医学部専門予備校「アムス」の無法ぶりを告発する

週プレNEWS / 2012年12月3日 12時0分

アムスの生徒の父兄や関係者の告発を受け、9月16日、本誌記者はアムス幹部の瀬下氏を直撃。すると瀬下氏は記者のシャツをつかみ、どこかへ引きずろうとしてきた

入試問題の不正持ち出し、法外な金額の「願書作成代行」の請負、裁判所の授業料返還命令も無視したまま……こんな無法な医学部専門予備校がある。実は「週刊プレイボーイ」とこの予備校にはちょっとした因縁がある。きっかけは1年半前、本誌がある謎を報じたことだった。

■「あれは不可能」業界でも謎の解答速報

「真相をお話ししましょう」

深く息を吸った後、男性はゆっくりとそう口にした。彼と本誌記者の間を隔てたテーブルの上には、昨年3月発売の本誌13号に掲載されたある予備校の「不可解な謎」についてレポートした記事のコピーが置かれている。

男性はかつてその問題の予備校に勤めていた元講師だ。本誌が以前の取材で追及できなかった同予備校に関する不可解な謎の真相を、すべて話してくれるのだという。

まず、当該記事の内容を振り返ろう。

問題の予備校の名は「AMS(アムス)」。東京・広尾にある医学部専門予備校で、一般的にはあまり知られていないが、医学部受験生にとっては有名な存在だ。

当該記事は、そのアムスが毎年、受験シーズンに行なっている「解答速報」の不可解な作成手口について迫ったものだ。

予備校業界では、ライバル校に先駆けて「速く」て「正確」な解答速報を出すことは格好の宣伝材料となっている。私立大医学部受験の場合、都内ではここ数年、計3社が解答速報をめぐり熾烈な争いをしているが、アムスはその中でも毎年、群を抜いて速く、かつ正確な圧倒的パフォーマンを見せており、受験生からの評判もいい。

特に問題冊子の持ち帰りが不可で、試験後も問題の掲示がない大学の解答速報では、アムスの独壇場だ。

一次試験会場が都内にある医学部でいうと、東京医科大学、東邦大学医学部、聖マリアンナ医科大学などが入試問題を当面非公開にしており、これらの大学が問題を公開するのは試験実施日から数ヵ月後。しかし、アムスはあろうことか、入試があった当日のうちに解答速報をウェブ上にアップしているのである。

驚くのはその質の高さ。例えば英語は、出典を明らかにしていない長文問題でも、アムスの解答速報は出典を明示し、穴埋め問題の箇所や小さな設問まで正確に再現している。また、再現が困難だといわれる生物でも見事にやってのけているのである。

アムス側は解答速報について、「受験者への聞き取り調査をもとに作成している」と説明しているが、受験した人間の記憶力だけで「あそこまでやるのは不可能」というのが、業界内での評価だった。

そこで本誌記者は昨年3月に、アムス側に再三取材を申し込んだ。電話、メール、本社訪問、代表者の自宅訪問……しかし、最後までまったく回答は得られなかった。

■大手予備校現役講師も手を染めた?驚くべき手口の全貌

冒頭の男性が続ける。

「謎の解答速報の作成方法は至ってシンプルなんです。アムスのスタッフがダミー受験をし、問題冊子を不正に持ち出してきて、それをもとに模範解答を作るだけ。だから問題冊子の持ち出しができない大学でも、あれだけ正確な解答速報がその日のうちにできる」

大学側は回収した冊子の数を数えるなどしているが、そんなことが果たして可能なのか?

「ええ。正確に言うと、問題冊子の表紙と裏表紙はそのまま残して“中身”だけを抜き取るんです。一部のページだけ拝借する場合もあるし、すべてを抜き取ることもある。でも、これだと回収する際に冊子が薄すぎてバレバレなので、この場合は事前に別の中身を用意して差し替える。差し替え用の冊子は前年度の同じ大学のもの。紙質も分量も毎年ほぼ同じだから、中身を確認されない限り絶対にバレない。回収した問題冊子の中まで確認する大学なんてないですから」

冒頭の男性によれば、以前は講師陣が総出で会場か会場近くの喫茶店などに待機。持ち出した問題冊子を受け取ると、その場で解答を作成していたという。

「当時、代表だった女性も現場に立ち会い、『速く解け!』と講師たちに檄を飛ばしていました」(同男性)

本誌の取材によると、ここ最近は、試験会場近くで待機しているのは英語科の男性講師1名のみ。基本的に1教科が終わるごとに、ダミー受験したスタッフが抜き取った問題冊子をその講師が受け取る。英語のみその場で解答速報を作成、英語以外についてはその冊子の画像データを「Dropbox」(オンライン上のストレージサービス)にアップし、それをもとに、本社にいる講師陣が解答の作成にとりかかる——。即日、ウェブに極めて正確な解答速報をアップできるのは、このようなチームプレーのたまものなのだ。

「もちろんすべての教科で持ち出しなり、すり替えをしているわけではありません。“原本”を入手できなければ解答速報の質は著しく下がる。またすべてを入手できた場合でも、アムスは表向き『受験者への聞き取りをもとに再現した』と言っているので、そこは百戦錬磨の講師陣がほどよく外しながら作成します」(同男性)

アムスはこのような不正行為を少なくとも90年代後半から昨年度までの期間10年以上にわたって行なってきたという。

また、別の元講師がこう証言する。

「問題のすり替えは誰もができるわけじゃない。むしろそんなことをするスタッフは限られている。なんでもアムスには、すり替え名人の『謎の人物X』がいるという話を聞いたことがあります。それが誰なのかはわかりませんが……」

この謎の人物Xについて、冒頭の男性に聞くと、「大手予備校の現役講師」と答えた。確かにその大手予備校のホームページには彼の名前がある。

同男性によると、Xは以前、アムスでも講師をしていたという。また、その後の取材で彼は現在、アムスでは教壇に立っていないものの、受験シーズンのみ解答速報の作成チームの一員として「仕事」をしていることがわかった。

そこで本誌記者は確認のため、Xに話を聞いたが、彼はこれらの事実を全面的に否定した。

「すでに7、8年前にアムスをクビになり、それから関わり合いがないので、何もわからない」

だが彼は例年、いくつかの受験会場で予備校関係者に目撃されている。そのことを指摘すると……。

「受験は自分の趣味。アムスのために受けてるわけじゃない」と答えた。

■本人直撃の末、本誌記者市中引き回しの刑in広尾

アムスの抱える“暗部”はこれだけではない。実は前身の「麻布醫専(いせん)ゼミ」時代の2003年末に、当時代表だった瀬下(せしも)景子こと福間(ふくま)桂子氏(以下、瀬下氏)が脱税事件で在宅起訴された“黒い過去”がある。しかもただの脱税事件ではない。

一部の学生に対し、入試直前の時期に日本大学や日本医科大学など私立大学3校の入試問題とほぼ同じ問題を使った“個別授業”を行ない、その対価として受け取った謝礼金合計約3億2000万円を隠したのである。

東京地検特捜部は、入手ルートの特定が困難なことから入試問題漏洩に関しては立件を見送ったが、当時、複数の関係者や個別授業を受けた生徒が、漏洩があった事実を認めている。また、代表の瀬下氏本人も特捜部の調べに問題を入手していたことを供述。さらに塾生の親が起こした別の民事訴訟でも、瀬下氏は同様の事実を認めた内容の陳情書を提出している。

この大事件以降も、アムスは多くのトラブルを抱えている。

アムスに子供を通わせていた母親がこう告発する。

「あの予備校の授業料は、最初に言っている額と全然違う。パンフレットには年間授業料は総額で約450万円とある。これだけでもほかの予備校に比べて高いのに、いろんな名目でそのほかの代金を追加で請求され、最終的には年間に1500万円ほどかかることになる。また、授業時間も親にろくな説明もないまま減らしてきた。当初の約束と違う授業時間しかしていないのに、授業料は据え置き。あまりに理不尽なので何度も抗議に行きましたが、まったく取り合ってもらえませんでした」

アムスの授業料が割高なことは業界内でも知られている。実際、年間1500万円という「年間請求額」は、都内某ライバル予備校に比べて10倍以上もするのだ。

手元に、ある内部資料がある。これはアムスの実質的代表者である瀬下氏が、ある私立医大の指定校推薦入試出願書類作成代行を請け負う内容を示したものだ。

そこには「一文字あたり300円にて承ります」と書かれてある。ちなみに、記載のケースでは全2800字あるので、請求額は、“着手金”10万5000円を加え、消費税込みで98万7000円。たかが出願書類の作成代行に、約100万円もの大金を払わせるというのだ。

「そんなの払わなければいいと思われるかもしれない。ただ、こう言ってはなんだが、優秀な子供であれば大手予備校の選抜コースに行く。アムスに来るような生徒は、正直、あまり勉強が得意ではない子が多い。それは本人も親もわかっている。そして瀬下はそんな彼らの弱みを握りつつ、もろもろの支払いを少しでも渋ると『それじゃ受からない』『もう面倒を見ない』と吐き捨てる。そんなだから、昔から父兄とのトラブルは絶えない」(元アムス関係者)

前出の受講生の母親は近い将来、アムスを相手取り訴訟をする考えだというが、アムスは授業料や諸経費の返還をめぐって過去に何度も訴訟を起こされている。

昨年、アムスを相手に訴訟を起こした父兄の元担当弁護士は語る。

「やっていることがめちゃくちゃなので、私が担当した裁判ではすぐに原告側の勝訴が確定しました。ただ、勝訴後、あちらが金を返す様子がほとんど見られない。債権を回収しようと口座を押さえても、そこに金が残されてないから、結局、泣き寝入りするしかない……。いくつも同様の裁判を経験してきましたが、このような法人は初めてです」

さらに、別件でアムスを相手に裁判を起こし勝訴するも、いまだに債権を回収できてない生徒の父親もこう吐き捨てる。

「司法の判断に従わないなど、教育者にあるまじき人物、団体だと思います!」

受講生らから入手した申込書や登記簿謄本、元社員の証言などによれば、「アムス」はただの屋号だ。実体は「秋津出版株式会社」のほか、「麻布教育研究会有限会社」「アムス数理科学振興会有限会社」「麻布リサーチ有限会社」「麻布メディカルインスティテュート有限会社」の計5つの会社からなる。授業料やそのほかの金は、それぞれの会社名義の複数の口座に振り込みをさせるのだという。

「アムスの金のやりとりはすべて瀬下がやっています。もろもろの振り込みがあると、瀬下はすぐに出金するため銀行に向かう。まぁ、会社の口座は意識的にカラにしていると言っていいでしょう。そんな彼女ですが、広尾の超高級マンションに住み、年に半分は海外旅行に出かけるなど贅沢三昧。普通の感覚じゃ、あんなまねはできないですよ」(事情を知る関係者)

法外な金を請求し、返還要求に応じず、裁判で負けても知らぬ存ぜぬを通す。元講師やスタッフ、父兄らは口をそろえて、そんな瀬下氏を強く非難する。

最後に、本誌記者が広尾のアムス前で、純白の高級車に乗り込む直前の瀬下氏本人を直撃した。

記者 いままでに生徒の親御さんからいくつも訴訟を起こされているようですが。

瀬下氏 起こされていません。

記者 では、解答速報の作成手口についてお伺いいたしますが……。

瀬下氏 (スタッフを)受験させてます!

記者 ええ、受験させて、一部で問題冊子を抜き取ってますね?

瀬下氏 そんなことはしていません。

記者 Xがしているのでは?

瀬下氏 Xはもう辞めていて、うちとは関係ありません!

記者 講師はされていませんが、いまだにアムスの幹部じゃないですか。

瀬下氏 Xはもう辞めています!

ここで記者がカメラを構えた瞬間、突然、ものすごい力で記者の胸ぐらをつかんでカメラを奪おうと襲いかかってきた。

瀬下氏 カメラを渡しなさい! 警察呼びますよ! アナタの上司にも連絡します!

記者 警察でも、上司でも、連絡していただいて結構です。

執拗にカメラを奪おうとするも、カメラを死守する記者。瀬下氏は女性とは思えない怪力で記者の胸ぐらをつかみ、記者の着ていたTシャツはビリビリと音を立て無惨にも伸びきってしまった。

そのとき、記者は彼女の吐く息からアルコールのにおいを感じ取った。職場から自家用車で帰ろうとしていた彼女が、である。

「アナタ、お酒を飲んでます」

記者がそう質問すると、つかんでいた手を離し「上司を呼びなさい!」との言葉を繰り返しつつ、その場を歩いて立ち去った。

後日、アムス側から、弁護士を介して一枚の警告書が届いた。それには、

【記者が瀬下の腕を掴み、強制的にその場に滞留させようとした(暴行罪で被害届を提出する)】

【解答速報は受験者の記憶を基にした再現であり、違法不適切な行為は一切していない】

【父兄等から多数の訴訟を提起されている事実は一切ない】

【本誌上で虚偽の事実等が記載されたら法的措置に及ぶ】

などが記載されていた。

債権の回収を望む父兄、元講師や職員らの訴えを実際に耳にした記者からすれば、この警告書は脅しにもならない。記者は、法廷で再会できる日を楽しみに待っている。

(取材・文/木場隆仁)



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