加藤嘉一「早急に中央と地方の財務関係を整理しなければ、中国のバブルは崩壊する」

週プレNEWS / 2012年12月10日 15時0分

急激な経済発展の陰で、中国という国家は内部にいろいろな“矛盾”を抱えています。なかでも看過できないのが「中央と地方」の問題です。

前回に続き、胡錦濤(こきんとう)体制から習近平(しゅうきんぺい)体制への過渡期にある中国の今後について、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

内政でポイントとなるのが「反腐敗闘争」です。前・重慶(じゅうけい)市トップの薄熙来(はくきらい)が解任されたケースでは“権力闘争”という面が注目されましたが、汚職や収賄に絡む地方幹部の処分は相次いでおり、これからもいっそう加速すると思われます。

経済が急激に成長した中国では、格差が広がるなど社会が不安定化しており、社会的弱者たちの不満が随所で爆発しています。民衆による反権力集団ストライキデモが一日500件以上発生しているというデータもある。そんななか、政治体制改革という“骨の折れる仕事”と比べれば、手早く着手できる反腐敗闘争は、「こんなに頑張っていますよ」というアピールポイントとしても最適だと指導部は認識しているようです。今後5~10年の動向に注目です。

これに付随してくるのが、中国という国家の構造問題ともいえる「中央と地方の財政関係」です。

中国は実質的に中央集権国家であり、地方政府は日本の自治体以上に権力を持ち得ません。地方の首長は中央によって任命され、社会の安定を脅かすような問題が発生すれば、中央の一存でクビが飛んでしまうこともあります。

今年9月に各地で反日デモが起こったときも、中央は資金援助もせず、応援隊も送らず、それでいて「何か問題が起これば責任は取ってもらう」という姿勢で地方政府に圧力をかけました。地方にしてみれば、「物事の責任をわれわれが負うのなら、自分たちのやり方でリーダーや政策を選ばせてくれ。それができないなら、せめて財政支援はしてくれ」というのが本音でしょう。

経済行政でも関係は同じです。中央は地方にGDPの成長を強く促す一方で、それに必要な財政支援には後ろ向きです。中央に頼ることなく、自ら利益を生んで雇用と安定を確保するしかない地方は“手っ取り早い方法”を選ばざるを得ない。地元の不動産デベロッパーと結託し、公有地の売却を通じて、土地財政という形で懐を潤わせるのです。

購入したデベロッパーはビルや家を建設して土地ごと売却し、利益を上げるわけですが、こうした動きが進めば、土地の値段は必然的に高騰してバブルになります。中国の不動産バブルは依然として油断できないほど膨れ上がっており、各国の中国ウォッチャーは「いつバブルが崩壊するのか……」と、そのリスクに目を光らせています。

中央にとってバブル崩壊は国家の安定を揺るがす懸念材料なので、地方に「必要以上に土地を売るな。行政的に介入し、抑制政策を打て」と迫る。しかし、地方は土地を売らなければ、成長と安定に不可欠な財源を確保できない。こうした“矛盾”の高まりが、社会不安を煽っているのです。

現状を打開できるのは中央だけです。地下鉄や鉄道網の整備、社会的弱者や中産階級向けの公営住宅の建設など、「社会全体の繁栄と安定に寄与する」ようなプロジェクトには、積極的に資金援助をする姿勢が必要でしょう。また、税収の再分配も有効な手段です。日本でいう地方交付税のようなシステムを充実させれば、国有地売却というグレーな政策を取らずとも財源を充実させることができます。

早急に中央と地方の財務関係を整理しなければ、そう遠くないうちにバブルは崩壊する。地方官僚が中央に反旗を翻し、社会不安が深刻化する危険性すら否定できません。

もはや“頭ごなしのトップダウン”は成り立たない。習近平体制は前代未聞の難しい舵取りを迫られています。変化なくして時代に対応し続ける方法があるというなら、逆に教えて!!

今週のひと言



中国でも「中央と地方」の関係に



変化が求められています!

●加藤嘉一(かとう・よしかず)



日本語、中国語、英語でコラムを書く国際コラムニスト。1984年生まれ、静岡県出身。高校卒業後、単身で北京大学へ留学、同大学国際関係学院修士課程修了。2012年8月、約10年間暮らした中国を離れ渡米。現在はハーバード大学ケネディスクールフェロー。新天地で米中関係を研究しながら武者修行中。本連載をもとに書き下ろしを加えて再構成した最新刊『逆転思考 激動の中国、ぼくは駆け抜けた』(小社刊)が大好評発売中!

 



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