加藤嘉一「日本の未来を輝かせるためのカギは『外交』と『教育』である」

週プレNEWS / 2013年3月11日 15時0分

国際教養大学の学長である中嶋嶺雄さんの訃報に接し、謹んで哀悼の意を表します。中嶋さんの功績と、その先に見える日本の未来について考えてみたいと思います。

去る2月14日、公立大学法人国際教養大学の学長である中嶋嶺雄(なかじまみねお)さんがお亡くなりになりました。

中嶋さんは、行動で理念を体現してきた稀有な存在でした。

ぼくにとって、中嶋さんとのつながりは2点あります。ひとつは、中国問題研究の大先輩であるということ。中嶋さんは国際社会学者として、文化大革命時代から中国の研究に取り組み、多くの著書を発表されました。約10年前、ぼくは高校卒業後に北京大学へ留学し、本格的に中国と関わるようになりましたが、容易に理解できない多面性を持つ中国を知る上で、中嶋さんの著書から貴重なヒントをいただきました。

もうひとつは、ぼくがホストを務めるテレビ番組『加藤嘉一流』(BS-TBS)に、ゲストとしてご出演いただいたこと。このときは中国問題というよりも、国際教養大学の学長としての中嶋さんに、教育問題についてお話を伺いました。

秋田市に2004年に開校した国際教養大学は、不況にありながら高い就職率を実現し、全国で注目を浴びています。ほとんどの授業を英語で行ない、在学中に最低1年間の海外留学が義務づけられています。

「英語をはじめとする外国語の卓越したコミュニケーション能力と豊かな教養、グローバルな専門知識を身に付けた実践力のある人材を養成し、国際社会と地域社会に貢献すること」

国際教養大学が掲げるこの理念を牽引していたのが、開校時から学長を務めていた中嶋さんなのです。日本の未来を輝かせるためのカギは「外交」と「教育」であるというのがぼくの信念ですが、両分野を股にかけるエキスパートとして、中嶋さんほどアクティブに理念を実践された日本人をぼくは知りません。

私立ならまだしも、公立大学でこのような革新を起こすというのは、日本独自の制約やしがらみも多く、困難を極めるチャレンジだったのではないかと推察します。中嶋さんが中国と向き合った自身の生き方を通じて、グローバルな視点を持つ人材を育成すべきだという信念をお持ちだったからこそ、国際教養大学は全国の企業から注目される学校へと進化したのでしょう。

実際に同大学の学生と話をしたこともありますが、テキパキと論理的に自分の意見を述べることができ、知識も豊富で英語も堪能。日本の国益に資する人材を育てておられるなと感服しました。

残念ながら、日本のほとんどの大学は“就職予備校”と化していますが、国際教養大学では、全日本人学生が最低1年間、外国人留学生と共に寮生活を送ることになります。クラシック&ダイナミックな図書館は24時間利用可能。学生が自由自在に勉学に取り組める環境が設けられている。大学生の特権とは、この「自由自在」ということだとぼくは考えています。中途半端に社会と接したような気になることなく、自らの内なる声に従って過ごす―それこそが青春時代。国際教養大学の学生には、ぜひ先駆者としての自覚を持って、世界へと羽ばたいていってもらいたいです。

ぼくの母校である北京大学も、基本的には全寮制でした。ほかの学生と切磋琢磨しながらの共同生活は、ぼくに“本当の自由”を教え、世界観を広げてくれた。クローズドな環境だからこそ自由な議論、柔軟な想像力が生まれる。日本には合宿という文化がありますが、国際教養大学のように、寮生活を義務づけ、外国人留学生と共同生活を送らせる大学がもっとあっていいと思います。

今後、ぼくは中嶋さんという大先輩がやろうとしてきたことを総括し、自分なりの「外交」と「教育」を行動で示していきたいと思います。この両分野よりも日本にとって死活的に重要な課題があるというなら、逆に教えて!!

●加藤嘉一(かとう・よしかず)



日本語、中国語、英語でコラムを書く国際コラムニスト。1984年生まれ、静岡県出身。高校卒業後、単身で北京大学へ留学、同大学国際関係学院修士課程修了。2012年8月、約10年間暮らした中国を離れ渡米。現在はハーバード大学ケネディスクールフェロー。新天地で米中関係を研究しながら武者修行中。本連載をもとに書き下ろしを加えて再構成した最新刊『逆転思考 激動の中国、ぼくは駆け抜けた』(小社刊)が大好評発売中!

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