2045年にはコンピューターの能力が全人類の知能を上回る?

週プレNEWS / 2013年3月12日 12時0分

松田卓也氏が期待する未来の技術は「コンピュータに論文を書いてもらうこと(笑)」だという

2045年にはコンピューターの能力が全人類の知能を上回り、そこから予測もつかない社会がやってくる―。こんな衝撃的な説が、最先端のITや科学の現場では当たり前のように受け入れられているという。『2045年問題 コンピュータが人類を超える日』は、この「2045年問題」と未来の社会の姿を、豊富な実例を紹介しながら予測する。著者の松田卓也氏に聞いた。

―「2045年問題」は、本当に起こり得ることでしょうか?

松田 確実性が高いと思います。この説を最も盛んに論じているのは、人工知能研究者/未来学者のカーツワイルという人なんですが、彼は「ムーアの法則」を論拠にしている。「ムーアの法則」とは、“コンピューターの進化速度は、18ヵ月ごとに2倍になる”というもので、現在までほぼそのとおりに進んでいます。チェスや将棋ではすでにトップクラスの人間がコンピューターに負けました。またアメリカでは『ジェパディ!』という常識を問うクイズ番組で、IBMの人工知能が人間のチャンピオンに勝ちました。これは人間のように音声で解答します。

―知能を問うものや特定のゲームにおいては、すでにコンピューターが人間を上回っている、と。

松田 頭脳をコンピューターでシミュレートする分野でも、すでにマウス程度の脳と同程度のものは成功しています。EUの計画では、今後10年程度で人間の脳をシミュレートする予定です。デバイス技術でも、すでにGoogleが「Google Glass」というものを発表しました。これは、メガネのレンズ上に情報を表示する装置で、人工知能と組み合わせれば、装着するだけでいろんな情報を引き出せるようになる。私はSFものアニメが好きで『攻殻機動隊』や『イノセンス』など100回くらい観ているんですが(笑)、そこで登場する技術のうちかなりの部分は実現されているんですね。『スター・トレック』に出てくる瞬間移動も、実は原子レベルではすでに成功しています。もっともカーク船長程度の大きなものを移動させるのは、かなり未来の話ですが。



―先生が期待する未来の技術とは?

松田 コンピューターに論文を書いてもらうこと(笑)。メガネに向かって「こういうアイデアを論文にしたい」と命令すると、コンピューターが過去の論文や研究成果を調べた上で数値計算を行ない、その結果を文章で表示してくれるような。こんなふうに、人間と人工知能がドッキングすることで“知能の増強”ができんですね。同じように医療用のメガネを作れば短期間で医師が養成できます。また、時に100万件を超えることもある裁判資料を下読みし、1000件まで絞って人間の負担を減らすという技術は、すでにアメリカの司法の現場で取り入れられています。

―そうなると、人間の失業は避けられませんね……。

松田 そのとおり。医師や弁護士の数はぐっと減るし、株取引はすでにコンピューターが担ってますから、トレーダーが失業する。車はすでに無人運転が可能ですから、トラック、タクシーの運転手が失業する。私はこれを「機械による失業」と呼んでいますが、実は産業革命のときも同じようなことが起こってるんですね。そう考えると、これから先は、より限られたトップ中のトップの人間か、逆に美容師や清掃など機械に任せるのが難しい技能労働の分野しかいらなくなる。この格差の拡大に対応するためには、北欧型の福祉国家にするしかないんですが、現状の日本はそうなっていない。解決が難しい問題ですが、個人レベルなら「人のできないことをする人間になれ」とアドバイスをします。

(取材・文/西中賢治 撮影/高橋定敬)

●松田卓也(まつだ・たくや)



1943年生まれ、大阪府出身。宇宙物理学者・理学博士。現在、神戸大学名誉教授、NPO法人あいんしゅたいん副理事長などを務める。iPadを3台持っているほど根っからの新しモノ好き

『2045年問題 コンピュータが人類を超える日』



廣済堂新書 840円



“コンピューターが人間を超える日”といわれる「2045年問題」を解説しつつ、現在のスーパーコンピューターの実力や、人工知能開発プロジェクトなどを紹介。すでに実現されている最先端技術の数々には驚かされるばかり







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