在外邦人を危険から救出する“法律”も“組織”も日本には存在しない

週プレNEWS / 2013年2月15日 12時0分

強行救出作戦に威力を発揮する米陸軍の装輪装甲車・ストライカー。空輸され、緊急展開する。テロや地域紛争に対して、数タイプが開発されている(写真は兵員輸送バージョン)

アルジェリア人質事件は、「在外邦人の安全確保」という課題を日本に突きつけた。

今回のケースは同じく自国民が人質となったアメリカ、イギリス、フランスなど各国とも打つ手なしだったが、今後、また日本人が人質に取られるような“不測の事態”に対応するためには、どんな準備が必要なのだろうか?

大規模な救出作戦や、危険度の高い地域であればあるほど、国家が救出に乗り出すしかない。アメリカやイギリスなどは、そのために「特殊部隊」を保有している。元米陸軍大尉の飯柴智亮(いいしば・ともあき)氏はこう説明する。

「アメリカには、国外で自国民が避難、脱出の必要な状況に陥った際、軍が総力を挙げて支援するという法律と、その行動を定めたマニュアルがあります。これをNEO(非戦闘員救出活動作戦)といいますが、日本も在外の自国民を救出するには、その立案が絶対に必要です。相手が武装しているわけですから、当然、そこにはROE(交戦規定)も含まれます」

アメリカの場合、外国で自国民が人質になると、このNEOに沿って奪還作戦が開始される。『最強!特殊部隊スーパーファイル』(竹書房)の著者であるフォトジャーナリストの笹川英夫氏がさらに詳しく説明する。

「事件発生後、直ちに担当地域のCIA情報分析官が招集され、状況分析が進められます。それをもとにCIA長官が大統領に現状を報告すると、ホワイトハウスに各大臣や長官、軍統合幕僚長が集められ、緊急国家安全保障会議が開かれる。ここで人質奪還作戦の発動が決定されます」

こうして作戦遂行指揮チームが任命され、特殊作戦群隷下の特殊作戦コマンドが詳細な作戦を立案し、遂行する。

「大規模な作戦になると、第75レンジャー部隊、第160特殊作戦航空連隊(ナイトストーカーズ)がサポートし、対テロ作戦の隠密部隊デルタフォースも参加。総勢500名以上による作戦が開始されるのです」(前出・笹川氏)

一方、日本の自衛隊法はそもそも「在外邦人の救出」を想定していない。現状、自衛隊はどのような訓練をしているのだろうか? 軍事ジャーナリストの世良光弘氏はこう語る。

「2009年に陸上自衛隊の中央即応集団が千葉・木更津のヘリ駐屯地で行なった『邦人輸送』の訓練を取材しました。そのときは、パスポート検査などを自衛隊がどこまで代行できるかなど、あくまでも“安全確保後の輸送”を想定していました。やはり“救出”は法整備がなされていないため、現状では難しいと言わざるを得ないのです」

だからこそ、アルジェリア人質事件を受け、自民党の石破茂幹事長はこうコメントしたのだ。

「今の自衛隊法では、海外で動乱が起こり、命からがら空港などに逃げてきた日本人を自衛隊の航空機などで助けに行くことができない。『安全が確保されたら輸送する』というのはおかしい」

日本が「救出作戦」を発動するとなると、自衛隊法の整備に加えて国家レベルの組織づくりが不可欠。アメリカ並みの態勢を整えることはあらゆる意味で難しいが、“もしも”のとき、現体制では在外邦人を救えないことは明らかなのだ。

(取材協力/世良光弘、小峯隆生、写真/笹川英夫)

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