セルジオ越後の一蹴両断! 第290回「大阪の体罰事件から日本のスポーツ教育の現実に目を向けよう!」

週プレNEWS / 2013年1月24日 15時0分

折しも全国高校サッカー選手権が行なわれていた最中に、残念なニュースが飛び込んできた。大阪のバスケットボール強豪高校で、顧問の体罰を受けた生徒が自殺してしまった事件のことだ。自ら命を絶つ決断をするまでに追い詰められた生徒、遺族の気持ちを思うと本当に心が痛むね。

それにしても、この事件についての「こんなひどい体罰が行なわれていたのか」「許せませんね」という紋切り型の報道には違和感を覚える。

だって、以前よりもかなり減ったとはいえ、体罰自体は昔から日本の教育に存在してきたもの。いきなりその学校だけで起きたわけじゃない。今回は生徒の自殺でひどい体罰が明るみに出たわけだけど、もし全国すべての学校の部活を調査したら、もっとひどいケースもたくさん出てくるはず。それをすべて処分するなら、あらゆる競技の、あらゆる強豪校の部活が成り立たなくなると思うよ。サッカーではないけれど、プロスポーツの世界にも、いまだに“鉄拳制裁”をする名物監督がいるくらいだからね。それを黙認しておきながら、今回の一件だけで体罰の問題を語るのは無理がある。

僕は日本に来て40年。少年サッカーの指導で各地を回って、実際にそういう現場を目撃したこともある。最近でこそ指導者の意識も変わってきて、練習中に水を飲むことも当たり前になったけど、それでも丸刈りや声出しの強制、フラフラになるまで追い込む練習なんて、ブラジル人の僕から見たら体罰と同じ。世界的にもなかなか理解されにくい。僕が知る限り、学校スポーツの現場でそんな指導が行なわれているのは日本と韓国など東アジアくらいだ。ブラジルで先生が手を上げようものなら、生徒が殴り返すよ。

ただ、この問題が難しいのは、日本では体罰が長い歴史を持った文化になってしまっているということ。熱血指導と紙一重で、時に美化され、評価され、社会や保護者もそれを求めてきた側面がある。実際、生徒の自殺後、学校側がバスケ部のほかの生徒と保護者に行なったアンケート調査では「また顧問の指導を受けたい」という回答が並んでいたそうだ。そのことからもわかるように、一時的に「体罰は何があっても許すな」と盛り上がったとしても、ゼロか100かでいきなり根絶するのは難しいと思う。

サッカーの場合は海外同様、Jリーグ各チームの下部組織などのクラブチームが増えてきた。指導体系もしっかりしているし、そこで体罰があるとは聞かない。万が一、体罰があったとしても、選手は辞めて違うチームに行くこともできる。逃げ道がある。

また、クラブはセレクションに受かった選手だけしか入れないから、補欠のまま1試合も出場できずに引退するということもない。クラブチームがもっとたくさん増えれば、選手が自分のレベルに合ったチームで楽しくプレーできるようになる。だから、日本もスポーツ強化の現場を、部活からクラブに移行するのが理想だとは思う。

とはいえ、現実問題として考えると、日本では私立校が力を入れる部活のほうがクラブよりも予算を持っていて、そこに身を置くほうがトップ選手への近道。進学や就職にも強い。それを変えていくのは簡単じゃないよ。だからこそ、今回の事件をきっかけに、あらゆる角度から検証し、長期的に議論を重ねていかなければいけないんだ。

(構成/渡辺達也)



【関連ニュース】

週プレNEWS

トピックスRSS

ランキング