男が性的なことを考えているか、女性は無意識下でわかっている?

週プレNEWS / 2012年10月23日 15時0分

「毎日のように世界中で面白い論文が発表されていることを伝えたい」と語る脳科学者の池谷裕二氏

『進化しすぎた脳』『脳はなにかと言い訳する』などの本で知られる、脳科学者の池谷裕二(いけがやゆうじ)氏。26編のエッセーから成る『脳には妙なクセがある』では、おかしくて、しかし妙に納得できる人間の脳の好み、行動パターンなどを描いている。

―さまざまなトピックが出てきますが、一番興味深いのは、「男がエロいことを考えてるか、女性は無意識下でわかっているのかもしれない」というところです。

「男性に教育番組のビデオとエロビデオを見せ、見終わった後に汗を採取して、女性にそれを嗅いでもらう実験ですね。この実験で、女性はどちらがエロビデオを観たときの汗かわかりませんでした。しかしMRIで見ると、エロビデオのときの汗を嗅いだとき、女性の脳の『視床下部」』という部位が反応していた。視床下部は性行為に関係する場所です」

―つまり、意識の上では区別できないけど、脳はわかっている、と。

「そういうことです。意識には上っていないけど、『生理的に嫌な感じ』という判断に影響を及ぼしている可能性はありますね」

―恐ろしい話です。一方、「最後通牒(つうちょう)ゲーム」の話は、交渉事に役立ちそうに思います。

「わかりやすく説明すると、相手と分け合うことを条件に、あなたの手元に1万円が与えられる。そのとき、いくらを相手に分け与えるかはあなたに委ねられている。相手は、その案を受け入れるかどうかの拒否権だけがある。交渉は許されず、決断は一度だけ。そんなルールです」

―冷静に考えれば、こちらがいくらを提示しようが、相手は受け入れたほうがトクするはずですね。

「しかし実験では、分割が2000円だけだったときの拒否率は50%を超えています。この実験は、理不尽だと感じたら、人は自分が損をしてでも相手に社会的制裁を加えるということを示しています。ちなみに結果を見ると、分割は3500円あたりに落ち着くことが多いようです」

―交渉の落としどころとして、65対35くらいがぎりぎりのラインというのは実感としてなんとなくわかる気がします。しかし、それが実験で裏づけられているとは驚きです。

「一般の方には意外と知られてないんですね。それなら、もっと伝えていくべきなのかもしれませんね」

―池谷さんはヒット作を飛ばしている有名な脳科学者なのに、テレビ、ラジオには一切出ません。HPに自らのメディア活動について詳細な声明を出してますね。「研究が好き」で「大学に雇用されてい」て「国家から研究費を委託され、科学を遂行している立場」だから、メディア露出は抑制的で、「講演や連載などの活動は基本的に早朝・夜・休日のみに行い、研究生活には差し支えないように、気を配っていると。

「年配の先生から『こんな本書く暇あるんだったら研究したまえ』なんてよく言われるんです。先々月も言われたかな」

―それで、あんな細かい声明を出しているんですか。

「まあ、別に深いことを考えてHPにコメントを出したわけじゃないんですよ。本も、啓蒙だとか科学者の社会的責務がどうだとか、そんな小難しい理由から出したわけじゃない。正直、そんなことには興味がないんです。毎日のように世界中で面白い論文が発表されている。面白いことを知ったら、人に伝えたくなるじゃないですか。『こんなことがあったんだよ』って。それと一緒です。だからこの本を読むときも、こんな変なことがあるんだってことを、まず楽しんでもらいたいですね」

(撮影/高橋定敬)

●池谷裕二(いけがや・ゆうじ)



1970年生まれ、静岡県出身。薬学博士。東京大学大学院薬学系研究科准教授。『進化しすぎた脳』(講談社ブルーバックス)、『脳はなにかと言い訳する』(新潮文庫)など著書多数

『脳には妙なクセがある』



著者/池谷裕二 扶桑社 1680円



「運動能力が高いと算数の成績もいい!?」「脳には、他人の不幸を喜ぶメカニズムがある」「その日、株で儲けられるかどうかは、朝の身体を調べればわかる」……。脳科学で立証された驚きの真実を明かす26編のエッセー









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