいろいろな“洗礼”がぼくを襲いました。

8月末に渡米し、約1ヵ月半がたちました。正直、渡米前は不安でいっぱいでした。見知らぬ土地、誰も知り合いがいない環境で過ごす心細さは、9年半前に中国で体験して知っていましたから。それに、中国や日本ではそれなりに発信してきましたが、ハーバード大学ではまだ何者でもない自分。この感覚は久しぶりで、新鮮です。ここから見えてくるのが飛躍だと信じて、一日一日を大切に取り組んでいこうと気合いを入れる今日この頃です。

中国語がまったく話せなかった9年半前とは違って、今回は英語が通じます。ぼくも大人になり、経験を積んできたので、あの頃よりは多少、精神的な余裕はあります。

しかし、やはりボストンでも早速“洗礼”を受けました。

まず、住む予定だった部屋にまだ前の居住者がいて入居できませんでした。仕方なくケネディスクール近くのホテルに部屋をとりましたが、北京大学への留学当初も寮の部屋が用意されていなかったことを思い出しました。歴史は繰り返します。

そして、滞在2日目にして“ビール事件”発生です。

ホテルの近くにビアガーデンがあったので、部屋でビールを飲もうとボストンの地ビール・サミュエルアダムズを一杯テイクアウトしたんです。プラスチックのカップを右手に、歩きながらビールに口をつけようとしたそのとき。ピピピーッと、道の向こうからけたたましいホイッスルの音が聞こえてきた。

「んっ、何か事件でもあったか」

ポリスが何か言いながら寄ってきます。なぜか、ぼくのほうに……。

「違法行為なんかしてないぞ!」

ところが……、ポリスいわく、ボストンがあるマサチューセッツ州には公共の場でアルコールを飲んではいけないという法律がある、と。連行されそうになったぼくは、

「2日前に着いたばかりで本当に事情を知らなったんだ。パスポートも全部見せるから勘弁してくれ」

と釈明し、さらに、

「ミスをして大変申し訳ない。次からは規則を守る。失敗は成功の母だ」

などと強引に言いなだめ、最後は許してもらって握手をし、仲良くなりました。ホッとしました。

ほかにも、携帯電話やインターネット回線の契約、電気、ガス代の支払い方など、とにかく煩雑で、お金を多く払いすぎてしまったりと、一事が万事この調子。生活をイチから組み立てる苦労を痛感します。

そうはいっても中国や日本での日常とは異なり、比較的ゆとりをもって日々を過ごせています。いい意味で内向きに、読書をしたり、自炊をしたり。28年間生きてきて初めて“生活感”を味わっています。

また、大いに刺激を受けたのがボストンのランニング文化です。辺りが夕日で真っ赤に染まるなか、チャールズ川のほとりを走るのは至上の喜びです。ボストンは人口65万人くらいの都市ですが、20万人は走っているんじゃないかと思うほどランナー人口が多い。しかも、とにかくレベルが高いんです。

ぼくはだいたい毎日10kmから12kmくらい走るのですが、日本なら最初の1kmを約5分で入り、最後は4分くらいのペースというのが一般的。しかし、チャールズ川のほとりで周りのペースに合わせると、すぐさま4分になり、最後は3分20秒くらいまで上げてしまう。ほぼ全力ですね。ボストンでは、ランナーとしての成長も見込めそうです。

ぼくはこの地で、自炊とランニングでコンディションを調整しながら、28年間経験したことのない戸惑いと、一種の喜びを胸に一日一日を生きています。未知への挑戦以上に刺激的なことがあるならば、その理由を逆に教えて!

今週のひと言



“ビール事件”とランニング文化。



早くもボストンの洗礼を受けました!

●加藤嘉一(かとう・よしかず)



1984年生まれ、静岡県出身。日本語、中国語、英語でコラムを書く国際コラムニスト。高校卒業後、単身で北京大学へ留学、同大学国際関係学院修士課程修了。現在はハーバード大学ケネディスクールフェロー。2012年9月末現在、中国でのブログは7000万アクセス、中国版ツイッターのフォロワー数は160万人を突破。日本での最新刊は『脱・中国論 日本人が中国とうまく付き合うための56のテーゼ』(日経BP社)



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