阪神・和田監督が語る「2013年型猛虎打線」と「藤浪への期待」

週プレNEWS / 2013年3月27日 12時0分

野球評論家・江夏豊氏が昨年のリベンジに燃える2年目の指揮官・和田豊監督を直撃!

長くチームを支えた金本、藤川が退団し、メジャーから西岡、福留を獲得。ドラフトでは4球団が競合した新人・藤浪を引き当てるなど、まさに“新生”と呼ぶにふさわしい今年の阪神。2年目の開幕を目前に控えた指揮官・和田豊監督を江夏豊が直撃した!

■西岡、福留の加入で甲子園に合った野球を

江夏 オープン戦の滑り出しは好調だね。たとえ本番ではなくても、勝ちグセをつけるというのは大事だと思う。

和田 はい。例年であれば若手中心になる時期ですが、今年はきっちり主力も使いながら選手をその気にさせて、まさに勝ちグセをつけたいという思いがあります。昨年はファンの皆さんに対して申し訳ないシーズンになってしまいましたので。

江夏 昨年は6月までは勝率5割前後をキープしていたけど、7月に大きく負け越し、ズルズルいってしまった。何が原因だった?

和田 主力のほとんどが実力どおりの数字を残せていないなかでも、交流戦までは5割で戦えていたんです。これなら各選手の調子が上がれば、十分に勝負できると踏んでいたんですが……。結局、最後まで上がらないままでした。

江夏 監督としては歯がゆいというか、悔しいというか……。

和田 2011年まで打撃コーチをしていて、何年も選手たちを見ていたので「こいつらは必ず上がってくる」と信頼していたんですが、振り返ってみればそうやって我慢しすぎて、時機を逸してしまったという思いはあります。

江夏 昨年は不本意なシーズンだったけど、本来、和田阪神が目指すのはどんなチームなのかな?

和田 広い甲子園が本拠地なので、まずは守りをしっかりする。それと、統一球ではそう大量点は取れないので、足を絡めたいですね。そうやってゲームを拾っていく野球が、今はできつつあります。

江夏 例えば、3月7日のロッテとのオープン戦(甲子園)。1回表に1点先制されたその裏、先頭の西岡が出て、2番の大和(やまと)のライト前ヒットできっちり無死一、三塁という形をつくって逆転した。まさにあなたが目指す野球だったと思う。

和田 昨年もそういう野球をしたいと思ってはいました。ただ、なかなか点が取れなくて、打撃重視の打線を組まざるを得なくなり、守備力も走力も落ちてしまったんです。今年加入した西岡、福留(ふくどめ)は打つだけでなく守れますので、球場にマッチした野球ができるかなと期待しています。

江夏 その西岡、福留はキャンプから見てきて、どう?

和田 阪神タイガースという特殊な環境に慣れるまで時間がかかるかと思ったんですが、ふたりともキャンプ初日から、何年もタテジマのユニフォームを着ているような雰囲気で入ってくれたんですね。しかも自分のことだけじゃなくて、チームを引っ張ろうという姿勢がある。このふたりと鳥谷(とりたに)の3人が中心になって、本当にぐいぐい引っ張ってくれました。

江夏 鳥谷は本当にいい選手だけど、もっとファイトを表に出して引っ張ってくれたら、と常々思っていたんだよ。

和田 これまでも年々、少しずつうまくなってきたんですが、年上の先輩がいて遠慮もあったのか、なかなか殻を破れずにいた部分はあったと思います。でも、今年の鳥谷は違います。目に見えて変わりましたね。

江夏 それは楽しみだね。あと足を絡めた攻撃という意味では、2番を打つ大和がひとつのポイントになると思う。

和田 大和はもともと走ること、守ることには長けていたんですが、2番としてバントをしたり、進塁打を狙ったりという面で、やや物足りないところがありました。それが今、やっと2番らしくなってきたなと感じています。

江夏 そのあたりは、現役時代に2番を打った経験のあるあなたがよく理解しているだろうからね。それと、新外国人選手のコンラッドも楽しみだけど、自分はマートンが気になるんだ。和田監督から見て、マートンは何番を打たせるのがいいと思う?

和田 昨年は調子が悪くて出塁率が3割を切っていましたが、状態が良ければ理想は1番かもしれません。他チームも含め、「マートンは長打があるから1番は怖い」という話もよく聞きますし。

江夏 そう。投手の立場からすると、ホームランのある打者が1番にいるのはいやなものなんだよ。昨年、マートンは1、3、4、5、6、7番といろんな打順に入ったけれど、「自分は本当はどこなのか?」という迷いがグラウンドに出てしまっていたような気がしたんだよね。

和田 本人が1番を打ちたがっているのは確かです。ただ、ほかの選手との兼ね合いもありますし、1番には足を求めたい。今年は西岡、鳥谷、福留と、選球眼のいい打者がたくさん出塁してくれそうなので、むしろマートンにはその後ろの6番で、打点を稼ぐ役割を果たしてもらいたいと考えています。彼はたまったランナーを還す能力も非常に高いですから。

江夏 それをしっかり本人に理解してもらって、納得して6番を打てればいいと思う。現段階でそこまで具体的にイメージできているなら、今年の打線は充実しているということだね。







■ベンチで感じた藤浪の「考える力」

江夏 今度は反対に、守るほうについて聞きたい。シーズン144試合、延長戦を抜きにしても1296イニング守らないといけないわけだけど、順調な打線と比べて、自分は投手陣に関しては少々心配している。どうだろう?

和田 先発は能見(のうみ)、岩田、メッセンジャー、スタンリッジまでは間違いないです。

江夏 その4枚は、誰が見たってわかるよね。彼らが頑張ってくれないとどうしようもない。

和田 はい。残りの2枚をどうするかということで、今は若い投手に競わせています。まず、昨年終盤に2勝を挙げた岩本。

江夏 それと、3年前に活躍した秋山。

和田 そうですね。それから、昨年は中継ぎとしてしっかり成績を残した鶴(つる)。彼は一度、先発で勝負させようかなと。また、白仁田(しらにた)にも今年は期待しています。

江夏 まだ先発での実績はないけれど、左の榎田(えのきだ)もいるね。

和田 榎田は左肘の手術明けなのでゆっくりやらせようと思ってはいますが、「左をもう一枚」という願望は確かにあります。

江夏 3人目の左の先発というのは相手チームにとってはいやな、大きな戦力だからね。

和田 2枠が未定という状態は正直、心配な面もあるので、中継ぎとして一軍で実績のある榎田が5番目にきっちり入って、「残り1枠」になれば理想的ですね。そこに今、名前が挙がった投手たちと、新人の藤浪(ふじなみ)がどう絡んでくるかという期待もあります。

江夏 さあさあ、その藤浪の話を聞かせてもらおうか。昨年のあなたの最も大きな仕事といえば、ドラフトで彼を引き当てたことだもんな(笑)。

和田 はっはっは。

江夏 あのガッツポーズはすごく印象的だったよ。

和田 ドラフト後、まずは「一軍キャンプに連れていくかどうか」という検討から始めました。身体検査、体力測定の数値はどうか。1月の自主トレでの動き、肩の調子はどうか。そうした点をチェックして、「これなら連れていける」という結論が出たんです。その上で、彼をどう育てていくか、投手コーチやGMも含めて何度も話し合っています。







江夏 高校時代から藤浪を見てきて、彼の持っている野球センス、投球術は素晴らしいものがあると思う。大阪桐蔭(とういん)高校で甲子園の春夏連覇を達成したとき、バッテリーを組んだ捕手の森君は2年生だったんだよ。同学年なら普通はキャッチャーがリードするものだけど、あのバッテリーに関しては、けっこう藤浪がリードしていたんじゃないかと思うんだ。

和田 なるほど。

江夏 おそらく、彼自身でピッチングを組み立てていたと思う。例えば「ここで変化球を投げたいな」といった配球面に関して、かなり高い能力を持っているな、という印象があるんだよね。実際にキャンプから彼をずっと見てきて、どう感じている?

和田 それは僕も感じます。キャンプ中の練習試合で一度、藤浪をベンチに入れて、僕の横に座らせたんです。試合中、配球についていくつか質問を投げかけると、ポンとすぐに答えが返ってきたんですね。

江夏 ほほぉ。

和田 例えば内角の使い方だったり、カウントの整え方だったり。配球というものに正解はありませんが、「おまえだったらどうする?」と聞くと、「はい、僕だったらこうします」と、きっちり考えた答えが返ってきました。

江夏 なるほど。今の若い選手は全般的に、実践の伴わない“屁理屈”も多いけれど、その藤浪の答えが屁理屈ではなく、きっちりとした理屈なら、それは素晴らしい野球観だと思う。だから大事なのは、全力で走れる、全力で投げられる状態にあるのかどうか、周りの大人たちが把握することだよね。そこをクリアしているなら、1年目から一軍で試してみる価値は十分にある投手だと思う。とても素晴らしい投手を獲得したな、という気がするよ。

和田 はい。考えもしっかりしていますし、大きく育てていきたいと思います。

■“藤川の代わり”を探すのは難しい

江夏 そして、これはファンが最も気にかけていることだと思うけど、長年抑えを務めた藤川が抜けたよね。今の野球は7、8、9回が大事だけど、リリーフ陣のほうはどう?

和田 “藤川の代わり”を探すのは難しい、というのが正直なところですね。今年の抑えを誰にするか検討していくなかでは、能見の名前も挙がりました。いちばん三振が取れますので。

江夏 自分も、いちばん抑えに適しているのは能見だと思う。

和田 ただ、やはりエースを後ろに回して、計算できる先発4枚の最初の一枚が抜けてしまうのはしんどい。そこで、今年は久保に頑張ってもらおうと思っています。もちろん、彼が「藤川球児」になることはまったく求めていません。最後の1イニング、久保のピッチングをして、なんとか抑えてくれと。彼はロッテ時代に中継ぎで投げていますし、昨年、僕が監督に就任したときも、久保のセットアッパーというアイデアはあったんです。

江夏 ゼロからじゃなく、そういう構想はあったわけだね。

和田 はい。それで、今年は思い切って久保に任せようと。その前の7回、8回は福原、筒井、加藤、渡辺の4人が入ってくるかなと思います。7回、8回をそれぞれひとりずつではなく、やりくりになると考えています。

江夏 藤川が抜けて不安だというのは、シーズンが始まる前からみんなわかっているわけだからね。「ああ、またか」「やっぱりな……」というような展開だけは、なんとか避けてもらいたいと思っているよ。

和田 昨年の中盤、チームが失速した頃も、藤川が故障で抜けていたんです。ちょうど筒井も状態が悪くなっていて、7回、8回でひっくり返されて落としたゲームがかなりありました。

江夏 そういう負け方は、特に次の日に残るからね。それと最後にもうひとつ、その投手陣を引っ張る捕手について。今年はオリックスから日高(ひだか)を補強したけど、あなたはどう考えているんだろう。打てる捕手の日高なのか、それとも守りに長けた藤井なのか。

和田 間違いなく、重視するのは守りです。今年は1番から7番まででそこそこ点が取れると考えているので、捕手には守りから入ってほしいですから。

江夏 じゃあ、藤井が基本線ということか。でも、日高の打撃も捨てがたいものがあるよね。

和田 そうですね。藤井も144試合フルでは持たないと思いますし、日高や成長してきた小宮山(こみやま)も使っていきたいですね。

江夏 小宮山を使うのは、これからのチームづくりという部分も考えて?

和田 今後を考えて、小宮山を育てたいと思っています。

江夏 守りの要(かなめ)も充実となれば、あなたの目指す野球により近づくと思う。今年は144試合なんとか頑張って、関西だけじゃなく全国の阪神ファンを興奮させてもらいたいね。しっかり調整して、万全の態勢で公式戦に臨んでください。今日はありがとう。

和田 はい、頑張ります。ありがとうございました!

(構成/高橋安幸 撮影/五十嵐和博)

●和田豊(わだ・ゆたか)



第32代阪神タイガース監督。1962年生まれ、千葉県出身。日本大学から84年ドラフト3位で阪神入団。88年よりレギュラーに定着し、好守・巧打の内野手として長く活躍。野村監督の下で打撃コーチを兼任した2001年限りで引退。以後、打撃コーチ、内野守備走塁コーチとして星野、岡田、真弓各監督に仕え、12年に監督就任



●江夏豊(えなつ・ゆたか)



野球評論家。1948年生まれ、兵庫県出身。阪神、南海、広島、日本ハムなどで活躍し、年間401奪三振、オールスター9連続奪三振などの記録を持つ伝説の名投手。通算成績は206勝158敗193セーブ



週プレNEWS

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング