絶滅寸前の危機? クロマグロを増やす方法とは

週プレNEWS / 2012年12月27日 6時0分

山口県萩市の見島沖で行なわれた「萩マグロトーナメント」で今年優勝した俳優の松方弘樹さんが釣り上げたクロマグロは、8.5kg。数年前までは300kgを超えるサイズの大物が揚がっていたのだが……

寿司ネタの定番として知られるマグロ。だが、その“王様”であるクロマグロの数が世界的に減少している。日本近海も例外ではなく、近年、減少傾向が著しい東大西洋では漁を厳しく制限。その効果あってか、クロマグロの生息数は回復傾向にあると大西洋まぐろ類保存国際委員会の科学委員会が10月に発表した。

ならば、日本近海でも制限をかけたら、数が増えるのか。環境保全団体WWFジャパンの水産プロジェクトリーダー、山内愛子さんはクロマグロ保護の効果についてこう話す。

「大西洋で厳しい取締りが始まったのは2010年。その2年後に回復の兆しが見えた。たった2年でです。大西洋の二の舞いにならぬよう、日本近海や太平洋でも、規制したら数は増えるはずです」

だが、大西洋のクロマグロ事情に詳しい、日本かつお・まぐろ漁業協同組合、国際部長の益子久夫さんによると、漁獲制限には「何より密漁船根絶のための取り組みが重要」なのだという。

「大西洋クロマグロの漁獲枠は2006年、3万2400トンだった。しかし実際には5万トンの水揚げがあったといわれています。密漁船が1万8000トンも捕っていたのです。このままでは保護ができないので、2010年、漁船の数の制限、漁獲証明制度導入といった、密漁船根絶の取り組みを始めました。それでやっと数が増え始めた。密漁船を厳しく取り締まらないと、規制をしても無駄です」

それなら天然モノを漁獲制限している間は養殖モノを食べればいいのではないかと思ってしまうが、そこにも問題はある。マグロの養殖を研究する近畿大学水産研究所の宮下盛教授が語る。

「クロマグロの生態は、実はあまりわかっていません。今年になって、ようやく産卵場所を突き止めることができた。生態が解明されるのは、まだまだ先でしょう」

そのため、稚魚を捕まえて大きく育てる“畜養”のスタイルが養殖の現在の主流だという。だが、前出の山内さんは「畜養は、稚魚を大量に捕ってしまうので意味がない」と指摘する。

確かに、稚魚を根こそぎ捕ってしまっては全滅してしまう。この畜養問題で、政府が動きだした。

「農林水産省は10月、畜養マグロの養殖場の新設や、いけすの拡大を禁止する指示を出しました。同時に、天然のクロマグロの稚魚を捕ることを禁じました。私たちの研究所では、大人のマグロを捕獲して、卵を産ませて、ふ化させています。人工ふ化の稚魚であれば、畜養に使うことができます。現在クロマグロの人工ふ化の研究を行なう機関はほとんどありませんが、今回の決定で、大手の水産会社も人工ふ化の研究に本腰を入れ始めました」(宮下教授)

漁獲制限と人工ふ化による養殖。この両輪がうまく回り出すまで、日本近海における巨大クロマグロは消えるかもしれない。だが、回り始めたら、数年で数が回復。現在と同様、マグロが気軽に味わえる上、大物をバンバン釣り上げられる世の中になる可能性もある。すべては、経緯を見守るしかなさそうだ。

(取材・文/渡辺雅史[リーゼント]、写真提供/山口県萩市水産課)



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