『わたモテ』作者・谷川ニコが語る“非コミュの生きザマ”

週プレNEWS / 2013年1月13日 6時0分

マンガ『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』原作担当の男性(左)と作画担当の女性(右)のコンビである作者、谷川ニコ氏。今回の取材に際し、描き下ろしの自画像を寄せてくれた

コミュニケーション能力が足りないために、職場や学校などの輪に入れない。つまり“浮いている人”を「非コミュ」と言う。この苦しみにのたうち回り、全力でアサッテの方向へ暴走する少女を描いたマンガ『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』(略:わたモテ)が1、2巻の累計発行部数で50万部を突破するヒットになっている。作者・谷川ニコ先生に本誌の「非コミュ編集者」が突撃する!

■「モテない」なら同性にも好かれてはいけない!

―いきなりですが、僕の話を聞いてください。僕の学生時代は“暗黒”でした。クラスでも部活でも、浮いてしまいがち。友達がいなかったわけじゃないんですが、ひとりの時間のほうが圧倒的に長かった。

大学に通うため上京、ひとり暮らしを始めたのですが、最初は誰とも話すことがない日々が続きました。でも、孤独に慣れたかというとそんなことは全然なくて。「誰でもいいから、僕に構ってくれ!」と常に思っていました……。そんな僕にとって『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』(以下、わたモテ)は笑えるのですが、それ以上に「心に刺さる」と言いますか、学生時代を思い出して、ちょっと正気で読んでいられません。

原作(男性)&作画(女性) ありがとうございます。

―やはり、「わたモテ」は原作の方の経験がベースになっているんですか?

原作 経験というより、心の中でいろいろ考えていることを、吐き出している感じです。僕は非常に僻(ひが)みっぽい性格なので。

―学生時代はいかがでした? やっぱり……。

原作 “ぼっち”でしたよ。特に高校時代は友達がいなくて、ずっとひとりでキツかったです。まあ、大学でもひとりだったことは変わらなかったけど、あのときの“ぼっち”はすごく楽でした。

―それは、わかる気がします。たいていの大学生は時間があり余っていますし、外に出ていけば学校以外の社会がどこにでもあることがわかります。

原作 僕は、小中高とまったく勉強をしなかったので、大学では勉強ばかりしていました。授業がないときは主にバイトです。

―作画の方はどうでした?

作画 同性の友達すらほとんどいませんでした。なぜか、女子の間には「同性に人気がないと価値がない」という雰囲気がありますし、たまにテレビとかで「同性に好かれる女は男にモテる」みたいなことを聞かされると、じゃあ私は……と絶望してしまうことがあります(笑)。

―学校に同性の友達がいないというのは「わたモテ」のヒロイン・黒木智子もそうですね。

原作 1巻に智子の中学時代の女友達(ゆうちゃん)が登場しますが、本当はこのコも出す予定はなかったんです。でも、編集さんから「友達がまったくいない女のコなんて、かわいそうにもほどがある!」と言われて……。

作画 原作の彼は、「友達がいるなんて“救い”があってダメだ」と(笑)。

原作 よくマンガで「モテない」と言いながら、なんだかんだいって、同性にも異性にも「モテてる」キャラクターっているじゃないですか。嫌いなんですよ、そういうの。

―徹底してますねえ。

原作 とりあえず、中学時代にそのコが智子と共通の趣味を持っていたから友達になれた、という線に落ち着きました。

―しかし、そのエピソードは実はゆうちゃんが高校デビューを果たして、「彼氏持ちのリア充」になっていた……というオチがつきます。智子は、唯一の友達とすら距離を感じてしまい、ますます「ひとりの世界」に閉じこもる……本当に徹底していると思います(笑)。

■「読者を苦しめようとは思ってないです」

―ネットで「わたモテ」の感想を拾っていると、智子を「かわいい」と評している読者をよく見かけます。でも、僕は正直に言うと、まったく理解できないんです(笑)。確かに、見た目に関してはかわいいと言えなくもないですが……。

作画 最初は、かわいくなかったんですけどね。背が高くて、三白眼で、胸もない。このことに関しても、編集さんから「もっとかわいくしてくれ」とオーダーが入り、こんな形に。ただ目のクマだけはキャラ立ちのために、残してもらいました。

私としては、もっとヒドイ感じにしたかったんですけど、まあ、描きながらそのうちヒドくしていけばいいかと(笑)。

―「かわいくないヒロイン」を描くことに力を注いでいるマンガ家さんは、なかなかいないと思います(笑)。

作画 もう、隙がないくらいに、徹底的にかわいくなくして、それでも読者の方たちに「かわいい」と思ってもらえるような……智子をそんなキャラクターにしたいです。

―おふたりとも容赦ないですよね。絵も話も智子をどうしようもなく“痛く”している。ここまで追い込まなくても……と少し思ったりします。

原作 物語に関しては、よく言われます(笑)。僕としては、そこまで追い込んでいるつもりはないんですが。

作画 原作は普通の人にとって“痛い”ことを痛いと感じないのかもしれない(笑)。ただ、私たちは「読者を苦しめよう」とはもちろん思ってなくて。読者の方たちがさまざまな感情を入れて読んでくれるので、笑えたり、つらかったりと読み方にも違いが出てくる。それだけなんです。

―とはいえ、「笑える」という読み方をする人に対しては「智子を笑うんじゃねえ! このリア充が!」とディスりたくなる(笑)。「わたモテ」は現在進行形の非リア充にとって非常に身につまされる作品なんです!

作画 まあ、こちらとしては「完全に自分とは関係ない」という感じではなく「ちょっとわかるかも」というぐらいの共感さえあれば、それで十分です。

■「智子ひとり」で自己完結する物語

―ここまで、智子のことを悲惨だと言ってきましたが、一方で「まだマシなほうなのかもしれない」とも思っています。というのも、智子は基本的に“ぼっち”じゃないですか。

原作 そうですね。

―これが中途半端に友達をつくって、そのコミュニティに入ると、今度はその中で人間関係を維持するために、あれこれと気を使わなくてはいけない。それが自然にできる人こそ「リア充」なんですけど、智子ができるとはとうてい思えません。きっと、「キョロ充」(*)になって今以上に“痛く”なるはずです。

*無理をしてリア充集団の一員であることにしがみつこうとしている人のこと。「きょろきょろ」と常に人の目を気にしていることから、こう呼ばれる

作画 智子は、本当に誰の意識からも外れているんです。だから、クラスメイトから「あのコ、いつもひとりだよね」と気にしてもらうことすらないし、一方でばかにされることもない。

―智子にとっては、やっぱりつらいですね(笑)。ただ、少し引いて見てみると、それはそれで生き方としてアリだな、という気はします。

原作 でも、智子が「キョロ充」になるのも面白いですね。今後の展開で、もしかしたら……。

―やめてください! 痛すぎて「わたモテ」がもう読めなくなってしまう!

原作 (苦笑)

作画 とりあえず、今のところ智子に急接近してくるようなキャラクターの登場予定はありません。

原作 作品の方向性がまだハッキリと決まっていなかったとき、智子に絡んでくるような新キャラを出そうかなとは思ったのですが、あまりうまくいかなかったので、結局やめました。「わたモテ」は智子がひとりで自己完結するマンガですし。

―作画担当として、新キャラを出したいという気持ちはあるんですか?

作画 原作のネタが尽きない限りは、智子ひとりに戦わせたいなと思っています。智子に関わるのは読んでくれる方だけでいいんです。

―最後に……智子は幸せになれますか?

原作&作画 (笑)

―勝手なことを言うと、読む人が……というより僕が「智子みたいな生き方でもいいんだ」と思えるような終わり方をしてほしいなと。

原作 そうですね。いったい何が「幸せ」と呼べるのかはわかりませんが、少なからず、完全なバッドエンドにはしないと思います。自殺とか、そういうことはしません(笑)。

―非コミュに幸(さち)あれ!ってことで!

●谷川ニコ(たにがわ・にこ)



原作担当の男性と作画担当の女性のコンビ。2008年に『ちょく!』(スクウェア・エニックス)を発表し連載デビュー。本作は初のヒット作品

■『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』(略:わたモテ)とは?



高校生になったら、自然とモテるであろうと勝手に期待していた黒木智子。意気揚々と入学したが、それから2ヵ月。智子は彼氏どころか友達すらできないのであった。彼女は現状をなんとかしたいと思いながらも、その行動や努力は見当違いなモノばかり。そんな女子高生の七転八倒を描いた“痛い”コメディだ。スクウェア・エニックスより、現在1~3巻が発売中。各500円



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