緊迫の「対中国防衛最前線」在沖縄自衛隊の現在

週プレNEWS / 2013年1月19日 6時0分

空自南西航空混成団。エアブレーキを立て着陸するF-15J。尾翼の鷲は百里基地(茨城)から移転してきた第204飛行隊のマークだ

日中がにらみ合う尖閣諸島を所轄するのが沖縄県。地域の緊張の高まりとともに、沖縄に配置されている各自衛隊もその陣容を強化している。陸海空でフロントラインに立つのは、どのような部隊なのか?

■那覇基地の海自と空自はフル回転

「私は以前に他県で勤務していたとき、ロシアの艦艇を追っかけて7、8時間飛んだこともありますが、ここのハードさはそれ以上。沖縄に転勤になって紺碧(こんぺき)の美しい海を期待していたのですが、ここ数ヵ月は12、13時間の哨戒(しょうかい)飛行でクタクタになり、それどころではありません」(3尉・27歳)

「9月以降、フル稼働の任務でほとんど休みがとれません。もう中国の艦艇は領海に近づかないでほしい」(1尉・35歳)

これは、沖縄で中国船を警戒する海上自衛隊員たちの声だ。

現在、領海侵犯を繰り返す中国公船に対し、海からは主に海上保安庁が対処している。海自は長崎県・佐世保基地の第2護衛隊群が対応することになっており、沖縄に主力艦艇があるわけではない。代わりにあるのが、P-3C哨戒機を中心とする航空部隊だ。

那覇基地の海自第5航空群は、昨年6月にソマリア海賊対策のため、ジブチに隊員とP-3C2機を派遣した。帰ってくると、今度は尖閣問題が待ち受けていた。那覇基地は民間(那覇空港)と共同で運用しているが、頻繁なP-3Cの離発着で、もはや飽和状態だ。

さらに、同じ滑走路を使う航空自衛隊も大忙しとなっている。

昨年10月以降は、防空識別圏に近づく中国機へのスクランブル発進が急増。24時間態勢でF-15J戦闘機が警戒にあたるなか、昨年12月13日には、ついに中国国家海洋局の所属機が領空を侵犯した。

「プロペラ機とはいえ、レーダーで捕捉できなかった。浜松にあるAWACS(早期警戒管制機)が、なぜ那覇基地にないのか疑問です。E-2C(早期警戒機)の部隊も常駐させて、数も増やしてほしいですね」(2曹・30歳)

「この侵犯について先に海上幕僚監部に情報が上がったため、空自は何をしているんだと叱られました。那覇から尖閣までは片道424kmあり、周辺を2周すると残燃料を考えて帰投しなければなりません。そこで最近は増槽(追加燃料タンク)を2本つけて飛んでいますが、かなり速度が遅くなってしまいます」(3佐・33歳)

本誌が取材中も、増槽を2本つけた4機のF-15Jが爆音を轟かせて飛び立っていった。帰投は約1時間半後。おそらくCAP(戦闘空中哨戒)任務だと思われる。

昨年12月は、中国対策に加え、北朝鮮が弾道ミサイルを発射したために佐世保や舞鶴基地(京都)からイージス艦が出動。

地上で最終迎撃をするパトリオットPAC3のミサイル部隊も、本土から沖縄本島、石垣島、宮古島に緊急展開した。ミサイル部隊は空自の管轄だが、それを運ぶのは海自の艦艇、そして現地で警護するのは陸上自衛隊の役目だ。

■旅団に格上げされた陸自部隊が島を守る

沖縄の守りを固めるのは、西部方面隊隷下(れいか)の陸自第15旅団。司令部は那覇駐屯地に置かれている。

「PAC3の配備に合わせて石垣島に展開するとともに、県や関係市町村には連絡官として隊員を派遣しました。24時間の即応態勢で勤務したため、家に帰れない隊員が続出。もちろん、外出も自粛で酒も飲めません」(2尉・30歳)

「ここ数年にわたる中国の台頭などで、日本の防衛政策が南西方面重視に変わったことは当然の流れでしょう。2010年にそれまでの第1混成団から旅団に格上げされ、隊員も現在までに約300人増えて2100人になりました。そのうち、地元出身者や、地元女性と結婚した本土出身の隊員(ウチナームーク)は65%を超えており、地の利を生かした展開ができます」(2曹・24歳)

「いざ中国との有事になれば、最前線となるのはこの部隊です。こういうご時世なので、旅団規模から師団規模(5000人以上)に増やしてほしいですね。そうすれば現在はひとつだけの普通科連隊が3、4個は編成できますから。

これからは自衛隊が海兵隊機能を持つことも必要でしょう。自衛隊=公務員の感覚ではもう務まりません。手始めに、与那国島、石垣島、宮古島などの離島に、それぞれ約100人規模の警備隊を駐屯させるべきです」(准尉・47歳)

中国の脅威を前にして、隊員たちの意識も変わり始めている。

「過去に日米共同訓練を2回経験していますが、できれば毎月でも行なって、スキルを磨くべきです。

2008年からキャンプ・ハンセンなどで小規模訓練や基本訓練はできるようになりましたが、大きな演習は県内ではできず、大分県の日出生台(ひじゅうだい)演習場や熊本県の大矢野原演習場などで行ないます。その間沖縄を離れるので即応態勢という点では問題がありますね」(1尉・28歳)

最近、那覇基地につながる関係者以外立ち入り禁止のエリアで、基地の様子をうかがう不審な人物がしばしば見られるという。滑走路が一望できる高い丘には、中国人観光客も多く訪れる。

沖縄は、中国と対峙しているニッポンの“最前線”。そこには、本土にいるだけではわからない緊張感が漂っている。

(取材・文/本誌軍事班[取材協力/世良光弘 小峯隆生] 撮影/世良光弘)



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