充電規格の孤立化で“日の丸EV”の世界制覇プランに赤信号?

週プレNEWS / 2012年11月10日 10時0分

自動車関連規格の標準化団体であるアメリカの自動車技術者協会(SAE)が10月15日、電気自動車(EV)の急速充電規格として、欧米自動車メーカー連合が推進する「コンボ」を認証すると発表した。

これを受けて日本の各紙には、これまで官民一体で世界標準化を目指してきた日本の「チャデモ」規格が国際的に孤立するのではないか、と危惧する記事が掲載されたのである。日本経済復活の切り札として注目されている日の丸EVビジネス。その希望の光の前に、早くも暗雲が立ち込めたということなのだろうか?

が、どうやらそれは状況を把握していないメディアの早とちりらしい。国内外のメーカーのEV戦略に精通するジャーナリストの桃田健史(けんじ)氏はこう解説する。

「そもそも、チャデモはすでにSAEの認証を取得済みで、アメリカでの実際の運用が始まっている。コンボは今回の認証によって、ようやくチャデモと同じお墨付きを与えられたにすぎないのです」

日本でのEV普及の旗振り役を務める自動車評論家の舘内端(たてうちただし)氏もこう語る。

「コンボは認証を受けたといっても、細かい仕様さえまだ煮詰まっていない。チャデモとの優劣を比較しようにも、現物ができていない状態なのです。実用化までにあと数年はかかるでしょう」

一方、チャデモ側はすでに国内外で1600ヵ所以上に充電器を設置・稼働させ、リーフやi-MiEVといったEVに電力を供給している。しかもチャデモの中心的存在である日産自動車は、2015年度末までに国内だけであと5000台の充電器を追加する予定だ。

しかし、欧米各メーカーが手を組めば、国際マーケットに対する影響力は絶大なはずなのに、なぜコンボ陣営はこれほどのんびりと構えているのだろう?

「欧米メーカーは、EVが本格的に普及し始めるのにまだ10年はかかると考えています。しかも現在、世界中を不況が覆っているので、EVに対し、早急に資本を投入したくないのが本音。チャデモ陣営に世界標準を握られないよう、SAE認証取得などで牽制しながら、EVがどれほど世間に受け入れられるのか、様子を見ている段階です。ただし、コンボ陣営は、いざEV時代となれば世界各地域でチャデモと棲み分けをするつもりなどなく、『世界をコンボ規格で統一する』と、強硬な姿勢を見せています」(桃田氏)

つまり、来るべきときが来れば、欧米メーカー連合が数の論理や政治力を駆使し、世界のほとんどの地域をコンボ規格で牛耳ってしまうことはほぼ確実? お膝元の日本はこの先もチャデモを貫き通すとしても、世界標準争いにおける敗北はやはり日の丸EV戦略にとって大打撃になる。

ところが、日本の技術を結集したチャデモは意外な隠し玉を持っていたのである。

充電器や受電する側のEVにとって重要なのは配電技術。そのキーになる部品がIGBTという電力変換素子なのだが、これを高性能、高品質、しかも安価に作るノウハウでは日本が断トツの世界一。だから、日本のIGBTを使ったチャデモの充電器や受電装置は低コストで信頼性が高い。そして、IGBTはコンボでも絶対必要な部品なのである。

「だから、もし国際的にコンボが多数派になったとしても、日本はチャデモでの蓄積を応用できます。高品質IGBTを内蔵したコンボ対応EVや充電器を作って輸出し、儲ければいいんですよ。そもそも、世界標準を争うなんて覇権主義的発想はもう時代遅れ。ふたつの『世界規格』が共存したっていいじゃないですか。少数派は少数派なりに、ビジネスのやり方はいくらでもある」(舘内氏)

そのためにはもちろん、日本でのチャデモが高度に普及、進化する必要がある。“ガラパゴス”だって突き詰めれば、世界に打って出る強力な武器になるのだ!



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