日米トップクリエイター対談! クエンティン・タランティーノ(映画監督)×猪子寿之(チームラボ代表)「異種格闘リーダー論」

週プレNEWS / 2013年3月10日 6時0分

『ジャンゴ 繋がれざる者』が公開中のタランティーノ監督と猪子寿之氏。とにかくテンションの高い監督に引っ張られ、猪子氏も一緒に「ハイ、ポーズ!」

ウェブサイトや商品、アートや映像などさまざまな分野で革新的デザインを発信するクリエイター集団、チームラボ。その代表である猪子寿之が、ハリウッドきっての鬼才、クエンティン・タランティーノ監督と対面。リーダー論をゆる~く語る!

■『ジャンゴ』に打ちのめされすぎた

タランティーノ(以下、QT) 猪子サンは俳優かい? 『殺し屋1』のキャラクターみたいだね(笑)。クリエイターって聞いたけど、どんな作品を作っているんだい?

猪子 デジタルアートです。

QT グッド!(テンション高い)。今回の対談の前に、俺の新作『ジャンゴ 繋(つな)がれざる者』を観てくれたんだよね。

猪子 ええ、期待以上に面白かったですよ。2時間45分もの大作なのに一場面ごとにものすごく凝ってるし、すべてがカッコいい! 黒人奴隷からガンマンになった主人公のヒーロー像も、インパクトありました。

QT サンキュー!(とにかくテンション高い)

猪子 その一方で、人間のおぞましい部分というか、誰しも持つ偏見や差別とか、普段は自分にウソついて気づかないようにしている暗部を目の前に出されたようなショックもあって、その意味では非常に重たかった。

QT それはすごい褒め言葉だよ!(笑)。俺は前から、アメリカに奴隷制度があった時代の黒人たちの映画を作りたかったんだ。ただ100パーセント史実に基づいた歴史ものとして作ってしまうと、今の観客には題材への距離ができてしまうんじゃないかって。だから西部劇という、みんなが慣れ親しんだジャンルの形式で作ることによって、エキサイティングなキャラクターや物語を生み出すことができるんじゃないか、逆に社会的なテーマにも深く突っ込んでいくことができるんじゃないかって考えたんだ。

猪子 なるほど。僕はこの映画に打ちのめされすぎて、仕事の打ち合わせ中、「ちょっと俺、今、無理なんだけど……。当分、仕事とかできないかもしれない」って。映画の重さをズンと自分の中に抱え込んじゃったんです(笑)。でも、僕のようにダウンしちゃう人もいれば、最高に興奮する人もいるのは面白いですね。

QT 確かに猪子サンのように、重すぎるって感じる人もけっこういたんだよね。でも、映画っていうのは、どの見方も間違ってるわけじゃない。俺としては、いろいろな形で自分の映画を受け止めてもらえるのがうれしいんだ。

猪子 重すぎるっていうのは、悪い意味じゃないんですよ。

QT わかってる、わかってる。

猪子 僕は映画のラストのくだりを観ながらずっと泣いていたんだけど、周りのお客さんの中には同じ場面で笑っていた人もいたからね。とにかく「かっけー!」のは間違いない!

■リーダーの条件は“ビジョン”の有無?

猪子 僕は、監督が作品をクリエイトしていく過程に興味があってお聞きしたかったんです。僕の場合、最初から学生仲間の5人組で会社(チームラボ)をスタートしていて、クリエイションもチームみんなで考えるんですけど、監督は自分のビジョンが真ん中にドンとありますよね?

QT そうだね、脚本は絶対に自分ひとりで書くよ。でも、映画はもちろんチームと共に創るもので、結局はコラボレーションの芸術だからこそ、自分だけで脚本を書く時間がスペシャルなんだよね。書き上がるまでは、ほかの人には読ませない(笑)。そして完成した時点で初めて脚本をほかの人間に見せて、コラボレーションが始まる。それから、チームワークの仕事に移るわけさ。

猪子 監督の映画は、ありとあらゆる細かいところまで凝っているし、重たいシーンをクールに撮ってみたり、何重にもクリエイションが積み重ねられているように感じるんです。

QT そうだなあ……。手順としては、まず頭の中からなんとなくストーリーが浮かぶ、キャラクターが生まれる。執筆は「彼らはいったい何者なのか?」というキャラクターを知っていくプロセスなんだ。自分では、だいたい物語の中間地点くらいまでしか方向性が読めない。そこから先はキャラクターが勝手に動きだし、生きて、しゃべって、その行動を俺が記録係として書き留めているような感じになる。だから最初に自分が想定していた物語とは全然違ったものになるけど(笑)、この作業がまたエキサイティングなのさ! もちろん作り手によっては、自分で完全に全体をコントロールしている人もいるかもしれないけどね。

猪子 僕自身のクリエイションのスタイルとしては、「チームラボ」というチームで考えるんです。自分ひとりで考えることはほとんどない。もっと言うと、僕らの場合は何かを作り始めたときに、僕だけじゃなく誰も答えを持っていないことがある。だけどプロセスのなかでメンバーがいろいろな発見をして、最終的にみんなが自分たちの想像できなかったところに行き着いていたら……それがうまくいったときかな。



QT ちなみに、会社の代表っていうのは、映画製作でいう「監督」に近いポジションと考えていいのかい?

猪子 いや、僕はタランティーノ監督のようなビジョンは全然見えていないし(笑)、それを伝えるって感じでもないし……。僕は、相当みんなに助けてもらって生きているタイプのリーダーです(笑)。

QT 猪子サンはチームワークで物を作ることにデメリットを感じることはあるかい?

猪子 僕らの場合は、作業しているうちに行き詰まっちゃうことがあるんですよ。……そうそう、『ジャンゴ』のメイキング映像を観たんですけど、テイクを撮り直すときにみんなで何か楽しそうに叫んでいましたよね。

QT イエス! 俺が現場でまず確認しておきたいのは、「映画を作れるというのは大変な特権なんだ」ってこと。でも、なかには(その特権の幸福を忘れて)単なる「お仕事」になっちゃってる人もいると思う。でも俺の映画のスタッフには、最高のアーティスティックな映画を創るため、完成させるために集結しているんだって意識を忘れてほしくないんだよね。

だから、とりあえずそこそこのOKテイクが撮れた後も、俺が「ワンモア(もう一回撮るぞ)!」って言うと、スタッフは「ホワイ(なぜ)?」と返す。そうしたらみんなで、「せーの、『なぜなら俺たちは映画を作るのが大好きだから!』」と叫ぶんだ。それが俺たち、クレイジーなさすらい映画人仲間の合言葉なのさ(笑)。

猪子 監督自身がチームのムードメーカーなんですね。僕はそういうの、けっこう苦手だから見習いたい(笑)。

■“猪子監督”が夢見たテーマとは……!

猪子 監督の場合はあくまで監督自身が求心力になってるけど、うちはチームラボっていう「場」が求心力。ひとりじゃできないことでも、得意なほかの誰かが埋めていくって感じかな。

QT それがチームワークの醍醐味だと思うよ。映画作りも基本は同じさ。俺がまだ監督デビュー前の頃に、『未来世紀ブラジル』のテリー・ギリアム監督に質問する機会があったんだ。「あなたの映画には独特のビジョンがある。どうやってそれを実現するんですか?」って。そしたら「ほかの部門の仕事を自分がやれるようになる必要はない。それぞれの部門で最高の才能を持った人たちを雇えばいいんだよ。ただ監督は、彼らに自分のビジョンをうまく伝えることができなければいけないよ」と教えてくれたんだ。

猪子 適材適所で専門職の人たちと組むことで、自分の考えられるクリエイションのレベルも上がってくるっていうのは、たぶん同じですね。

QT 必ずしもリーダー自身が求心力になる必要もないんだよ。



猪子 でも、映画作りって大変そうだなあ。僕も一本だけ撮ってみたいって考えたことはあったけど。

QT どんな作品を作りたかったんだい?

猪子 『恋する惑星』とか『天使の涙』とか、あの返還直前の香港の街自体が持つ魅惑みたいなものが好きだったんですよ。同じように、10年くらい前の東京は、世界で一番魅惑的だったと思うんです。そこの「場」で生きる若者たちの青春映画を撮りたかった。

QT 『恋する惑星』? ウォン・カーウァイ監督のか? それ、アメリカで配給したのは俺だぜ!

猪子 えっ、そうなんだ!

QT 俺が一時期ハマっていた日本のカルチャーは、エクストリーム・バイオレント・トーキョー・ポップの映画群だね。ものすごくバイオレントなホラー映画が登場するたびに「あんなことやっていいの!? 日本ってすげえな!」って驚いてたよ(笑)。それらがアメリカの若手監督にもすごく影響を与えて、いわゆる「トーチャー・ポルノ(拷問ポルノ)」に近いホラーに応用されていったんだ(笑)。

猪子 今の僕には映画作りはちょっと無理なんで(笑)、監督にお任せします!

QT OK、任せとけ!

(構成/森 直人 撮影/高橋定敬)

●猪子寿之(いのこ・としゆき)



1977年生まれ、徳島県出身。2001年、大学卒業とともにチームラボを創業。『レザボア・ドッグス』に影響され、会社立ち上げの際は全員黒のスーツでそろえたという

●クエンティン・タランティーノ



1963年生まれ、アメリカ・テネシー州出身。92年、『レザボア・ドッグス』で監督デビュー。今回、『ジャンゴ 繋がれざる者』で2度目のアカデミー賞脚本賞を受賞

■映画『ジャンゴ繋がれざる者』全国公開中



奴隷解放宣言以前のアメリカ南部を舞台に描く、娯楽大作アクションかつラブストーリーという、奇跡の西部劇。本年度のアカデミー賞脚本賞&助演男優賞(クリストフ・ヴァルツ)を受賞。



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