なぜ日本の店には“おなじみのBGM”が流れているのか?

週プレNEWS / 2013年2月27日 17時0分

店舗BGMの源流は軍歌にある、という唐沢俊一氏。「軍隊や工場などで、昔から音楽は利用されてきました」

百貨店で、家電量販店で、はたまたファストフード店で、日本の繁華街にはありとあらゆるBGM(バックグラウンドミュージック)があふれている。

なかには企業オリジナルのものがあり、思わず口ずさんでしまうような佳曲もある。一方、モノによっては「背景音楽」とは名ばかりで、グイグイ前に出てくる主張の強いものまであったりする。しかし、そもそも店内でBGMを流すことが、どうして当たり前のようになっているのか。

雑学に詳しく、店舗BGMの歴史にも一家言ある作家の唐沢俊一氏は、BGMの起源がなんと「軍歌」にあると主張する。

「音楽がかかっていると、そのリズムに人間は鼓動を合わせようとする。『リズム同調効果』ともいい、集団行動を画一化させる際に有効で、軍隊における行進曲などはまさにこの効果を利用したものです。また軍歌は歩調を合わせるためだけでなく、集団の士気を高める効果もある。そして、これらの効果は軍隊だけでなく工場労働の現場でも利用されていました」

その歴史は、90年近く前のアメリカから始まっている。

「大量生産・大量消費の生活様式が確立した1920年代のアメリカで、大型工場など労働の現場で生産性を上げるためにBGMが流されていたんです。同じように、消費者の購買意欲をかき立てるために、意識的に音楽が使われるようにもなったのもこの時期なんですよね」(唐沢氏)

くしくも、日本でもほぼ同じ時期に店舗BGMが使用されるようになったといわれているとか。『タイアップの歌謡史』(洋泉社)の著者で広告業界に詳しいライターの速水健朗(はやみず・けんろう)氏はこう語る。

「日本では、店舗の集客に音楽を利用するという文化が、大正時代から定着しているんです。明治・大正期の三越少年音楽隊は、当時の子供を百貨店に興味を持たせるため結成された存在でした」

ただし、このときに流れていたのは三越オリジナルの曲ではなかった。日本でオリジナルの店舗BGMが広く使われるようになったのはそれよりずっと後のことで、テレビのCMソングがスタートしてからだという。

「日本の初期のCMソングは、企業名や商品名を連呼する単純なものばかり。まずは覚えてもらうことが重要だった時代でした。そこから次第に洗練されたイメージソングやタイアップソングと進化して、商品のイメージアップを狙う方向にいくわけですが、ドンキ(ドン.キホーテ)の歌に代表されるような店舗型BGMは、明らかに先祖帰りしています。一周して、単純なほうが受けているということです」(速水氏)

時に脳内をヘビロテし、時にイラッとくる店舗内のBGMには、意外な歴史が隠されていたのだ。

(取材・文/コバタカヒト)

■週刊プレイボーイ10号「気になる イラッとくる 店舗BGMランキング」より

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